7月10日(水)午前7時。見ると,萼が開いて,ラッパ状の花が開いていました。ついに,第一号が我が家で開花! 入口の色といい,毛の生え具合といい,昆虫を招き入れる巧みな戦略なのだなと感心しながら撮影。
焦げ茶色が入口周辺を彩っています。その色を目印に,昆虫が訪れ,奥を目指します。毛は,虫が入ると出にくい向き,つまり逆さに生えています。長い生物史のなかで,ウマノスズクサがこうしたかたちを獲得した知恵には舌を巻いてしまいます。
この花,もしかすると朝開く性質をもっているのかもしれない,と思いながら見ていると,偶然どこからともなく小さな小さなハエが近づいてきました。そうして,花の周りをぶんぶん飛び回りました。すごい速さ! わたしにはブヨの大きさに見えました。
写真に撮れるチャンスが訪れたらなあと思った瞬間,入口に止まることなく,さっと奥に入ってしまったのです。一瞬のことで,何が起こったのかさっぱりわからないといった感じでした。奥から出ている匂いか,色に誘われ奥に導かれて行ったのでしょう。嗅覚のよさに合点。よほど魅力的だったのでしょう。匂いを嗅いでみましたが,わたしにはわかりませんでした。
これで受粉がうまくいくはず。
先ほど朝開花するのかも,と書きました。早朝なら風がほとんどなく,匂いを辺りに効率よく漂わせることができます。それにしても,早くからしっかり活動している昆虫がいることに驚きます。
ところで,中に入った昆虫はどうなるか,です。逆さ毛のせいで出られなくなるのでしょうか。調べてみると,そうでもなさそうです。なかにはそれでおしまいという例もあるでしょうが,ほとんどの場合は花の巧みなしくみのお蔭で出て来られるのです。
ウマノスズクサは雌蕊先熟型で,オシベに取り囲まれたメシベは一足先に熟します。そこに昆虫がやって来て吸蜜。その際,他の花から運ばれて来た花粉が付いて受粉が行われます。完了してしばらくすると,逆毛は萎び,昆虫はほとんど苦労なく出て行けるとか。
雌蕊先熟型なのは,たまたまこの花の特性であり,たとえ雄蕊先熟であっても理屈は同じです。こうした戦略は,この草が近親結婚を避けて,多様な遺伝子を種に残し,たくましく生き残ろうとしている姿なのです。こう思って改めてウマノスズクサを眺めると,そのえらさに「ほほう!」と感じ入らざるを得ません。