自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

マンサクと昆虫たち

2013-01-31 | 昆虫と花

寒くても晴れる日が続き,マンサクの花がすこしずつ開いていきます。1月31日(木)は雲ひとつない快晴に恵まれ,マンサクが黄金色に光って見えました。 

きっと昆虫が来ているだろうと思って探すと,予感がピッタリ当たりました。大きなキンバエ(オス)が一匹いました。一年前にも同種のハエをくわしく観察したことが懐かしくよみがえってきました。

気温が低いので活発に動き回ることなく,一箇所に居座るとその周辺をわずかに歩いて移動するだけ。観察者にとっては願ってもない被写体です。

口吻を見るとずいぶん花粉が付着しています。複眼にもすこし付いています。 

もっとよく見ると,胸にも脚にも花粉が付いています。それにしても,たいした毛の持ち主です。からだ中が毛で包まれています。虫のからだを守りながら,送粉にちゃんと役立っています。もちろん,本人(本虫)はそんなことまったく知らないのですが。

ときどき脚を掃除するしぐさをします。口吻も自分流に清潔にしたいのでしょう。なにしろ,前脚も口吻も,味を感じるだいじな感覚器なのですから。 

やがて飛び立ったかと思うと,近くの花に降り立ちました。そうして,またしばらくそこで舐蜜に勤しんでいました。彼らにとっては,貴重な蜜源なのです。 

 


マンサク,今季初めての訪問者

2013-01-30 | 昆虫と花

1月29日(火)。晴れ。昼間,日が照って,無風で,比較的穏やかな時間帯がありました。「こんな天気なら,もしかするとマンサクに虫が来ているかもしれないな」と思って行くと,やっぱりです。

いちばん先に目に入ったのはクロヒラタアブ。はじめ枝に止まっていました。観察していると,枝を歩いて花に移動。そして蜜を吸い始めたのです。まだ蕾がほとんどなので,蜜にありつく確率は低いでしょう。にもかかわらず,黄色の花弁とかすかな匂いを敏感に感じとって訪れたのです。

細長い花弁を大きく開いて,大きな花に見せかけ,さらに花が集合体を形成していっそう目立つ戦略をとっています。他には花がないので,目立つといえば目立つ色合いです。黄色の花の中央が赤紫。そこに蕊が格納されています。昆虫は,色に引き込まれて巧みに導かれるようになっているのです。 

「もっといないだろうか」と思いながら,探しました。いました,いました。どうやらヒメフンバエのようです。じっと見ていると,これも枝を歩いて花に移動。そうして吸蜜を開始しました。しかし,期待外れだったようで,淡白にもすぐに花を離れました。 

そして,また別の花に。 

もっといないか,見ていくと,体長が5mm程の小さなハエがいました。タネバエでしょうか。 花に完全にからだを入れて,しばらく蜜を吸っていました。

こんなに寒い時期でも,花が咲くとそれを待っていたかのようにして虫たちが訪れるという生物的事実が光って見えます。厳冬期にも咲く花があるということは,昆虫の訪問が期待できるからです。ある種の虫たちはそのことを心得て,少しの日だまりを見つけて動き回っていることが理解できます。

この日に観察できた昆虫は3種。こんなわけですから,マンサクの花を含めて冬の花に以前にも増して着目していこうと思っています。

 


冬のカンサイタンポポ

2013-01-29 | 

わたしが住む地域では,カンサイタンポポのほかにセイヨウタンポポ,アカミタンポポがあり,わずかながらシロバナタンポポも生えかけています。セイヨウタンポポとアカミタンポポは花や葉だけでは区別がつきません。実ができるのを見届けて色を比べてはじめてわかります。

カンサイタンポポが外来種に一方的にやられているかといえば,そんな単純なものでもありません。うまく棲み分けができているように思います。

これらのタンポポのうち,冬開花するタンポポはセイヨウタンポポとアカミタンポポです。このタンポポは一年中咲きます。冬は虫の花粉媒介を必要とせず,ちゃっかり結実します。それだけたくましい生活力をとくべつに備えているところがミソです。

それから,付け加えですが,つい先日,家の前でシロバナタンポポの花を一輪見かけました。この花は完全に萎んでしまって,結実しませんでした。シロバナタンポポ一般で考えると,冬の結実はどうなのでしょう。

一方,どの地域であれカンサイタンポポが冬咲くのはかなり珍しいでしょう。この種の結実には,必ず訪花昆虫を必要とします。いまどき昆虫はほとんどいないと考えられますから,まず咲いても無駄花にしかならないでしょう。

無駄花にしかならないのに,今日,道端でこの花を見かけました。ここはカンサイタンポポが小群落を形成しているところで,春になると結構まとまったかたちで花が並びます。 

 「この花は結局このまま萎んで枯れるしかないなあ」と思いながら,写真に収めました。

すぐ近くに,菜の花が咲いている畑があります。タンポポを撮影した後,その花を観察してみました。すると,驚いたことにツマグロキンバエが一匹だけ蜜を舐めていたのです。

菜の花は黄色,タンポポも同じ黄色。黄色に導かれて菜の花を訪れたのなら,タンポポにだって訪れてもふしぎではありません。そうなると冬にも実を結びうるという話になります。話は単純に割り切れないものです。例外のないルールはないといいますが,これもまた自然の多様性のうちと承知しておくのがいいのかも,です。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その186)

2013-01-28 | ジャコウアゲハ

1月28日(月)。晴れ。昨日の予報どおり,昨夜寒波がやって来てわたしたちの地域でも積雪模様。辺りはうっすらと雪化粧して,我が家の近くを走る国道を見ると,行き交うドライバーが普段より慎重に運転しているように見えました。

家では庭のマンサクが雪を抱いて……。寒さにぎゅっと身を引き締めているかのようです。

植木鉢では,ジャコウアゲハの蛹が冷え冷えとしていました。下写真A・B・Cに合計4個の個体が写っています。

鉢に挿した割り箸では,個体(B)が雪帽子を被っていました。昨冬も,自然で目撃した類似の場面を撮影して掲載しました。

わたしたちの感覚からすると「なんと寒いことよ!」と感じられる風景なのですが,ジャコウアゲハの棲息地に雪が降るなんて自然界では当たり前の出来事です。こうした厳寒期を無事にしのぎ通すしくみがこの個体にちゃんと備わっているのです。

これはまさに,生命史を貫いて自然界の均衡が保てるようにしくみが整えられてきたほんのひとつの証しにすぎないのですが……。そうではあっても,一つひとつの事例はいのちについて考えるとき,深く語りかけてくれます。

印象に残る朝となりました。 

 


味噌仕込み

2013-01-27 | 日記

1月27日(日)。晴れ。午前中,味噌作りの手伝いをしました。

隣り町に,味噌を作る公的な施設があります。大きなしっかりとした設備が整っているところです。地域の希望者は5人で組を組んで,そこで味噌作りができるのです。年間65組が使用するとか。年間といっても,冬を中心に最盛期があります。数からすると,ずいぶん繁盛しているようです。材料の大豆は地元産ですから,これはもう安全そのものです。

味噌作りにはコツが必要です。長年,そこで指導をしておられる方があって,その方の指示に従って作ると失敗はないというわけです。

さて味噌作りといっても,一日でできるわけではありません。米を洗って,麹菌を付けて,大豆を蒸して,それを塩と混ぜて,そうしてミキサーにかけて,……。三日がかりです。 

わたしは今日,大豆と米と塩を混ぜるところから分担しました。 大きな桶を使い,一時的にせよ,力のいるしごとになりました。混ぜた後,ミキサーにかけて練り合わせます。これを見ていて,子どもの頃がよみがえってきました。母が家で手回しのミキサーで同じ作業をしていたことを思い出したのです。懐かしい懐かしい場面です。

ミキサーの穴から出てきた材料を団子状にして,今度は味噌桶に詰め込んでいきます。そうして出来上がり!

このまま10月まで寝かせて,やっと味噌として使えるのです。今使っている味噌も一年前,こうして仕込んだものです。

(注)写真は本文には関係ありません。 

 


子らと綿菓子機作り

2013-01-26 | 日記

今日1月26日(土),勤務施設で実施している事業『おもしろ科学教室』の出前教室で,綿菓子機を作りました。講師は『かがくおじさん』こと,私が務めました。参加申込者は小学校児童6人。しかし,インフルエンザが流行っていることもあって,結局3人の参加に。補助役として中学生ボランティアが2人応援に来てくれました。

はじめに本物の綿菓子機で綿菓子を作って,そのしくみを大雑把に確認しました。「簡単な装置を手作りして,綿菓子を作りたい。何がいると思うか」と尋ねることから始めました。それについては実に反応がよくどんどん出てきました。

さっそく,綿菓子を作る容器から作業開始です。段ボール箱の内面にアルミホイルを貼り付けます。

それができると,回転部分の製作です。入れ物には,お茶やコーヒーの入っていた蓋付きアルミ缶を使いました。モーターは100円ショップで買った扇風機を。それに付いている羽根を外し,ナット棒・ゴム管を使ってアルミ缶とつないでいきました。つなぐ器具は釣用ゴム。

子どもたちはとても熱心に作業をしました。ボランティアの2人もよく動きました。

さあ,できあがり! さっそく綿菓子作りに挑戦です。ザラメの砂糖を入れたアルミ缶を底から加熱するのに,固形燃料を使用しました。うまくできる子とそうでない子に差が出てきました。確かめると,アルミ缶に開ける穴の数によることがわかりました。10程度ではダメでした。使った乾電池が古いので,回転力が落ちていたことも関係しているでしょう。穴が少ないと,砂糖が穴に詰まったときに出られなくなるのです。そんなとき,一度煙が出たことがありました。

問題点を改善することで,結局,3人ともバッチリできたのです。

こうした工作はある程度うまくいってこそ,参加者は満足できるでしょう。その点,まあよかったかなと思いました。

終わって感想を一言ずつ伝え合った後,用紙にも簡単に書いてもらいました。以下がそれです(原文のまま)。

  • ふつうにわたがしきが作れるのは,とってもおもしろかったです。またおじさんに教えてもらいたいです。(3年)
  • しくみがわかってすごいなぁと思った。(4年)
  • わたがしが,こげたべっこうあめの味がした。(6年)
  • 普段ふれあう機会がない小学生と中学生ですが,ボランティアを通してふれあう機会があたえられることに感謝したいです。(中学3年)
  • ボランティアは,何回もしたことがあるけど,わたがし機をアルミカンや自分の身近にあるもので作れるとは思っていませんでした。作り方を知れてよかったし,新たな発見ができてとてもよかったです。ボランティアでいいけいけんができました。ありがとうございました。(中学3年) 

 


ホソヒラタアブ,そしてオオイヌノフグリ

2013-01-25 | 生物

つい先日,我が家の庭の木にホソヒラタアブがとまったのを目撃しました。カメラをもって近づいていくと,さっとどこかに飛んでいきました。こんな寒い中で,アブが飛んでいることがとてもふしぎに思われました。

いったい何の蜜やら花粉やらを食べているのでしょうか。

今日,勤務先でのこと。昼にウォーキングをしていて,オオイヌノフグリの花をたくさん見ました。場所は田の畦。小群落を形成しているとでもいえる景観です。日が照っていたので,花はちゃんと開いていました。ついでに,なにか虫は来ていないかと探したのですが,これは見当たりませんでした。

オオイヌノフグリの花とホソヒラタアブの組み合わせはぴったり似合います。そういえば,これまでに何度も何度も見て来た組み合わせです。

今開花中のオオイヌノフグリは無駄花でなく,自家受粉で結実するのでしょうが,本来的には他家受粉を切望しているはず。それが遺伝子の多様性を確保できる道なのですから。その点からすると,いずれヒラタアブが訪れているところを目撃できるでしょう。はたして,それはいつか。

こんなことを思うと,田舎の冬の自然の移り変わりを見ていくたのしみが湧いてきます。近くの山々は,峰に雪を抱いています。歩いていも,ビリッと寒さが身に応えます。そんな中,ほんのわずかな自然の変化を見つけようと目を凝らしているところです。

 


塩酸を不用意に扱った不祥事

2013-01-24 | 随想

つい先日の全国紙朝刊を見て,「困ったなあ」と思う事案を目にしました。それは社会面に大きく取り上げられた記事で,ひとりの青年教師の不祥事を扱ったものでした。

23歳の中学校の理科教師。授業で実験がうまくいかないときは,塩酸を飲ませると予め宣言しておいて,実際にふたりの生徒に飲ませたといいます。塩酸を飲むことを罰として強要したかたちです。実害はなかったらしいのですが,将来を期待されている年齢の教師がこうした短絡的な行為に至ったのはまことに困ったことだと思います。

そのことを,新聞は次のみだしで伝えています。

『塩酸混ぜた水飲ませる』『教諭,実験失敗の生徒に』

どんな背景があったのか,報道を読む限りよくわかりませんが,塩酸を恐怖の対象にしたということだけでも大きな罪作りでしょう。

大抵の酸は,濃度を気にかけていればアルカリ程恐れることはありません。酸は文字通り“酸っぱい”ものという意味をもっていますから,食品で酸っぱいものは酸がある証拠です。梅もレモンもリンゴも,お寿司も,……。生の植物にもたくさん含まれています。スイバ(酸葉あるいは酢葉!)もイタドリも,スノキ(酢の木)も。つまり,酸は味覚としてとても重要な要素をもっているわけです。

しかし,アルカリは違います。こちらは石鹸が生活用品の代表例であるように,濃度が高いと皮膚を溶かします。昔,石灰の粉が目に入ると危険だとよくいわれたのはこの例です。こわい,こわい。今は,安全な石灰が使用されています。

さて,わたしがとても気になるのは,塩酸だって(!)うんと薄ければまったく恐れることはないのに,まちがった取り扱いや報道のしかたのせいで塩酸というだけで恐怖心を抱かせる結果につながったように思われる点です。

酸・アルカリというものさしは物質を知る重要な要素です。はたらきがどの程度強いのか,弱いのか,どう扱えばいいのか,そういうことを考える手がかりになっていきます。これはまさに物質学習の事始めにあたるものです。

わたしは,塩酸を使う学習を初めて行うときはいつも,塩酸をうんとうんと薄めて一味なめることから始めていました。例えば,10ml程度の水に希塩酸をスポイトで1滴入れて攪拌する,それをなめる,味がしなければさらに一滴加える,そして攪拌してなめる,……,そんな感じです。すると,ちょっと酸っぱいかなという始まりがやってきます。ほとんどの子どもは「ちょっとしょっぱい感じがする」といいます。その程度でちょっとなめる体験は終わり。

ちょうどそれは食用酢を水に入れて味を確かめるようなものです。けっして恐れる次元の問題ではないのです。

青年教師の姿勢はまさに悪乗りの一策にすぎないのですが,世間騒がせな三面記事になってしまいました。そして今回の不祥事報道は,結局「塩酸は怖い」という印象を植え付けただけ。なんと低次元な話なのでしょう。

(注)写真は本文とは関係ありません。 

 


今年もマンサクの花が

2013-01-23 | 

1月23日(水)。朝,庭のマンサクをふと見ました。すると,黄色のものがポッ,ポッと付いているのが目に入りました。花が咲きかけたのです。大急ぎで傍に寄っていきました。そうして写真に収めました。出勤時のあわただしい時間帯のこと。早春の匂いが漂ってきて,気持ちがスキッとしました。

 

実は,先日見たとき蕾が膨らみ始めていたので,開花間近だな思い,この瞬間をとてもたのしみに待っていたのです。

春を告げて他の花に先駆けまず咲く,つまり“まんず咲く”といわれることから名づけられたというこの花。漢字は「万作」,あるいは「満作」。なんとおめでたい文字を持った木でしょうか。もちろん,人間が勝手に付けたにすぎないのですが,それだけ人間の生活に結びついた木でもあるという印です。

この花については,本ブログで毎年のように取り上げています。花を訪れる昆虫も取り上げてきました。さて,今年はどんな昆虫を目撃できるか,わくわくして待つことにしましょう。

北国の春はまだまだです。一足早いわたしたちの春。厳寒期ではありますが,日照時間の変化を敏感に感じとってか,マンサクが早々と春を届けてくれたのでした。

 


今年の“とんど”

2013-01-22 | 随想

1月13日(日)に,わたしたちの集落の“とんど”行事を行いました。

実行委員会では,ぜんざいやらお酒やら,綿菓子やらを準備しました。ビンゴゲームも例年どおり。本年度最後の集落をあげたふれ合い行事になりました。幸い,寒いながら天気がとてもよく,盛り上がりました。「ホッ」。

メインはとんど焼き。この日のために,5年生のHさんに発火法の手ほどきをして準備を整えてきたのでした。いよいよ本番です。

Hさんはずいぶん頑張りました。はじめわたしは完全に任せようと思って,助言だけしました。しかし力が弱いのか,摩擦力に負けてしまい思うように火切り棒が回せません。どうしても止まり気味になるのです。それで,手を添えて力を加えることにしました。

結果,1回で種火ができました。あとで火切り板を見ると,厚さが1cmの杉板の底面にまで穴が完全に達していました。たいへんな作業だったことがうかがえました。

種火ができると,Hさんは手順どおり,モグサと麻繊維を使って炎を つくり出しました。これを年男・年女がトーチに点けて,とんどに移しました。このあとは,下の写真のとおりです。 ほとんど風がなかったので,煙と炎が真上方向に上がっていきました。

炎を眺めながら,参加者は一年の無病息災を祈ったのでした。一人ひとりの健康と幸せはもちろんなのですが,集落全体の繁栄を願わずにはおれません。 

というわけで,Hさんは緊張したでしょうが,大役を果たしてくれました。これで,今後子どもが火を起こす道筋がつきました。