ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

「2020年春ドラマ」―2

2020-06-24 11:55:55 | TVドラマ全般




4月スタート予定だった多くの連ドラが6月末に来てようやく開始(あるいは再開)するという前代未聞の事態で、これを春ドラマと称して良いのかどうか判らないけど、便宜上ここでは6月スタートの番組を春ドラマ、7月スタートの番組を夏ドラマと区切ることにします。


☆『探偵・由利麟太郎』#01(フジテレビ系列・火曜夜9時枠、全5回)

「昭和を代表するミステリー作家・横溝正史が代表作である『金田一耕助シリーズ』よりも前に生み出していた探偵・由利麟太郎が活躍するシリーズ作品を初めて連続ドラマ化」との事で、時代設定を戦前の昭和から現在に置き換えつつ、京都を舞台にすることでレトロな世界観が構築されてます。

はっきり言って見所はそこだけ、と私は感じました。

金田一耕助から人間味を抜いただけ、のようにしか見えない由利麟太郎(吉川晃司)のキャラクターにも、探偵がただひたすら突っ立って謎解きするだけのストーリーにも、私は全く魅力が感じられません。

時代錯誤であろうが現実離れしてようが、キャラクターが魅力的でストーリーが面白ければ問題なし、と私は思うんだけど、その2つが駄目となると救いようがありません。世界観だけ面白くても、そんなのすぐに見慣れちゃいますから。

レギュラーキャストは他に、由利探偵の助手=三津木に志尊淳、京都府警の等々力警部に田辺誠一、骨董品店の店主にどんぐり、といった面々。セクシーショットは第1話メインゲストの新川優愛さんです。



 

☆『ハケンの品格』2―#01(日本テレビ系列・水曜夜10時枠)

『ドクターX』の大門未知子みたいなスーパー派遣社員=大前春子(篠原涼子)が、大手食品商社を舞台に『ドクターX』の大門未知子みたいに大活躍する、2007年にヒットしたお仕事コメディの続編です。脚本は『ドクターX』と同じ中園ミホさん。

ただし『ドクターX』シリーズがスタートしたのは2012年ですから、正しく言えば『ハケンの品格』のホスピタル版として生まれたのが『ドクターX』なワケです。大門くぅ~ん!

だから「ドクターXのパクリやん!」なんて批判するのは的外れだし、「こんな派遣社員いるワケない」だの「今どきこんな会社があるワケない」だのと文句を言うのもナンセンス。

これはあくまで「こんな派遣社員がいてくれたらいいなあ~」っていう、みんなの夢を具現化したファンタジーであり、別に社会風刺が目的じゃないから現実離れしてて良いんです。ただ無邪気に楽しめばいいだけの作品。

とは言いつつ私は『ドクターX』が大嫌いなんだけどw、こっちの大前春子さんには大門未知子みたいな傲慢さを感じないので素直に笑えます。

というか、大前さんには人間味すら感じないw どう見てもあれはA.I.を搭載したアンドロイドで、もしかしたらそういう裏設定があったりするのかも?

そんなキャラを篠原涼子さんが実に楽しそうに演じておられるし、小泉孝太郎、勝地涼、塚地武雅、上地雄輔、伊東四朗、そして特別出演の大泉洋と、脇を固めるキャスト陣も芸達者揃いですから、気楽に笑えるドラマとして『ドクターX』よりずっと見所はありそうだと、私は感じてます。

セクシーショットは主役の篠原さんと、並みの派遣社員としてレギュラー出演されてる山本舞香さんです。

 



☆『BG/身辺警護人』2―#01(テレビ朝日系列・木曜夜9時枠)

民間の警備保障会社に新設された「身辺警護課」のガードマンたちによる『ミッション:インポッシブル』ばりの活躍を描いた、2018年冬ドラマの続編です。

木村拓哉、斎藤工、菜々緒、間宮祥太朗はそのまま続投、新たに仲村トオル、勝村政信、市川実日子といったキャストがレギュラーに加わりました。

前作は、いちいち主人公に反抗する斎藤くんや、あまりに無能なSPたちの「キムタクの引き立て役」ぶりがドラマを安っぽくして非常に残念でした。

それが今回、ステレオタイプな馬鹿はあまり登場せず、反抗期だったキムタクJr.を筆頭にキャラクター達がそれぞれ成長し、かなりストレスが軽減されて観易くなりました。

特にキムタクが組織からドロップアウトして「フリーのボディーガード」となり、ピンチに陥ると斎藤くんが助けに来るという、ある程度の距離を保ちつつの信頼関係はとても心地好い!

ゆくゆくは対決せざるを得なくなる展開の伏線だろうとは思うけど、固い絆を描いた上での対決ですから、これは面白くなりそうです。

元より主人公のキャラクターやアクションの見せ方は魅力的でしたから、余計なストレスが無くなって「これなら毎週観てもいいかも?」って、偉そうな言い方だけどそう思わせてくれる初回の出来映えでした。

ただし、アクション系の連ドラは初回だけで力尽きちゃうパターンも多いので、しばし様子を見ないと結論は出せません。ポートレートはレギュラーの菜々緒さんと、初回ちょい役ゲストの弘中綾香アナウンサーです。


 

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『太陽にほえろ!』#360

2020-06-22 18:18:23 | 刑事ドラマ'70年代









 
殉職編を除けば本作がボン(宮内 淳)最後の単独主演エピソードとなります。ストーリーはありがちなれど、ボン活躍編のエッセンスを全て凝縮させた「ボンならでは」の内容で、ヤクザ軍団相手の格闘やGUNアクション、全力疾走シーンも存分に見られるし、ファンにとっては珠玉の回と言えそうです。


☆第360話『ボンは泣かない』

(1979.6.22.OA/脚本=畑 嶺明/監督=竹林 進)

ある夜、暴力団「戸川興業」の事務所に忍び込んだ三人組の強盗が、3億円相当の宝石類を盗んで逃走します。捜査の結果、犯人の1人で盗んだ宝石を持ってた溝口という男(鶴岡 修)が、戸川興業近くのアパートに逃げ込んだことが判明。

ボンはそこの住人で建築会社の電話交換手を務める独身OL=千佳(紀 比呂子)の挙動に不審を感じ、マークします。

最初は協力を拒んでた千佳だけど、ボンの人懐っこさと誠実さにやがて心を開き、確かにあの事件の夜、溝口が部屋に押し入って一晩籠城し、口外したら殺すぞと拳銃で脅した上、早朝出ていったことを告白します。もちろん、一晩でどれほどエッチなことをされたかは、岡田プロデューサーに口止めされて言えません。

となると、発覚を恐れる溝口たち、あるいは宝石奪還を目論む戸川興業の連中が狙ってくる恐れがあり、ボンは千佳のボディーガードを務めることに。当然ながらいつものごとく、ボンは彼女に惹かれていきます。

「刑事さん。1日、何人位の人と話をします?」

「えっ? そうだな、だいたい20人位ですか」

「私はその10倍の人と話をします。○○建設でございます、お待ち下さい、ご用件をどうぞ、○○建設でございます……でも、誰一人、それが私だってこと知らないんです」

「…………」

真面目で控えめな性格の千佳には、恋人はおろか親しい同僚もいないらしく、そんな彼女の孤独にも守護本能をくすぐられずにいられない、根っから女好きのボンなのでしたw

おまけに徹夜で張り込み中、笑顔で手作りおにぎりを差し入れされた日にゃあ、ボンでなくともイチコロです。

だけど刑事ドラマで若手刑事が恋をすれば、相手は犯罪者かその関係者と相場は決まってます。おそらく刑事ドラマ史上、そういう眼に遭った回数が最も多いであろうボンなのに、ほんと懲りない人ですw(対抗できるのは『俺たちの勲章』の中村雅俊さんぐらい?)

どれだけ捜査しても溝口の足取りは、千佳の部屋へ押し入ったのを最後にプッツリ途絶えたまま。その上、宝石奪還を狙う戸川興業の幹部=倉田(木原正三郎)も千佳の部屋に向かったまま消息を絶ってしまった!

不審に思った山さん(露口 茂)らが千佳の身辺を調べてみると、長年の夢だったヨーロッパ旅行の為に彼女がお金を欲しがってたこと、そして見かけによらず時に大胆な行動をとる性質であること等が判明。

そう、彼女はあの夜、溝口のスキを見て背後から…… そして宝石を探しに部屋へ忍び込んだ倉田も同じように……!

やがて千佳の部屋の床下から2人の遺体が発見されます。リアルに考えればとんでもない腐臭ですぐバレそうなもんだけど、まぁそんな屁理屈はどーでもいいです。

ボンは愕然としながらも、溝口から奪った宝石と拳銃を隠し持って故郷の伊豆へと向かった彼女を追います。

千佳は、実家の隣に住む耳が不自由な少女と一緒にいました。その子にヨーロッパの人形をたくさん買ってあげるのも、彼女が叶えたかった望みの1つだったのです。

海岸まで追い詰められ、銃口を向ける千佳に、ボンは静かに語りかけます。

「キミには撃てないよ」

「撃てるわ! 私はもう2人も殺したのよ!」

「キミはいい人だ。優しい人なんだよ」

「撃てる、撃てるわ!」

「誰も知らなくたって、俺は知ってる。キミがどんな人か……俺だけは知ってるよ。さっき、あの女の子と遊んでる時のように……俺に、おにぎりを出してくれた時のように……キミは優しい人なんだ」

「…………」

「それがあの晩、溝口がキミの部屋に侵入した時から、キミの不幸が……宝石を見た時から……」

「…………」

千佳が一番求めてたのは、電話交換手としてじゃなく1人の女性として自分を見、こうして話をしてくれる相手だったのかも知れません。

「私……別な女になりたかったんです……それだけなんです……」

海岸線に沈んでいく夕日を、並んで見つめる2人の後ろ姿がとても切ないです。もう少し早く出逢っていれば……

「淋しすぎたんですよ。控えめで、優しくて、思いやりがあって……でもあの人には、あの交換室で、知らない人と言葉を交わす生活しか無かったんです」

取り調べを終え、顛末を報告するボンに、一言だけボス(石原裕次郎)が問いかけます。

「……ボン。お前、あの人が好きだったのか」

「……はい」

だけど今回、ボンは取り乱すことも怒りを爆発させることも、そして泣くことも無く、最後まで冷静に対処し、ほとんど1人で事件を解決させました。その成長ぶりこそが次回主演作、すなわち殉職エピソードへの布石になってるワケです。

まぁしかし、それにしても……

浅野真弓さん、桃井かおりさん、高林由紀子さん、麻丘めぐみさん、立枝歩さん、丘みつ子さん、純アリスさん、そして紀比呂子さん……

ボンがこれまで想いを寄せて来た女性(を演じた女優さん)たちの、そうそうたる顔ぶれを見るにつけ思うことは、宮内淳さんが自らDVD映像特典で仰られてた通り、見境なしかよ!?ってことですねw ほんと見事にタイプがバラバラですw

それはともかく、こういう失恋話がよく似合うというか、ちゃんと視聴者に共感させられるキャラクターとして、ボンは本当に貴重な存在だったとつくづく思います。

ベテラン刑事たちはもちろん、ロッキー(木之元 亮)や後任のスニーカー(山下真司)にはとうてい似合わないし、歴代新人刑事の中で対抗できるのは最初のマカロニ(萩原健一)ぐらいじゃないかと思います。

強いて言えばラガー(渡辺 徹)がその路線を受け継ぐワケだけど、あのキャラだから重みが無いし、そのくせ身体は重くなり過ぎてシリアスに受けとれないんですよね。

そういう点でも、ボンが抜けた穴はとてつもなくデカイ。我々はもうすぐ、それを思い知ることになります。
 

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『太陽にほえろ!』#359

2020-06-21 19:55:13 | 刑事ドラマ'70年代










 
ボスに叱られた腹いせにゴリさんが無実のチンピラを絞め殺す現場を目撃してしまった美少女が、ゴリさんにつけ回された挙げ句に捕まり、犯されるという衝撃のエピソード! ……なら面白かったのですが……


☆第359話『ジョギングコース』

(1979.6.15.OA/脚本=渡辺由自&小川 英/監督=竹林 進)

神社の石段で転落死した男が着てるジャージを見て、ゴリさん(竜 雷太)が驚いた!

そのジャージは、出勤途中で知り合った少女=薫(岸本加世子)が、心配そうに探してた男が着てる筈のものと同じデザインなのでした。

現場に駆けつけた薫が叫びます。

「お父さん!? お父さんっ!!」

そう、亡くなったのは薫の父親=藤沢鉄男。ジョギング中に足を滑らせての転落事故に見えるけれど、いくつか不自然な点もある。その朝、薫の心配する様子が気になりながら、遅刻しそうだったもんで見過ごしちゃったゴリさんは、責任を感じて藤沢が転落に至ったいきさつを詳しく捜査します。

すると藤沢が3ヶ月前にジョギングコースを変えていたこと、それ以前のコースで3ヶ月前に傷害事件が起きてたこと等が判明。その事件に関わった為に殺された可能性が浮上します。

「どうしてそんなこと聞くの? 事故なのに……調べることなんか無いのよ、事故なんだから!」

せっかくゴリさんが苦労して捜査したのに、薫はなぜか真実を知ろうとしません。いや、薄々知っていながら認めようとしないのでした。

どうやら、チンピラが写真館の店主=岡本(山本紀彦)に酷い暴力を振るう現場を、ジョギング中の藤沢が目撃してしまった。岡本は被害届を出したものの、藤沢が証言を拒んだ為にチンピラは逮捕されなかった。それがきっかけで仕事も恋愛もうまくいかなくなった岡本が、藤沢を逆恨みして殺したらしい。

そして薫は、藤沢がチンピラに脅され、口止めされてる姿を目撃してしまった。大好きなお父さんが保身のために証言を拒んだことが信じられず、頑なに耳を塞いで来たのでした。

だけど薫の証言が無ければこの事件は解決できません。ゴリさんは心を鬼にして彼女を説得します。

「キミのお父さんは正しくて強くて、世界一いいお父さんだと思いたい……その気持ちはよく解る。弱くて卑怯で、脅しにビクビクするようなお父さんだとは思いたくない。そうだろ?」

「…………」

「しかし本当はね、弱い面も卑怯な面もあったんだよ。だけど、薫くんのお父さんは1人しかいない。1人しかいないんだ。しかも、殺されている」

「…………」

「キミはたった1人の娘として、お父さんを殺した犯人が憎くはないのか? この事件をちゃんと解決するんだ。それから、お父さんの優しい面をしっかり胸の中にしまって、生きていくんだ!」

そこでようやく、薫が心の扉を開きます。

「あの時の顔、お父さんの顔じゃない……お父さんの顔じゃないもん! 知らない方がいいと思ったの! 忘れた方がいいと思ったの!」

泣きじゃくる薫を無理やり……じゃなくて優しく受け止め、抱き締めたゴリさんは、その証言を元にチンピラを傷害罪で、岡本を殺人罪でそれぞれ逮捕します。もちろん抵抗したチンピラにはゴリパンチ100連発のオマケがつきました。

そうして事件は無事に解決し、薫からゴリさんに『優しいお父さんの事だけを心の中に秘めて、これからの人生を生きていきます』と綴られた手紙が届くのでした。(おわり)


……あれから時は流れ、人々の価値観が随分と変わりました。現在ならば、お父さんの優しい面だけを記憶するんじゃなくて、弱い面も卑怯な面も「ありのまま」受け入れなさいって、主人公は言うんじゃないでしょうか? 人間なら弱くて卑怯な面もあって当然だし、それを認めなきゃキミ自身も生きづらいだろ?って。

だからなのか、ゴリさんの説得も薫の手紙も、私のハートにはちっとも響いて来ませんでした。

それより何より残念なのは、このエピソードにゴリさん「ならでは」の個性がほとんど活かされてないこと。こんなストーリーならどの刑事が主役でも代わり映えしないだろうと思います。事件の内容よりも刑事の心情を重視するから『太陽にほえろ!』は面白かった筈で、これじゃ昨今の謎解き「だけ」の刑事ドラマ群と何も変わりません。

はっきり言ってつまんない。'79年はこういった凡作がやたら続き、民放ドラマ王座陥落への道を着実に歩んでることが、今こうして順番に観返してるとホントによく分かります。

今回も見所は2点のみ。自らジョギングして手がかりを集めるゴリさんの珍しいジャージ姿と、当時19歳のゲスト=岸本加世子さんの美少女ぶり。ちょっとアンニュイかつエキセントリックな演技は桃井かおりさんの若い頃を彷彿させ、もしかしたら意識されてたのかも知れません。

'77年のTBS系ドラマ『ムー』やバラエティー番組等ですでに人気者で、刑事ドラマは他に『明日の刑事』#27と#43、『新幹線公安官』第2シリーズ#12等にゲスト出演。'82年のビートたけし主演『刑事ヨロシク』では刑事役でレギュラーを務め、それが映画『HANA-BI』や『菊次郎の夏』など北野武映画への出演に繋がっていきます。

岸本加世子さんと言えば樹木希林さんと長年コンビで出演された富士フイルムCMの印象も強く、今回のエピソードに登場する写真館でもフジカラーのPOPがちらりと見えたりして、なんだか縁を感じました。
 

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『ライリー・ノース/復讐の女神』

2020-06-19 00:50:05 | 外国映画








 
2019年に公開された、ピエール・モレル監督によるアメリカ&香港の合作映画です。

ロサンゼルス郊外で平凡ながら幸せな生活を送ってた主婦のライリー・ノース(ジェニファー・ガーナー)がある日突然、麻薬組織の凶行によって愛する夫と娘を殺されてしまう。

ライリーがはっきり顔を憶えてたので犯人たちはすぐ逮捕されたにも関わらず、弁護士はもちろん検事や判事にまで組織の息がかかっており、あっさり無罪判決が下りた上に抗議したライリーが精神病院に強制入院させられそうになり、その搬送途中で彼女は脱走しちゃう。

そして5年後、ずっと行方をくらませてたライリー・ノースが復讐の鬼となって帰って来た! 後はもう、すべてが我々の望む通りに展開していきますw

監督があの『96時間』のピエール・モレルさんだけあって、映画の構造がよく似てます。とにかく展開が早く、かったるい説明描写がいっさい無い。

驚いたことに、平凡な主婦だった筈のライリーがジョン・ランボー顔負けの(つまりグリーンベレー並みの)殺人スキルをどうやって身につけたのか、その説明すら完全放棄してる!w

組織の下っ端に過ぎない実行犯たちや、戦闘スキルを持たない裁判所の連中をぶっ殺す描写も大胆に省略され、映画はライリーVS組織幹部たちの壮絶な戦いのみに焦点が絞られてる。

ライリーがピンチに陥る描写もあるにはあるんだけど、ホント必要最小限で「焦らし」はほぼ皆無。そして前述の通り、我々観客が「こいつ、殺してくれ!」って思った相手は必ずぶっ殺してくれるし、これはネタバレになるけどラストシーン、第一級殺人罪で拘束されたライリーを刑事が逃がしてくれないかなあ?って思ったら、案の定こっそり手錠の鍵を彼女に渡してくれるんですよねw

日本映画『ザ・ファブル』をレビューした時、ハリウッドのアクション映画はあんなに観客ファーストを徹底してるのに、日本のクリエイターは自分のエゴを優先し過ぎやろ!って、私は文句を書きました。

けど、ここまで100%こちらの欲求に合わせてもらうと、逆に物足りなく感じることを今回発見しちゃいましたw

いや、それは大好きな『96時間』にも薄々感じてた事なんだけど、あっちは拉致された愛娘を取り戻す正統派ヒーローの話だったのに対して、今回のはダークな復讐譚ゆえ「ご都合主義」に対する違和感が目立っちゃうんですね。

これは観客ファーストというより、モレル監督がとにかく「かったるい描写」が大嫌いで、もしかすると『ザ・ファブル』の作者以上に自分のエゴを優先させた結果なのかも知れません。

かったるい説明が無い、焦らしも無い、全ての登場人物が期待通りに動いてくれる「ストレス・ゼロ」の映画って、引っ掛かるものが何も無いワケだから逆につまんないのかも知れません。

いくらかったるくても、説明や焦らしはやっぱ必要なんですよね。なんか、思いがけず勉強になりましたw

しかし大柄なジェニファー・ガーナーが銃を撃ちまくる姿はすこぶる格好良く、アクションがサマになる女優としては『レッド・スパロー』のジェニファー・ローレンスや『アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンを凌駕してると私は感じました。それだけでも一見の価値アリです。
 

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『レッド・スパロー』

2020-06-17 12:12:31 | 外国映画










 
2017年に公開された、フランシス・ローレンス監督によるアメリカ映画。アカデミー賞女優のジェニファー・ローレンスがロシアの女性スパイ役に挑んだサスペンス作品です。

ただし、同じくアカデミー賞女優のシャーリーズ・セロンが同時期に主演した『アトミック・ブロンド』みたいな壮絶アクションを期待すると肩透かしを食らいます。私はそれをある程度分かった上で観たんだけど、それでもここまでアクションが無いのか!と驚きましたw

勿論それはこちらの勝手な思い込みで、スパイが主役だからと言ってアクション満載とは限らない。むしろジェームス・ボンドやイーサン・ハントみたいに世界各所で派手に暴れ回るスパイにスパイが務まる筈がなくw、リアルにスパイの世界を描けばこうなるだろうって事かと思います。

しかも女性がスパイになれば、腕力じゃなく色気を武器にするのが自然の摂理。その定石を意図的に覆した『アトミック・ブロンド』も、そうしなきゃ生き残れない女性スパイの苦悩に焦点を当てた本作『レッド・スパロー』も、アプローチは真逆ながらどちらも究極のフェミニスト映画と言えるかも知れません。

そしてアカデミー賞女優が厳しい鍛練を経て身体を張ってる点も共通してます。両者とも当たり前のように脱いでくれるし、シャーリーズは性別の限界を超えた格闘アクションで、そしてジェニファーは冒頭の本格バレエシーンで鍛練の成果を見せてくれます。主人公=ドミニカ・エゴロワはボリショイバレエ団のエースだった元バレリーナという設定なんですね。

それが公演中の事故(?)による負傷で一瞬にして夢を断たれ、ロシア諜報部に勤める叔父の紹介(策略?)によりスパイ養成所でハニートラップ、すなわち色仕掛けの訓練を受ける。

その教官を演じるのが『愛の嵐』のシャーロット・ランプリングで、男女の生徒を教壇に立たせて「さあ、脱ぎなさい」「さあ、始めなさい」ってw、まるで我が国のエロ系Vシネマみたいな場面を大女優たちが大真面目に演じちゃうワケです。素晴らしい!w

で、ドミニカはバレエで培った演技力でみるみる頭角を表し、アメリカへ渡ってCIA捜査官のネイト(ジョエル・エドガートン)から情報を聞き出す重要ミッションを与えられる。

だけどCIAは優秀だからドミニカの正体をすぐに見破り、彼女に二重スパイの話を持ちかける。諜報員を道具としか扱わない冷血ロシア人たちと、命を懸けて守ろうとしてくれる心優しいアメリカ人=ネイトとの狭間で揺れるドミニカ。

なにしろ、これはアメリカ映画ですw ゆえに結末は早い段階で読めちゃうんだけど、謎解きやどんでん返しに興味が無い私にとっては大した問題じゃありません。

ただ、それだけにストーリー以外の要素がどれだけ充実してるか?が重要で、同じ女性スパイの映画ならやっぱり、壮絶アクションにレズプレイまで見せてくれたシャーリーズの『アトミック・ブロンド』に軍配を挙げざるを得ません。

ジェニファーは今回が初脱ぎとのことで、ファンにとっては貴重な作品と言えそうだけど、濡れ場が無いんですよね。そこが彼女のこだわり所だったみたいだけど、ハニートラップを主題にしながらチョメチョメしないのは、やはり期待外れと言わざるを得ません。
 

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