自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ラッカセイの収穫

2012-11-30 | 花と実

親子栽培体験で,ラッカセイを育ててきました。過日,それを収穫しました。硬い黒土で栽培したので,実が付きにくいと思っていたのですが,予想外にできました。夏の暑い時期,土寄せをしたのも効を奏したものと思われます。

このラッカセイは,保護者から栽培希望が出て作られたと聞きます。「聞きます」なんて書いて妙ですが,わたしは後任として引き継いでいるのです。それはともかくとして期待したように収穫ができたことは何よりです。

わたしは,これまでにラッカセイを何度か栽培した経験がありますが,この植物の興味深い生態についてはまったく知りませんでした。それを知ったのは『植物はすごい』(中公新書)を通してです。この本はぜったいにお薦めできる良書です。植物博士がわかりやすく解く草木の“スゴイ!”が満載です。ついでながら,著者は,夏休みに放送される『子ども科学電話教室』の回答者の一人でもあり,関西弁でユーモアのある解説ぶりに定評があります。

この本の中に,ラッカセイのことが簡潔に触れられています。その内容とは以下のことです。

  • ラッカセイのふるさと。(へぇー!)
  • ラッカセイの実が地上にできず,子房が伸びて地中に潜るわけ。(そうなんか!)
  • ラッカセイが自然界(原産地)で増える戦略とは。(たまげた!)

ラッカセイの生態を知ってから,私の脳裏には何だか,この植物のスゴサと人間が利用したカシコサが合わさって浮かんできます。それで,収穫のときに,この話を皆さんにさせていただいたのでした。

ただありがたくいただくのでなく,事情を知っていただくと,一味も二味も違ってくると思うのです。 

ついでながら,保護者から根に付いた根粒について質問が出てきました。これだけの根粒を見れば自ずと出てくるでしょう。豆科植物の知恵について触れておきました。直接体験を通した,こうした疑問と謎がわかったときの驚きはこころに残り続けると思われます。これが体験活動の利点でもあります。

 


サザンカを訪れた虫たち

2012-11-30 | 昆虫と花

自宅の生垣で,今サザンカが白い花を付けています。 数輪だけなので,訪れる昆虫が一際目立ちます。観察してそれを写真に収めるには,ちょうど都合がいいのです。

か細いヒメヒラタアブがやってきました。花粉に口器を付けています。葯とからだの大きさを比べると,アブが何とも小さなことがわかります。これだけオシベがあれば,食べ物は余りかえる程あるでしょう。

同じ仲間のホソヒラタアブが訪れました。蕊を抱きかかえる格好で姿勢を保ち,餌を貪り食べています。頭をすっぽり覆うような複眼で外界にある大好物を感知します。 

キンバエが一匹やって来て,メシベの根元に潜り込んでいきました。そこにある上等の蜜をちゃんと心得ているのです。さっそく口吻を伸ばして吸い始めました。 

キゴシハナアブが飛来。これは近くの白菊にもたくさん来ていました。おやおや,花粉をこんなに付けて。眼にもこれだけ付着しているのは眼の表面の構造によるものでしょう。実に活動的なのがよくわかります。 

虫たちの熱心な吸蜜の姿を見ていると,いつまでも飽きることはありません。 

 


白菊と訪花昆虫(4)

2012-11-29 | 昆虫と花

訪れる昆虫には,小さな種もまた混ざっています。

コシブトハナバチの仲間が訪れました。キオビツヤハナバチかもしれません。体長1cmにも満たない大きさ(小ささ?)です。 毛で覆われた脚が印象に残ります。外の世界を感知することが昆虫にとって最大の関心事。発達した触角,複眼と単眼がその役割を担います。

ハエの仲間が二種。小さめの昆虫は,互いに干渉し合うことなく,共生していきます。口吻を花に入れるという行為は,まさに頭を丸ごと入れることと同じなのです。極小のハエだと,からだごと入り込みます。からだの大きさからすれば,蜜源は相当な量を提供してくれているでしょう。 

ハエの種を同定する作業は,わたしの力の及ぶところではありません。科だけでもいくつもあるのに,その中で特定するのはたいへんなことです。典型的な特徴を持つものなら,だいたい見当は付きますが,上写真のものとなると困難です。

マア,そんな次元で昆虫のいのちと向き合っています。 

 


ツワブキと昆虫(続)

2012-11-29 | 昆虫と花

雨上がりの深夜。強い印象を受けたツワブキの花のことが気になって,見に行きました。何が気になったかといえば,夜間訪れる昆虫がいるはずだからです。これは過去にも取り上げたことがあります。

結果は思ったとおりでした。そこで見たのは,ガとガガンボそれぞれ一種。暗くなっても,ちゃんと訪れていることに驚きを禁じえません。夜行性なので,花の黄が効を奏していることもあり,視覚機能が十分にはたらいているのです。それに触覚で匂いも感知しているでしょう。もっとも,わたしの鼻では匂いを感じることはできませんでした。 

ガの名は今のところ同定できていませんが,ヤガ科の仲間でしょう。頭の突起が目立ちます。拡大写真も併せて載せておきます。 

口吻を伸ばして蜜を吸っているのがよくわかります。ガのすぐ傍にいるガガンボは,どうやらヒメクチナガガガンボのようです。 

別のところにも,同じヤガが来ていました。 

人知れずに訪れる昆虫が,このようにして存在するのです。昼間に活動する昆虫たちにしても,まったく知らない事実です。これらの夜行性の昆虫は,強い日の光を避けます。外敵の少ない時間帯を選んで,暗闇で活動を続けます。見事に棲み分けが成り立っています。

花を見ていくと,クモが一匹いました。糸をからだに付けています。巣の補修をしているのでしょうか。あるいは,獲物を待ち構えているのでしょうか。こうやって,夜にも“食べる” “食べられる”という食物連鎖の世界が展開されているのです。 

 

 


白菊と訪花昆虫(3)

2012-11-28 | 昆虫と花

間もなくしてセスジハリバエが訪れました。体長は15mmほどで,かなり目立つ大きさです。

オレンジ色の腹には,背に黒い帯模様があります。この虫の毛はやたら刺々しく見えます。先に吸蜜している虫がいたら,そそくさと場所を明け渡すのではないでしょうか。翅以外は完全に毛で覆い尽くされています。まるで毛玉がいる感じさえします。

口吻を見ると,一つひとつの花にはちょっと大きいかなと思うぐらいです。それをズバッと入れて,蜜を舐めていきます。 蕊が折れないか,心配になるほどです。

ものの解説によれば,出現頻出期間は春先と晩秋だそうです。キクの花が散るとともに姿を消すのです。今,晩秋を惜しんで一日一日を生きているのでしょう。

こういう昆虫を撮れるひとときには,生き物との出合いとか撮影とか,このタイミングならでは魅力が詰まっています。これを醍醐味・冥利と言い表すのは言い過ぎでしょうか。

 


わかった! あの卵の正体!

2012-11-28 | 昆虫

9月24日付け記事で『ヘクソカズラと昆虫たち(4)』を書き,その中で葉に付いた得体の知れぬ卵について取り上げました。その正体がこの度判明したのです。

この程,身近な昆虫の卵を多種記載したコンパクト本『虫の卵 ハンドブック』(鈴木知之著/文一総合出版刊)に出合いました。これまでした本が手元になかったので,いろんな卵を見ても,それが羽化して成虫に育ったときの姿と一致しませんでした。それで,どうもすっきりしない思いを抱いたままになってばかりでした。

この本はわたしのような素人にも価格からして,ちょうどお手頃です。それで,それをさっそく入手してわかったことがひとつありました。

ぱらぱらめくっていて,わたしが記憶する卵塊とそっくりの卵が出てきたとき,ほんとうにドキッとしました。

名はカメムシ。わたしが見た卵は色がグレーがかっていたので,これそのものではありませんが,近い種です。それがわかっただけで十分。

このときの卵は,その後,孵化しました。しかし,孵化の場面を激写することはできませんでした。幼虫も見ることができませんでした。いつの間にか孵っていて,知らぬ間にどこかに消えていた,というわけです。じっと見ていることもできなかったので,マア止むを得ませんが。

それでも今回,この本と出合ったことに満足しています。著者に感謝。手がかりが多過ぎても調べ尽くすことはわたしにはできません。 このような程々の情報で今は十分。

そして,この情報を元にネット検索をかけてみました。すると,クサギカメムシらしいことがわかってきました。これなら,ありふれた身近なカメムシです。そして,その名のとおり,なんと臭いことか! 

調べた結果わかってきたのですが,この本には,クサギカメムシの黄色っぽい卵塊が紹介されていたのです。写真で見る限り,わたしの見たグレーの印象とは異なります。カメムシは種類が多く卵のかたちに似たものがあるようです。結局いくつかの情報を集約・総合することでクサギカメムシと同定できた次第です。 

 


白菊と訪花昆虫(2)

2012-11-27 | 昆虫と花

訪花昆虫では,ハエやアブの仲間がいちばん目立ちます。そのうち比較的大きなものに目を向けてみましょう。

どうやらオオクロバエのようです。鋭い毛が一際目立ちます。複眼が離れて付いていることから,この個体はメスとわかります。太い口吻を差し入れて,蜜を舐めとります。その姿には,王者の風格が漂っています。

口吻で脚を舐めるしぐさをよく見かけます。 写真の個体は,脚先でなく毛か,口吻を掃除しているみたいに見えます。からだで,花と接する部分には花粉が付いています。オオクロバエは送受粉の貢献者なのです。

キゴシハナアブです。胸の縦縞模様が際立っています。複眼は粉をふりかけたように粒紋様で覆われています。 さらによく見ると,複眼を構成する個眼も見えます。

真正面から見てみましょう。頭は眼でほとんど占められています。

ニクバエの一種でしょうか。灰色地に,胸には黒の縦縞模様が3本,腹には横縞。それに荒々しい毛が体中を覆っています。 

そっと近寄れば,昆虫たちは警戒することなく格好の被写体になってくれます。  

 


キタキチョウ,睡眠中

2012-11-27 | 昆虫

ツワブキで見かけたキチョウだと思うのですが,夕方,ツワブキ脇にあるモミジの葉にとまっていました。「ははーん,ここを一夜の宿と決めたんだな」。そう思って,夜,成り行きを確かめに行きました。やっぱり,です。

細長く垂れ下がった葉に,しがみ付くようにして取り付いていました。

それで,貴重な映像になるだろうと思い,撮影することにしました。 

触覚を翅にはさんで,休眠中です。アングル上,撮影の邪魔になる葉があったので,ハサミで切り落としました。ところが運悪く。その葉がキチョウのからだを直撃! キチョウは地面に落下してしまいました。

ここで,ふしぎなことを発見することになります。もしかすると,当たり前かもしれませんが。落ちたチョウは翅を閉じたまま,じっとしているのです。まるで,寝ているように,死んだかのように。申し訳ないことをしたと思いながら,わたしは指でつまんで元の位置に戻してやろうとしました。それでも,チョウは脚をほんのわずかに動かすだけで,からだ全体はまったく動かないのです。

「これは完全に眠っているのだ!」。そう,わたしは思うことにしました。元に戻したものの,脚に力が入らないので,また落ちてしまいました。いよいよこれは,体内時計がはたらき活動休止中であることを物語っているように思われました。

何度目かでやっと脚を葉に固定してくれ,ホッ。 ヤレヤレです。

寒さもあるでしょうが,睡眠中はからだが十分に休んでいるのです。これは,わたしたち人間を含む昼行性動物と同じ生活リズムです。こんなことがあって,撮影できたのが上の写真なのです。 

さらに印象に残る出来事に出くわしました。この翌日は雨模様だったのですが,夜に見ると,ほとんど移動することなくじっとしていたのです(下写真)。「この時候だからな」と,ついつい思ってしまいました。

 


ツワブキと昆虫

2012-11-26 | 昆虫と花

ツワブキは晩秋を彩る刺激的な色合いをした花を付けます。真赤・真青ということばからは真黄を連想できますし,深緑なら深黄ということばが浮かびます。 誠に黄色を主張しているといった感がします。これだけ強烈な色彩をした花は,今の時節数少ないのではないでしょうか。

このツワブキが,我が家の庭の片隅で今満開です。これがたくさんあり過ぎる光景は「これでもか,これでもか」といった意地を感じさせ,見る者にある種の疲労感を抱かせるように思います。逆に程ほどの場合だと,引き締まった美すら漂います。過ぎたるは及ばざるが如し,の類いでしょうか。実際,たくさん咲く年は自分で花茎を間引くほどなのです。今年は,4,5本の花茎が伸びただけなので,そんな手入れをする必要はありませんでした。

そして,それぞれの先に花を複数付けています。庭に今ある花は,これだけ。

秋晴れの穏やかな昼下がり。目敏い昆虫がそれを見つけないわけはありません。

オオハナアブが一匹。腹のオレンジ色の帯が目立ちます。頭部はお椀型の複眼ですっぽり覆われています。複眼の模様がひときわ目立ちます。その間に3個の単眼が見えます。花の色がからだを照らし出しているようで,からだ全体が何だか黄色っぽく見えます。翅脈の一部が黄色くなっているのが印象的です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

キゴシハナアブが来ました。脚先を広げて,爪でからだを固定して……。薄い翅が太陽光を反射します。複眼には粒の紋が無数に見えます。胸の縦縞の筋もまた,この種を同定する決め手です。毛で覆われたからだには,花粉がどっさり付着しています。ツワブキの作戦にうまくのっかかってくれたようです。

ツマグロキンバエ。黄色の世界に入り込むと,もうからだがすっかり黄色っぽく見えます。背中にも花粉がいっぱい。自分が送受粉に役立っていることを知るや知らずや,餌を貪り舐めていました。花から花に移るのは歩いて。何ものにも邪魔されない静かな小風景が広がります。 

キタキチョウも一頭。口吻をグーンと伸ばして,おいしそうに吸蜜中です。近寄っても逃げませんでした。 

そのうちに舞い上がったかなと思ったら,また元に戻って来て,すぐに蜜を吸い始めました。この味がお気に入りのようです。触覚がピンと伸びて,機能しています。関節の曲がり具合からは,腰の落ち着けようが伝わってきます。実にゆっくりとした動作に見えます。のんびりした風景です。 

昆虫たちは晩秋を満喫しているように思えました。わたしもまた,彼ら彼女らと共に過ぎてゆく秋から,ひとときこころの滋養をいただけたように思います。 

 


白菊と訪花昆虫(1)

2012-11-26 | 昆虫と花

暖かな昼下がり,庭の白菊にたくさんの昆虫が訪れていました。

キクに近づくと,香りが漂ってきました。匂いもたしたものですし,真っ白な花弁とそれに囲まれた黄色の花が,一気に虫たちを誘っています。気配を感じると,虫たちは一斉に羽音を立てて舞い上がります。そうして,しばらくするとまた戻ってきます。

今度はそっと近寄って,撮影を試みます。すると,虫たちは安心してモデルになってくれます。

昆虫の名は,大抵はとっさには浮かんできません。,わたしは,そこまで記憶力のある観察家ではありません。実に大雑把に,経験的に「〇〇だろう」とか「〇〇の仲間だろう」という次元なので,間違いやら誤解やらはいくつもあると思っています。わからなかったら,保留のままにするしかありません。

そんないい加減な立ち位置で,レンズをとおして被写体の動きをとらえる時間をたのしんでいるのです。

では,この日,30分ばかりで見かけた昆虫たちをご紹介しましょう。

ガの幼虫が蕊を貪り食っています。どちらが頭か,尻か,定かではありません。これは送粉者の役目を担っているのでなく,害虫としての迷惑行為を行っていることになります。 からだには花粉がたくさん付いています。多少は送粉に貢献するのでしょうか。

そのすぐ脇に,ツマグロキンバエ(オス)が訪れていました。

 

このハエは数の上からいちばん目立ちます。長い口吻をしっかり使っています。からだに付いた花粉が目立ちます。複眼にも付いています。

ヒラタアブが訪れました。どうやら,ナミホシヒラタアブ(メス)のようです。数は多くありません。アブの眼は頭を包み込むようにして付いています。視覚が生存にとっていかにたいせつかを物語っています。

翅を動かす胸の筋肉も,このからだなりの丈夫さを有していることでしょう。 こういうふうに想像を巡らすのもまた観察のたのしさです。

お馴染みのホソヒラタアブ(オス)もいました。複眼が頭をすっぽり覆うようにして付いています。その先にある触覚もまた,重要なはたらきをしているのです。 

花弁に付いた甘味の成分にまで口吻を向けたのには驚きました。

風のほとんどない時間帯で,心地よい光が花を照らしていたようで,キクには次々と昆虫が飛来してきました。続きは次回に。