☆第23話『誤認逮捕』(1980.7.17.OA/脚本=白井更正/監督=高橋繁男)
深夜タクシーの運転手が乗客に絞め殺され、売上金と腕時計を強奪される事件が発生し、四機捜の加納主任(杉 良太郎)は2年前のほろ苦い事件を思い出します。
やはりタクシー強盗で、手口は微妙に違うんだけど現金と一緒に腕時計を奪ってる点が共通しており、そのとき加納はパチンコで生活してる伊田という男(高木 均)を自信を持って逮捕したんだけど、奪われた現金と腕時計がどうしても見つからず、証拠不充分で不起訴になっちゃった。すなわち、誤認逮捕。
味をしめた伊田がまたやらかしたと加納は直感するんだけど、大滝隊長(山内 明)に「おい加納、感情的になるな」「頼むから慎重にやってくれ」「無茶するな」「ああだ」「こうだ」「乳首だ」と釘を刺されまくります。そりゃあ同じ男を二度も誤認逮捕したら、四機捜の存続を揺るがす不祥事になっちゃうから無理もありません。
だけど2年振りに伊田と再会し、その不敵な態度を見た加納はますます疑惑を深め、今度こそ動かぬ証拠を掴むべく奮起し、部下たちも主任を信じて支援するのでした。
結果、伊田が現在は離れて暮らす娘の明子(木村理恵)から6万円の借金をしてる事実が判明し、加納はピンと来ます。伊田は2年前にも、当時チョメチョメ関係だった女性に借金をしており、それを返済する際に小さな包みを彼女に預けていた。そして不起訴が決まった後にそれを取り戻していた。
そう、ヤツは盗んだ金を返済にあて、何も知らない相手に腕時計を預けることで、巧みに証拠を隠していた! そして今回は非道にも、実の娘を利用しようとしている!
ということは、明子がいま預かってるであろう腕時計を警察に渡してくれれば、それが証拠となって伊田を逮捕&起訴することが出来る。
だけど加納の訪問を受けた明子は、とっさに「何も預かってない」と嘘をつきます。ろくでなし親父のせいで母親にも捨てられ、ひたすら迷惑な存在でしかない相手なのに、なぜ彼女は庇うのか?
明子と同棲中の恋人=ヤっちゃん(小原秀明)がいいことを言いました。
「お前さ、いつも親父もお袋も他人だって言ってたけど、嘘なんだよな? 分かっていたよ、オレには。強がってやがるって」
「…………」
「だったら親父を庇ってやれよ。最後まで」
「でも……親父、何やったんだろ」
「何をやってもいいじゃないか。何をやっても庇ってやれよ。それが親子だろ?」
倫理的にはよろしくないんだろうけど、人間としてはそうありたいと私も思います。どんな親でも、やっぱり親は親ですから。
で、そのろくでなしのダメ親父=伊田は、沢木(神田正輝)&水野(赤塚真人)両刑事にマークされてるとも知らず飲み屋で乱闘騒ぎを起こし、傷害の現行犯で逮捕されます。
よし、チャンス! こうなったらヤツを取調室でフルボッコに……いや、じっくり尋問して2件の強盗殺人を何としても吐かしたる!と加納は息巻くんだけど、またもや大滝隊長がブレーキをかけて来ます。なんと飲み屋の喧嘩相手が示談に応じ、伊田の釈放が即決されちゃったのでした。
「傷害罪で起訴しても、しょせん誤認逮捕の腹いせと取られるよ」
「なに?」
ライバルの下条主任(垂水悟郎)にも水を差され、加納はムッとします。
「そうでなくてもだよ、示談で済むなら厄介な存在は放り出した方がいいんじゃないのか?」
「犯罪をやったヤツがいる。だからオレは追う。捜査とはそういうもんだと思ってる」
出ました杉良太郎オンステージ! 始まりましたワンマンショー! 杉サマ自ら作詞された主題歌『君は人のために死ねるか』のサビでもこう詠われてます。
♪許せないヤツがいる 許せない事がある だから倒れても倒れても 立ち上がる立ち上がる 俺の名前はポリスマン!
そんな杉良太郎スピリットがドラマの内容にも反映されてるんですよね。それがあってこその『大捜査線』なんです。
さて、伊田があっさり釈放されたことが、かえって追い風になります。もうこれで自分が疑われることも無いと油断した伊田は、まだ沢木&水野が張り込んでるとも知らずに明子のアパートを訪ね、預けた小さな包み=殺した相手から奪った腕時計を取り返そうとします。
で、明子に「この中身が何なのか言ってくれるまで返さない」と拒まれ、逆上した伊田は明子をかばうヤっちゃんをナイフで斬りつけ、刑事たちが踏み込むとあろうことか明子を、我が娘を人質にし、その喉もとにナイフを突きつけます。
「実の娘にナイフを突きつけてでも逃げたいのか? 娘に何ひとつ父親らしい事をしてやれないお前でも、娘さんはお前を庇おうとしたんだぞ。恥ずかしいと思わんのかっ?!」
こうしてクライマックスで杉サマが説教を垂れるのも『大捜査線』のお約束だけど、それで犯人が改心した試しはありませんw だって、そこで犯人が諦めたら「フルボッコ」という杉サマの見せ場が無くなっちゃうからw
伊田もその例にもれず、我が娘の前で悪あがきを続けます。
「車を用意しろ。そうだ、お前が運転しろ! 誤認逮捕に今度は逃走の手助けだ、ハハッ。こいつはいいや、ハハハハハッ!」
もちろん、どんなにあがこうが、加納主任の機転と部下たちの見事な連携により、結局は怒りのワッパが手首に食い込む羽目になります。
「誤認逮捕じゃない。そんなヘマはしないよ。甘く見るなよ、伊田」
幸い、このところ暴力控えめキャンペーン中につき、伊田はフルボッコの刑を免れました。私としては物足りないけど、さすがに今回は娘が見てる前なのでボッコ無しでも致し方ありません。
だけど明子は、自分を人質にし、ええ歳こいて杉サマに説教され、ぶざまに逮捕される父親の姿を目の当たりにしてもなお「お父ちゃん!」と泣いて、その胸にすがりつくのでした。それが親子なんですよね。
今回は木村理恵さんがゲストってことで、ドック刑事(神田正輝)とアッコの絡み(『太陽にほえろ!』では入れ違いで共演なし)が見られるかと思ったけど、残念ながらツーショットはありませんでした。同じ部屋にはいたんですけどね。(画像3枚目の尾行シーンが、同じフレームに写った唯一のショットです)
理恵さん、偶然かスタッフのイタズラか判らないけど、ここでも役名は「明子」でしたw 『太陽~』を卒業されてから約1年後のご出演で、ちょっと色っぽくなられたし演技も上達されてます。
さて、シリーズも後半になり、初期の時代劇テイスト=勧善懲悪バイオレンス路線は鳴りを潜め、都会的かつマイルドな人情路線、つまりごくノーマルな刑事ドラマに落ち着いた感があり、私としてはややつまんなくなりました。クオリティーは相変わらず高いのですが……
オープニング&エンディングのタイトルバックもリニューアル(都会的にイメチェン)され、主題歌もフツーの歌謡曲になっちゃったけど、やっぱり杉サマが唄い、杉サマしか画面に出て来ませんw
青木義郎、垂水悟郎、赤塚真人といった演技派の俳優さん達がレギュラー入りし、チームプレーの魅力が加味されたのは良かったけど、顔ぶれが地味すぎたせいか、視聴率アップには繋がりませんでした。
刑事ドラマって、視聴率が取れないと大抵ソフト路線に舵を切っちゃうんだけど、そうすることで数字が上がった試しがあるんでしょうか? たぶん無いですよね?
だったら最後までハード路線を貫いて欲しいんだけど、スポンサーの手前、女性視聴者が取っつきやすいようにするポーズだけでも示さないとダメなんでしょうか?
それと、視聴率低迷により予算が削られ、お金のかかるアクションシーンを減らさざるを得ない事情もあるかも知れません。なんだかんだ言ってもやっぱりお金、世の中すべてお金です。金をくれ!
そんな中でも、説教という形で番組のスピリットを死守される、当時の懸命な杉サマの姿には心打たれるものがあります。コロナ渦でガースー総理と会食してる場合じゃありませんw
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