古希からの田舎暮らし

古希近くなってから都市近郊に小さな家を建てて移り住む。田舎にとけこんでゆく日々の暮らしぶりをお伝えします。

『長良川』を読みました。

2013年02月21日 03時36分02秒 | 古希からの田舎暮らし 80歳から
 直木賞作家・豊田穣の自伝的な小説『長良川』を読みました。高齢になると文章を読む速度が落ち、ときに目だけが字を追って内容が認識できず、同じ文を読み返すことがあります。豊田穣の硬質な文を、そんな風に読みすすめ、最後まで読みました。

 あの戦争で日本軍の兵隊が捕虜になり、アメリカの捕虜収容所で2年余を過ごした。
 その間日本軍は敗戦に敗戦を重ね、多くの日本兵が東条英機の作らせた戦陣訓「生きて虜囚の辱めを受けず」に追い詰められて降伏することもできず、絶望的に銃剣をつけて突撃し、特攻隊に「志願」させられ、愚劣な作戦で餓死衰弱死させられ、200万を越す兵士が死んだ。
 捕虜になった兵士たちも、のうのうと過ごしたのではない。『長良川』の海軍中尉は、取調べを受け、自決手段もなく、コンクリートの壁に頭を打ちつけて自裁しようとした。手の動脈を噛み切ろうとした兵士もいる。
 いますぐ読み返す気力がありませんが、また読みたいと思っています。彼の文を引用してみます。


 裏切ることによってしか生きることのできなかった人間のことを、私は考えなければならない。積極的な裏切りもあれば、消極的なものもある。 (中略)  多くの「裏切り者」は、自分の行為に理由をつけようと試みる。生きるためには止むを得なかったのだと考え、自分をも他人をも納得させようとする。  (中略)  もし裏切らなければどうなっていたのか。案外静かな幸福が待っていたかも知れない。人間はそのような場には近よりたがらないのである。


 それにしてもなぜぼくは今頃こんな作家、こんな本と出会ったのか。




 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする