2月下旬の話題です。
本格的な春はまだ先ですが,3月を目の前にした雰囲気からいえば,身近な自然をとおして春の兆候がちらっと見えてきてもなんのふしぎもありません。それを敏く感じとる感性を,人生の早い時期を生きている子らの内に呼び覚ましておくのはたいせつなことです。みずみずしい季節感が失われ,自然の息吹を感じる感性が鈍りがちな現代人にとって,いのちが示すわずかな動き・変化を見つめる営みはとても価値があります。
探検活動で春の兆候がどの程度キャッチできるか,できないか,やってみなくちゃわかりません。それができれば,だれかがなにかをキャッチしてなかまに伝達できたら,活動がとても盛り上がるはずです。それを試したくって実施したのが2月のプログラム『春探し!』です。風が強くって,ときどき雨がぱらつく午後のこと。参加者はおとな2人を含めて11人。
わたしが設定した農道コースで発見が期待できるものは,フキノトウ,ツクシ,ウメの花,菜の花,スギの花,カンサイタンポポの花,木々の芽吹きなどです。すべてを子ども任せにしてしまっては発見チャンスを逃す恐れがあります。それで,「この道にはフキが生えていたなあ」「春,ツクシが伸びていたっけ」「第一発見者になったら立派!」などと刺激して,探索心をくすぐることにしました。もちろん,「教えることは禁物!」の大原則を踏まえたうえでの話です。
持ち物はルーペ,スコップ,カッターナイフ。さっそく出発!
まずは,わたしが日頃から注目している森林辺縁部にある草むらへ。

ここでは目新しいものではアオキの芽吹きが見つかりました。花芽でした。同時に細長い赤い実も! 足元ではテントウムシやヨモギの新芽が! 「お餅にしたいなあ」なんていうつぶやきも出ていました。子らは,崖で粘土を見つけて大喜び。「これ,そうでしょう」と確認してもらいたくって,持って来ました。「確かに!」と答えると満足気!

移動中に土手で滑り始めました。敷物もないのに勇敢なものです。枯れ草が残っていて意外と滑れそう。段ボールでもあればもっと楽しめるのですが,あいにくこの日は「春見っけ」に集中せざるを得ません。

大きなウメの木が2本あって,花が咲いていました。子どもの間では,ウメかサクラかでもめました。「そんなことでもめるのかなあ」とふしぎに思ったのですが,それも体験というふるいをとおして感じとるほかありません。幸いおしまいは,ウメでまとまりましたが。

予想外にカンサイタンポポがあちこちに咲いていました。後ほどセイヨウタンポポも見かけるでしょうから,この機会にと思い両者の違いについて伝えておきました。これは例外的な教え。

山際ではスギの花粉を放つ雄花を観察。ここはスギの植林地だった!

今度は農道に移動。ここではナズナの花がどっさり! しばらく行くと,脇にある自動車修理工場の敷地でフキノトウを発見。たくさんあって,「こっちも」「そこも」「まだまだある」という具合で,盛り上がりました。匂いを懸命にかぐ子も!

さらに別の農道に。歩いていると,一人の子が「この間ツクシを見つけたんだよ。頭がちょこっと出てた。そこは春になると,ツクシがいっぱいあるところなんだ」なんていうものですから,みんなにその話をしてもらいました。そのうえで,わたしは「じつは,この道はツクシがいっぱい生えてくる道なんだな。目を凝らして探してごらん。きっと見つかるからね」と話しました。子らはさっそく地面とにらめっこ。

しばらくして,一人の子が見つけました。「見っけ!」。大きな声が響きました。みんなで,生えている様子を確認。「ほんとう!」「ツクシだ!」「よし,おれも見つけるよ!」なんていって,夢中になり始めました。そのうちにどんどん見つかって「もう7つも見っけ!」「また見つかった!」「今度は長いよ」,そんな声が聞こえて来ました。

それに,ホトケノザの花を見つけて蜜を吸ったり,セイヨウタンポポの花を見つけたり。
ここまでで1時間半。もっと続けたいのですが,“ちょこっと”を売り物にしたプログラムなので,これにて終了。欲をいえば,セイヨウカラシナの葉を噛む体験をしてほしかった! 味体験ですね。
この日の体験をとおして子らから出てきたことば遊びをいくつか。