









☆第418話『ルポライター』
(1980.8.8.OA/脚本=小川 英&古内一成&渡辺由自/監督=山本迪夫)
土木省の入札工事に絡んだ、東郷建設の不正行為を告発する匿名のルポが出版社に送られて来ます。が、東郷建設のバックには暴力団=響組が控えており、これまで重要証人が次々と暗殺されて来た。
このルポを書いた謎のライターも消されてしまう可能性があり、扱いに困った編集長は七曲署・藤堂チームにルポライター探しを依頼するのでした。
で、東郷建設の岩田社長(神田 隆)が通う高級クラブに潜入したスコッチ(沖 雅也)は、岩田のお気に入りとされるホステス=博子(田島令子)を一目見て、ある匂いを感じます。
「私、誰かに似てます?」
「似てます。なんとなく」
「どなたかしら。奥さま? それとも、昔の恋人?」
「ある場合の、俺にね」
「あなたに?」
「そう。疲れきってヘトヘトなのに、必死で何かを貫こうとしてる」
「…………」
「もしかすると命懸けで……違いますか?」
そう、スコッチは博子がルポの送り主だと直感したのでした。
それで博子の身辺を調べてみたら、かつて彼女が雑誌記者を夢見てたこと、そして白血病で半年の余命宣告を受けていることも判明し、確信を得たスコッチは彼女から証言を聞き出そうとするのですが……
その矢先に、鉄橋の下で博子の転落死体が発見されてしまいます。病気を苦にした自殺に見えるけど、命懸けで巨悪を告発しようとした彼女がそんなことで死ぬ筈がない!
スコッチは、博子が記したルポの中で、鍵となる人物の名前が1つだけ伏せてあることに気づきます。その人物とは恐らく、土木省の役人である三浦(矢吹 渡)。博子は情報を得るため三浦に近づき、いつしか愛するようになってしまった。
「ルポは彼女の夢だ。しかし、あと僅かしか生きられない彼女にとっては、命を懸けて男を愛することも……最後の夢だったんだろう」
そんな彼女が告発ルポを書いてる事実を岩田社長に密告し、響組に殺させるよう手引きしたのが誰あろう、その三浦であることを察したスコッチは、いよいよ怒りを爆発させます。
「お前にはまだ分からんのか? 彼女は本気でお前を愛していたんだ。命懸けでお前を愛していたんだ!」
そう言って三浦にCOLTトルーパー6インチの銃口を向けるスコッチの眼は、いつになく潤んでました。博子に同情したというよりも、自分自身と重ねて共鳴したのかも知れません。
黒幕の名前を吐いて響組に殺されるか、今すぐスコッチに殺されるか究極の選択を迫られた三浦が、どっちの地獄を選んだかは言うまでもありません。人間、1分1秒でも長く生きたいもんです。
センチメンタルなお話は個人的に好まないし、スコッチにはもっとクールでいて欲しいんだけど、元来スコッチってのは女々しいヤツなんですよねw C調な (って死語?) 後輩=ドック(神田正輝)の方がよっぽどハードボイルドかも知れません。
今回、響組にガサ入れする場面で一係メンバーが颯爽とヤクザたちと格闘する傍らで、運悪くスーパー・リキ(アクション系のドラマに度々登場される巨漢)に出くわしたドックが、即座に愛銃M59で制圧しちゃう卑怯な姿に、私はハードボイルドを感じましたw
そんな変化球に拒否反応を示す『太陽~』ファンもいたみたいだけど、私はやっぱり大、大、大、大歓迎! ロッキー(木之元 亮)やスニーカー(山下真司)が大して上手くもない殺陣で凡庸に闘ってる姿を見ても、はっきり言って退屈なワケです。
実は神田さんの方が遥かによく動けるのに、あえて手を抜いて見せる姿勢はやっぱハードボイルドですよ。ハードボイルドって言葉の意味を私はよく知らないけどw
スコッチがまだ元気で、ドックが新風を吹き込んでるこの時期の『太陽にほえろ!』は、どのエピソードも面白いし見応えがあります。やがてボス=石原裕次郎さんが長期離脱され、沖さんも休みがちになっちゃうからホントこれは貴重なシーズン。まさに黄金時代の再来です。
ゲストの田島令子さんは当時31歳。'71年から現在まで活躍を続けておられる大ベテラン女優で、海外ドラマ『バイオニック・ジェニー』やアニメ『ベルサイユのバラ』『クイーン・エメラルダス』等でヒロインを演じられた声優さんとしても知られてます。
『太陽にほえろ!』には今回のほか#329、#589にもご出演、さらに『特別機動捜査隊』『キイハンター』『夜明けの刑事』『七人の刑事』『噂の刑事トミーとマツ』『非情のライセンス』『大捜査線』『誇りの報酬』『NEWジャングル』『もっとあぶない刑事』『女捜査官』『私鉄沿線97分署』『特捜最前線』等々、昭和作品に限定してもこれだけゲスト出演されてますから、我々としては刑事ドラマのミューズと呼びたくなる女優さん。沖雅也さんとは『俺たちは天使だ!』#20でも共演されてます。
敢えて手を抜くハードボイルドと言えば、ジョーンズ博士と円月刀(?)使いの一騎打ちを思い出します。鞭を使ったアクションシーンを予定していたそうですが、ハリソンフォードはその日体調が悪く、あの溜め息をついてズドンとやるシーンになったとか…。アクションシーンとしてメリハリがあり人間臭くもある名シーンだと思います。
ヌンチャクかと思ったらハンガーだった!の場面も劇場はバカウケしてたけどw、基本的にはベタなスピルバーグ・ギャグの中であのズドン!場面は突出して面白かった。警告もせず即座に撃ち殺しちゃうブラックさが効いてるんですよね。
その『レイダース』が公開されたのは'81年末ですから、神田さんはハリソンより早かった!w さすがに撃ち殺してはいないけどw
この作品は田島令子さんが殺されてしまうというショックな内容でしたが更にショックだったのは田島さんを手にかけた犯人が【少年探偵団BD7】で団次郎さんの怪人二十面相にライダーキックのようなキックを浴びせて二十面相の正体が俳優・団次郎だと言う帰ってきたウルトラマンを見ていた俺には鈍器で頭を殴られたような展開を見せた名探偵明智小五郎その人だったと言うことでした😅
明智小五郎のショックにウルトラマンのショックが上乗せされたワケですねw
昭和のヒーローを演じた俳優さんは悪役に転向する傾向があって、我々世代はみんなそのショックを味わいながら育ちました。みんな仲間です!w
今年もよろしくお願いします。