ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『特捜最前線』#029

2019-09-11 00:00:13 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第29話『プルトニウム爆弾が消えた街』

(1977.10.19.OA/脚本=長坂秀佳/監督=佐藤 肇)

ある日突然、神代課長(二谷英明)が青白い顔で刑事部屋にやって来て、現在進行中の全捜査中断を命じたもんだから特命捜査課の面々が驚いた!

核再処理工場が襲撃され、犯人グループを手引きしたと見られる所員=重森(西田 健)が失踪したから、全員で直ちに行方を探すよう神代は命じるんだけど、連続幼女殺害事件という重要案件を捜査中の高杉(西田敏行)らは納得出来ません。

早く犯人を逮捕しないとまた次の犠牲者が出るかも知れないのに!と高杉らは真っ当な抗議をするんだけど、神代は聞く耳を持ちません。

「一刻を争うんだ、急いでくれ!」

仕方なく特命課の面々は重森の捜索を始め、船村(大滝秀治)は銃撃戦で半数が死んだ犯人グループの生き残り=秋本を病院で尋問するんだけど、もはや彼は虫の息。

「重森は……ふじみ……」

「ふじみ? 不死身だと? どういうことだ!?」

そこで医者に止められ、船村は尋問を中断するんだけど、程なくして秋本は息を引き取ってしまいます。

一方、重森の足取りを追ってた筈の高杉らは、途中で連続幼女殺人事件の犯人が発見されたと知り、そっちの逮捕に向かっちゃう。その報告を聞いて神代は愕然となります。

「馬鹿者っ! お前たちに課長の命令を無視する資格はないっ!!」

神代の代りに激昂したのは、オヤジさんこと船村刑事でした。

「オヤジさん、何ですか?」

「私にもよく分からんっ!!」

よく分からないんだけど、とにかくとんでもない事が起こってる。神代とは付き合いが長いゆえ、事の重大さだけは船村にも判るのでした。

そこで神代が、ついに重い口を開きます。

「……いかに優秀な部下であろうと、事の重大さを知らされずには動くワケに行かんだろう……最初から事実を話しておけば、オヤジさんだって瀕死の秋本から重要な手がかりを聞き逃すことは無かった……いかに長官の命令とはいえ、私はもっと君たちを信じるべきだった。謝る」

「……長官の命令と仰いますと?」

核再処理工場が襲撃された直後、神代は官房長官(中村伸郎)に呼び出され、犯人グループがプルトニウムを強奪して逃げた事実を聞かされたのでした。

さらに「第二のノア」を名乗る差出人から「一両日中に原子爆弾が完成し、東京は焦土と化すだろう」と書かれた声明文も届いていた!

映画『太陽を盗んだ男』が公開されるのは本エピソード放映の2年後であり、この当時はプルトニウムという物質名も、それとグローブボックス等の設備と専門知識さえあれば個人で原子爆弾が製造できることも、まだ一般的には知られてませんでした。

そう、犯人グループと一緒に消えた研究員の重森がどうやら主犯で、原爆を造り、東京で起爆させようとしてる。そんなことが表沙汰になれば大パニック必至ゆえ、官房長官は捜査員にも事実は伏せるよう神代に命じたのでした。

ようやく事の重大さを知った刑事たちの顔面から、たちまち血の気が引いていきます。

「脅しかも知れん。事実かも知れん。しかし事実としても一番の救いになるのは、一両日中に完成すると書いてある事だ」

「……つまり、1日か2日しなければ完成しない、最小限と見ても24時間以内にプルトニウムと重森を押さえればいいんですね?」

「ただし、その時はプルトニウムが原爆になってるかも知れん」

「!!」

「そんな事は何としても、何としても阻止しなくちゃならん!」

当然です。連続殺人犯の1人や2人捕まえたところで、原爆が爆発しちゃったら元も子もない。

奮起した部下たちに重森の捜索を任せ、神代は原爆関係の資料や論文などを徹底的に調べ上げ、声明文はその内容と文章の癖から、重森の恩師である原子物理学の権威=刈屋教授(山内 明)が書いたものと見抜き、重森の居場所を聞き出すべく単刀直入に斬り込みます。

「刈屋さん、私は学者というものがどういう考え方をするかは知らない。ただ、書斎にこもって理論だけを組み立てるあなた方というのは、現場から現場へ靴をすり減らして歩き回る我々とは、根本的に違うもんだと考えています」

神代は近くの遊園地へ教授を連れて行き、呑気に休日を楽しむファミリーたちの姿を見せるのでした。

「あの人たちを見て下さい。あの人たちの協力が無くては我々は一歩も進めないんです。私は職業柄、いろんな人を見て来ました。あの人たちが好きです。誰もが、その人なりに一生懸命生きてるんです。あの人たちの命を奪う権利は誰にも無いんです!」

「…………」

「刈屋さん、あの人たちを殺さないで下さい!」

そこでようやく、刈屋教授が口を開きます。

「日本は唯一の被爆国だ。あの惨めな敗戦に打ちのめされた時、日本は何を誓った? 戦争の放棄、平和憲法だよ。しかるに戦後32年(当時)、小中学生の教科書から戦争の記述は消え、核の恐怖は抹殺され、防備は軍備にあらずという詭弁が堂々とまかり通ってる。軍事予算は年々増加の一途を辿ってる。成り上がり、思い上がりの某国の輩どもは、核武装もまたやむなし、いや核武装すべきだと論議を始めてる。政治家どもは平和の血をすする悪魔だ!」

したり顔で正論を語る刈屋教授に、神代の怒りが爆発します。

「その平和を口にするあんたが既に間接的に4人もの人間を殺してるんだ! これが遺品です、犯人たちの!」

神代は、銃撃戦で死んだ襲撃犯たちが使ってたサングラスを教授に無理やり持たせます。

「刈屋さん、彼らを殺したのはあんただ! 核を弄ぶあんたに、平和を云々する資格はない!」

「……君がどう私を非難しようが、盗まれたプルトニウムなど私は知らん!」

明らかにこの男が黒幕なのに、物的証拠が何も無い現状ではどうすることも出来ません。神代は違法捜査を承知の上で教授の屋敷に盗聴機を仕掛け、重森の潜伏先がどうやら国立市内であること、娘の美奈(新海百合子)が重森とチョメチョメな関係であること等の情報を掴んでいきます。

一方、刈屋教授はさんざん悩んだ末に国会議事堂前へ行き、舗道の植え込みを探り始めます。どうやら神代の説得がボディーブローのように効いたらしく、計画の中止を決意したのでした。

あとを追って来た神代に、教授は言います。

「手伝ってくれ! 予定通り行ってれば重森はここに原爆を仕掛けてる筈だ!」

白昼、オヤジ二人が鬼の形相で植え込みを掻き回す姿を見て通行人たちはビビりますが、爆弾らしき物は出てきません。

「どういう事ですかっ!?」

「し、重森はもしかしたら、私のプランから外れる気かも知れん……」

教授は原爆を完成させても実際に起爆させるつもりは無く、政府を脅迫し、全世界に非核武装宣言させるのが計画の目的だったと説明します。

「そうすれば全てうまくいく筈だったんだ」

「うまくいく? 抑止力になる? 平和利用する? あらゆる核保有国が皆ほざく、空虚な言い草だ!」

一方、国立市内を闇雲に駆け回っていた船村は、富士見荘というアパートの看板を見てハッとします。

「そうか! ふじみってのは死なない事じゃなくて富士見荘の事だっ!」

すぐさま高杉、吉野(誠 直也)と合流して踏み込むも、床下を掘って造られた秘密の研究室に残されてたのは、男の他殺死体が2つだけ。一人はテロ組織「黒の義勇軍」に所属する男で、もう一人は彼をマークしていた公安部の刑事であることが後に判明します。

神代課長と刈屋教授も現場に駆けつけ、唸りを上げる放射能探知機の音に戦慄します。

「課長、重森はこの二人を殺して逃げたんじゃ?」

「……二人を殺し、プルトニウム爆弾を持って、だ。とうとう死の元素が動き始めた。今日にも爆発するかも知れん……原爆が!」

えらいこっちゃ!

(つづく)
 

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