自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

秋! 虫の目写真シリーズ(26) ~合体タンポポ~

2020-11-07 | タンポポ

タンポポの花が二つ完全に合体したものを見かけました。場所は自宅すぐ近くの畔です。タンポポはセイヨウタンポポ。

 

茎は一つ。

 

反対側から撮りました。根元から茎が合体しているのがわかります。

 

先になって二つの花が付いています。

 

接写すると,先まで花茎が合体しているのがよくわかります。

 

花茎の中はどうなっているのでしょうか。切ってみると,中空は一部屋だけ。合体した分だけ幅広い空間になっています。どうやら蕾の発生時から一つの茎として合わさったようです。

 

ごくごくまれにこうした例が見られます。この株すべての花がこうなるわけではなく,この花茎だけが変異を起こしているのです。こういう例を単純に"奇形"と表現するのはやめておこうと思います。原因をすぐ化学物質に結び付けるのもいかがなものでしょうか。

自然は割り切って解釈できない深さを秘めています。それにしても,なにに起因しているのでしょうか。それこそワンダーです。

 


路傍のシロバナタンポポ

2017-03-24 | タンポポ

コンクリートとアスファルトとの,わずかな隙間から芽生えたシロバナタンポポがいつの間にかぐんぐん生長して,立派に花を付けるようになりました。今春もまた,花を開きかけています。今か今かと春を待っていたかのように。

そこを村人が通り過ぎていきます。春先の服装はまだ冬のそれからは抜け切れていません。わたしはカメラを構えてそんな春の匂いを残そうと試みました。 

 
次に通り過ぎたのが作業用の軽トラック。

 
陽が高くなって,タンポポはそのときを待ちかねていたように花をもっと開きかけました。


タンポポは,踏まれても踏まれても大丈夫な備えをしています。隙間に一旦根を下ろしていけば,もうそれを掘り上げることは不可能です。根からだって再生するのがこの草の戦略なのですから。

タンポポが春を歌い上げるときが近づいています。 

 


タンポポと昆虫(4)

2016-04-08 | タンポポ

4月に入って,タンポポの花が地面を覆うように咲いています。花と昆虫はお互いをパートナーとして巧みな関係を築いているので,花が多いというのは昆虫が多いことを示しています。それで,花の数だけ虫も目立ちます。

虫たちには,地上で咲くタンポポが黄色で装いながら集団でいると,まるでじゅうたんのように,絵の具でもザァーッと刷き広げたように見えるのでしょう。タンポポはその作戦で,自分の存在をアピールしているはず。地面近くにある花で,これだけ強烈な色はこの時期他にはありません。


そう思って見ていくと,タンポポの花のすぐ脇にあるオニタビラコの花にセスジハリバエが1匹とまっていました。オニタビラコは茎が1本だけすっくと立っていて,茎先に小さな花がほんの2,3輪付いているだけ。こんなに小さな花でも背の高さがアピールに成功しているのだあ,と思わず感心してしまいました。

ハリバエがどんな行動をするのか見ていると,今度はタンポポの花に移動。わたしはセスジハリバエとタンポポとの組み合わせを目撃したのは初めてです。キク科の花を頻繁に訪れる昆虫なのですが,そんなに見かけることもないので,わたしには珍しい組み合わせに見えたのです。それで,写真に収めました。

からだの棘状の剛毛はりっぱなもの。全身を覆っています。


口吻をぐーっと花の奥に差し入れると,からだが大きく傾きました。


あるときは,林立した蕊の隙間から口吻が観察できました。


1つの花で時間をかけて栄養を補給していました。もちろん,わたしには気づいていないからでしょう。わたしは花のすぐ傍の地面に指先を付け,コンデジをに保持しながら撮りました。至近距離からの撮影はときには困難が伴いますが,スリルがあります。

食餌を終えると,あっさり飛び去りました。たった一輪の花で貴重な画像を残すことができました。 

  


タンポポと昆虫(3)

2016-04-07 | タンポポ

3月,公園にて。タンポポの季節を迎え,草が刈り取られた敷地のあちこちに花が咲き始めた頃のこと。雑草がまだ短い今,タンポポの花茎は短くて地面付近で揃って咲いています。風の影響を受けにくいので,観察には好条件です。

ちょっと目を向けながら歩いていると,目に飛び込んできたのがヒメヒラタアブ。なんとも愛らしい格好,小ささです。名までが“ヒメ” 付きだとは!

 
花の奥に身を潜めるようにしている甲虫がいました。体長は3mm程度。蕊や花弁を食べているのでしょう。口器のかたちから,ぼりぼり食べる姿が浮かんできます。

 
タテハチョウが1頭,ヒメヒラタアブとなかよく花一輪上に。越冬態なので,翅の縁がずいぶん傷んでいます。昨秋から今春まで生き延びて来た苦労がしのばれます。お腹が空いているので,うれしいごちそうです。

 
たったひとときでさえ,こんなふうなのですから,これからはわんさかとおもしろい場を目撃できそうです。 

 


双子のシロバナタンポポ

2015-12-18 | タンポポ

本日12月18日(金)付け記事の第2話です。


 

近くのお年寄りがお亡くなりになって,今日が告別式。99歳で間もなく100歳ということで,ご家族の方はとてもたのしみにしていらっしゃいました。ほんとうに残念なこと。でも大往生。合掌。葬儀のお手伝いをさせていただき,勤務は休み。

それが終わると畑の果樹園で獣害防止ネットの片づけをしたり,野菜の収穫をしたり。作業をしながら,畑と家を往復。そして夕方のこと。たまたま家に戻ったときに,道端の隅でシロバナタンポポが開花しているのが目にとまりました。ふつうなら珍しくはないのですが,どうも花の姿が変わっているように見えました。

近寄って確認すると,花が2つ付いた双子タンポポでした。稀に見かける変わり種なのですが,稀といっても確率はとんでもないほど小さいのです。わたしは,これまでにカンサイタンポポとセイヨウタンポポの両方で見たことが何度かあります。そのうちのいくつかは標本にして保存しています。


さらに近づいて撮りました。


わたしが住む地域は内陸部です。ここにシロバナタンポポが咲いているのはふしぎなのですが,じつは背景があります。

シロバナタンポポの花茎は,生育環境さえ整っていれば1mを遥かに超えるまでに達します。どうもこれは特性のような気がします。1m数十cmの花茎の先に花が付いている光景は見事です。それを探して自生地に出かけたのは数十年前のこと。

以来何度も出かけて,そこで見つけた最長花茎は110cmをずっと越しています。もしかすると,小学一年生の平均身長より高いんじゃないかな。それをラミネート処理し今も保存しています。

そんなたのしい(?)体験を重ねていきながら,根や種を持ち帰り,我が家の周辺に植えたり蒔いたり。人為的なこうしたやり方は従来からの生態系の保存という点から見ると褒められるものではありませんが,興味ある種を身近で観察したい気持ちで試しにやってみたというわけです。

結果,シロバナタンポポが適当に自生し始め,そのことが今回の発見につながったのです。 

 


あちらこちらにヤブキリ

2015-04-21 | タンポポ

今の時期,タンポポがどっさり咲いています。在来種も外来種も元気いっぱいです。在来種はけっして負けることなく,縄張りをつくって生きています。

それらのタンポポを見ていると,ごく小さなバッタの幼虫がいることがわかります。あちこちにいて目立つので,ふしぎに思うほどです。これはヤブキリの若齢幼虫で,背中に褐色の筋が一本走っているのが特徴です。


からだの大きさに不釣合いな程の触覚は,人間の目にはスマートさを演出するのに成功しているのですが,もちろん,格好良く見せるための道具なのではありません。触覚は,匂いや振動を感じる高感度センサーです。

からだには花粉がどっさり付着しています。大好物のタンポポを訪れ,花粉や花弁などを食している証拠です。タイミングがよければ,食べている瞬間を観察することができます。見ているうちに,ここを訪れる前,離れたところから,この花にセンサーを近づけて好物かどうか確認している姿が浮かんできました。

人が近づくと,あるいはそっと近寄っても,とても敏感で,警戒心が強くて花の裏側に隠れることがよくあります。これは複眼で姿を感知するほか,触覚で空気の振動を感じたからなのでしょう。

したがって,ヤブキリの幼虫を接写しようとすると,触覚に感知されないように注意を払わなくてはなりません。こんなことでも,いのちのふしぎ,巧みを感じます。

ついでに,察知されず,うまく被写体にできたコマを二つばかり。

 


こちらはキリギリス。背中の筋は二本なので,ヤブキリと区別が付きます。ちょうど蕊を食している最中でした。おいしそうな顔に見えますが,どうでしょうか。


後方には,蕊の先を食べられた花柱がポツンポツンと立っています。

意識的に目を向けると,意外な世界がタンポポにも広がっています。

 


春,タンポポ

2015-03-31 | タンポポ

道端にタンポポの花が目立つようになりました。在来種が花を開き始めたことにもよります。

3月31日(火)の午後,恒例のウォーキング。歩いていると,前方のタンポポにキタテハがとまっているのが目に映りました。近づくと,口吻を伸ばして蜜を吸い上げているのがよくわかりました。わたしにはまったく気づいていません。お蔭で,下写真が撮れました。 

 


しばらく行くと,今度はモンシロチョウが蜜を吸っていました。もちろん口吻が確認できました。タンポポは在来種です。写真を撮っていると,チョウは舞い上がったものの,また近くの花にとまりました。たぶん,わたしには気づいていないはず。

 
タンポポの花を見ていると,黒い小さなものが付いている花がありました。よくよく見ると,それはごく小さなハエでした。一匹どころか,数匹いました。ショウジョウバエのなかまでしょう。


目が慣れてきてわかったのですが,あちこちのタンポポで同じハエが見つかり始めました。いったい何をしていたのでしょう。ふしぎです。 

 


冬のタンポポと昆虫

2015-02-13 | タンポポ

タンポポは春の花とは限っていません。一年中咲いています。とりわけ,わんさかと咲き誇るのが春なのであって,四季を通して咲くというのがこの植物のおもしろいところ。

ただ,冬のタンポポは,ほとんどが外来種セイヨウタンポポです。在来のニホンタンポポは基本的には昆虫の手助けがないと受粉できないのに対し,セイヨウタンポポはまことにしたたかな戦略の持ち主で,受粉してもしなくても結実するのです。つまり,虫が訪れなくてもちゃっかりと実を結ぶしくみを備えているというわけです。

写真は2月に撮ったセイヨウタンポポの種子です。充実しているように見えます。


下写真は,つい先日写したセイヨウタンポポです。昆虫のお蔭で,花の一部が受粉できそうです。



受粉して結実する,しなくても結実する,この差はじつは大きな意味があります。 繁殖能力に秀でたセイヨウタンポポの生き方はあっぱれという印象を持ちますが,事情はそれほど単純ではありません。

受粉せずに結実するのは,挿し木などと同じ類いで,親の形質をそのまま受け継ぐことになります。それは,場合によっては生き残り戦略としてはたいへん危険でもあります。なにしろ,致命的な環境下におかれたとき,全滅する恐れがあるのですから。

受粉結実する場合は,媒介昆虫によって他の花の花粉が運ばれてくる確率が高くなります。これによってできた種子は,親の形質に近いものを有しているものの,微妙にそれとは異なっているために,遺伝子の多様性を確保できることになるのです。 

多様であるということは,それだけ環境への適応が柔軟でありうるということです。致命的な事態が発生しても,必ず一部の子孫は残されていきます。在来種は外来種ほどに種子を生産しなくても,環境の変化に合わせながら堅実に子孫を残し続けるでしょう。

冬は訪花昆虫がほとんどいないといった感じなので,咲くのは自ずとセイヨウタンポポ。これが正解なのですが,在来種もときには見受けられます。稀に昆虫が訪れて受粉が完了するか,あるいは万一に備えた保険(自家受粉)を使って種子を生産するか,それとも受粉を果たせずに終わるか,いずれかでしょう。


実際,我が家の近くの道端を観察していくと,今でも在来種が咲いていますが,じつに弱々しい綿毛です。結実までにはたぶん至らないと思われます。 

 


晩秋のタンポポと昆虫

2014-11-30 | タンポポ

晩秋の道端にて。

黄色いタンポポがあっちこっちに,ほんのすこし咲いています。ほとんどはセイヨウタンポポです。過日,自然探検で子どもがタンポポを見つけて「今頃,咲いているの?」とふしぎそうに尋ねました。それで,セイヨウタンポポと在来種の違いを伝え,見分け方,寒い時期のタンポポの開花について触れておきました。今後,冬の自然観察の視点として取り上げられそうです。

さて,寒い中,タンポポを訪れている昆虫を見かけました。オオハナアブです。タンポポはセイヨウタンポポ。 花粉を舐めているというのでなく,じっとからだを休めているというふうでした。寒さに耐えているのでしょう。からだには花粉が付いているので,あちこちの花を訪れていたのは確かです。

 

 
別の花に,ヒメヒラタアブがとまっていました。口器を伸ばして,餌を舐めているのがよくわかりました。一所懸命の様子です。

 


また別の花に,クロヒラタアブが訪れていました。日が射していたので,割合動きが活発でした。

 

 
こうした昆虫たちは,間もなく,寒さの本格的な訪れとともに姿を消します。 今精一杯生きているんだなと感じさせてくれる風景でした。

 


タンポポと昆虫(2)

2014-03-23 | タンポポ

 オオイヌノフグリの花を巡っていたオオハナアブが,タンポポの花に寄り道しました。

 
名に接頭語“オオ”が付くだけあって,タンポポと比べても大きいなあと感じます。それがタンポポの身を埋めた格好です。でも,全体が隠れるわけではありません。ブなんだか,ッシュを行くゾウの貫禄を連想させます。

オオハナアブの生態には特有の筋書きがあります。幼虫は水中生活をおくっているのだとか。そのために,特別な呼吸器官を備えているそうです。わたしの想像を超えています。

では,成虫はどんなふうに,どこに産卵するのか,蛹にはどこでどのように変化するのか,……,とにかく好奇心に火を灯す生態のようです。

実物を手にしながら,「これがその幼虫ですよ」と,どなたか教えてくださったら,もう気分は最高なのですが……。

そういえばよく似た昆虫に,ミズバチがいます。水中に潜って,そこに棲むトビケラの幼虫に産卵管を刺しこんで産卵するという,めずらしい生態の持ち主です。自然界には,身近でもふしぎな世界が拡がっています。