

「どちらからいらしたのですか」
「えっ、札幌です」
先月、神楽の三浦綾子記念館を訪れたとき、
ネクタイをきちんと締めた品のよさそうなご老人から話しかけられた。
ひと目、三浦光世さん(綾子さんのご主人)とわかってびっくり!
思いがけず、喫茶室で三十分くらいお話しできてこんな嬉しいことはない。
「この見本林にはじめて綾子を連れてきたのは結婚前のことでした」
光世さんは営林局にお勤めしていたので、
愛する人にストローブマツやヨーロッパトウヒなど珍しい外国樹を見せたかったのであろう。
そのとき、見本林に立った綾子さんは決心されたという。
「いつかここを舞台にして小説を書きたい」
そして、「氷点」が誕生した。
三浦綾子さんは旭川市立高等女学校(現、北都中学校)のご卒業で、
小中学校ともわたしの大先輩にあたる。
小説「塩狩峠」では永野信夫となっているが、
暴走する客車の前に身を挺して暴走を食い止めた長野政雄は実在した人物である。
塩狩駅舎に彼の犠牲を悼む歌がいまでも掲げられている。
政雄の碑 雪の降るまま 積もるまま
長野政雄のことが知りたくて六条教会にも訪ねたことがあった。
そのことをお話ししたら、
「月に一度、六条教会で講演していますからぜひ寄ってください」
と名刺まで頂いた。
