先頃の話。食育に目を当てて,日頃から和食献立づくりで実践的な仕事をされているAさんと話す機会があって,クズ粉採りについて話題を提供したら,なんとスゴイことをおっしゃいました。
「あなたのその試み,いいですねえ。それで,ミルを使うのたいへんでしょう。材料を乾かしてから潰さなくてはいけないし。それなら一層,ミキサーでやってごらんになったら? それなら根を乾かす必要はありませんよ。できるはず」
すいすいとおっしゃるのです。ミキサーで繊維をほぐすのなら,野草紙作りでいくらでも,飽きるほどにやってきたのに,そこには目が向かなかった! なんだか,根がもつ頑固さからつい先入見にとらわれてしまっていたような。我ながら,なんと遠回りの試みを重ねてきたことか。マア,手作業でやるというのが大前提だったもので,ある程度の迂回は止むを得ないにしても,びっくり!
Aさんの助言どおり結果はばっちりでした。以下,その工程を報告します。
残っている根を短めに切って,ミキサーに入れます。

水を加えて繊維をバラバラにします。紙作りの経験から,根の量はすこしだけ(ミキサーの回転部が隠れる程度),水は根が浸る程度に抑えます。回転開始時はバリバリッという音がして根が粉砕されますが,すぐに音は消えます。もうこれでおしまい。
デンプンの多くは水に混ざっているので,最初にガーゼに入れるのは水部分にします。こうすると,効率よくデンプン液が採り出せます。水中で揉んで,デンプンをしっかり絞り出します。確かに,白い濁りとなってデンプンが流れ出ます。
続いて,繊維から同じ要領でデンプンを採り出します。


以上の作業だけで,これまでより多くのデンプンが効率よく採り出せた印象がありました。それはガーゼから流れ出るデンプン量と,容器中の水面近くに見えるデンプンの流れでわかりました。
下写真は残った繊維団子です。捨てるのはもったいない! これを使って野草紙を漉こうと思っています。

あとは,これまでと同様にデンプンの沈殿を待って,上澄み液を捨てる,また水を入れて撹拌する,……,この繰り返しを何度か行えば完結です。

以上が作業工程です。Aさんと話さなかったら,こんな簡単なことが見えて来なかったなんて,なんとも恥ずかしい限り。しかし,“ナットク”体験知になりました。感謝!
まだ続きますが,次回に。