尾野真千子さんのセクシーグラビアが掲載された「週刊現代」9/7号でドラマ『これは経費で落ちません!』が3ページに渡って特集されてました。
どうやら世間でも本作の群を抜くクオリティーは評判らしく、評論家さんたちは主役の多部未華子さんについて「作り手側の希望を凌駕するまでに体現してくれる稀有な女優」等と、こぞって絶賛されてます。
けど、そんなの我々タベリストに言わせれば「今ごろ気づいたの?」って話ですよねw
ちょっと前に、どこかの雑誌で「本当に演技が上手い俳優ランキング」みたいな記事が出て、いつどこで誰にアンケートしたのか知らないけど、世代別ならベスト3に入ってもおかしくない多部ちゃんがほとんどランキング圏外で、よりメジャー感のある女優さんたちが上位に挙がってるのを見て、思ってた以上に世間が「演技力」ってものを解ってないことに破滅を感じたもんです。あれじゃ単なる人気投票で、幼稚園児に「一番セクシーな俳優は誰?」って尋ねてるようなもんです。
ただ、今回の森若さん役は人気だけの俳優じゃとても務まらない……程度のことは何となく世間の皆さんも気づいておられるのかも知れません。やっと世間が多部ちゃんに追いついて来た、って事でしょうか?
さて第7話は、そんな世間の評判を聞いて初めて観たという方々に、本作の魅力を的確に伝えられたのかどうか、私としてはちょっと疑問に感じる内容でした。
いや、決してクオリティーは落ちておらず、むしろこれまでの中じゃ一番泣けるエピソードで、実際私も号泣したんだけど、視聴者を泣かせることなんかTBSの「日曜劇場」でも出来ちゃう言わば簡単なこと。
このドラマが本当に凄いのは、各エピソードの「落としどころ」がいつもラスト寸前まで予測不可能なこと。それが今回に限っては序盤で予想出来ちゃったもんで、私はすこぶる物足りなく感じました。こんな話なら「日曜劇場」でしょっちゅうやってるやん?って。
「ドラマ10」だから素直に泣きましたけど、これが「日曜劇場」だったら「ほら来たよ、涙の押し売りが」ってw、鼻で笑ったかも知れません。こういう時に「ふだんの行い」が物を言うワケですw
そこは「ドラマ10」クオリティーですから「日曜劇場」みたいなわざとらしさは皆無だし、全10話の中には骨休め的にこういう癒し系エピソードもあって良いとは思うんだけど、評判を聞いて初めて観た人には「いや、違うから。このドラマの実力はこんなもんじゃないから」って、最初の2話あたりを勧めたくなります。
そんな第7話のストーリーは、社内で「石鹸作りのレジェンド」と云われる仙台工場のベテラン職人=留田さん(でんでん)が、アイちゃん(森田望智)というギャル風のバイト社員を正社員に抜擢し、猫可愛がりするようになってから石鹸の質が落ちた、つまり若い女にうつつを抜かして仕事に身が入らなくなった、という疑惑が浮上。
なので工場長はアイちゃんを他の工場へ異動させようとするんだけど、森若さん(多部未華子)はアイちゃんが社員になった時期と石鹸の質が落ちた時期に微妙なズレがあることに気づき、そこから意外な真実を探り出していく。
そう、石鹸の質が落ちたのは留田さんがアイちゃんにうつつを抜かしたからじゃなく、単に彼が加齢により職人としての腕を落としたから。
留田さんがアイちゃんを猫可愛がりしてるように見えたのは、彼女が石鹸作りに必要な天性の勘を持ってることを見抜き、後継者として育てようとしてるから。それを周囲に言わなかったのは、石鹸を作れなくなった自分に存在価値は無いというプライドから。要は自分の名誉を守りたかった。自由奔放に振る舞ってるように見えるアイちゃんも、実はそんな留田さんを懸命にフォローしてた。
でも、本当に守るべきは石鹸の質、すなわち会社とユーザーであり、個人のちっぽけなプライドじゃない。それを森若さんに気づかされた留田さんは、年間マイスターの受賞を辞退し、授与式のスピーチで晴れやかに世代交代を宣言するのでした。
どうですか、いかにも日曜劇場でやりそうな話でしょう?w 最初は不吉な小悪魔に見えたアイちゃんが実は心優しき天使だったり、何より「オジサンの演説」で泣かせるクライマックスが日曜劇場そのものですw
けど、それでも素直に泣けたのは「ドラマ10だから」っていう先入観のお陰……だけじゃ勿論なくて、練りに練られた脚本と超一流キャスト陣による素晴らしい演技の賜物。ただ泣かせパターンに嵌めただけの日曜劇場システム(どうせ視聴者は条件反射で泣くだろうっていうナメた姿勢)とは雲泥の差があるワケです。
留田さん役にでんでんさんを起用する的確さ、アイちゃん役にまだ一般的には無名の森田望智さん(映画『全裸監督』で伝説のワキ毛AV女優=黒木香さん役を熱演!)を抜擢する柔軟さもドラマ10クオリティー。日曜劇場もキャスティングのユニークさには定評あるけど、私から見れば「あざとい」だけ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いw
そんなワケで今回も素晴らしかったんだけど、この作品ならではの素晴らしさが(他のエピソードに比べると)あまり発揮されてない、と私は感じた次第です。
それはともかく、森若さんが恋をした事によって随分とソフトなキャラに変化し、可愛らしさを増して「殺す気か!」と年下の男の子に言わせるレベルにまでなって来ました。
そこをカバーするべく投入されたのが麻吹さん(江口のりこ)で、本来ならキャラ立ちしすぎの彼女に食われかねないところを、微塵も揺るがない女優=多部未華子さんの凄味にも、世間の皆さんにはそろそろ気づいて頂きたいところです。
それと、森若さんと山田くんのラブストーリーが本筋と絡むことなく、完全にサイドストーリーになってるのも普段とは違ってました。だから悪いとか好きじゃないとかではなく、とにかく「ふだんと違う」って事ですね。
思えば『太陽にほえろ!』も誰が主役かによって作風が違ってたワケで、毎回同じである必要はないんだけど、初めて観る人には別の回を勧めたいって事ですね。