火を起こす体験というのはいろんなところで行われています。わたしの知る範囲でも,考古学関連施設以外にも青少年宿泊施設の体験メニューに加えられているところがあります。その内容が公開されているHPもあります。
そうした取組に見られる傾向として,考古学知識の普及といった側面があるように思われます。要するに,火を起こす体験をしてみる,体験をとおして火について考える機会を提供する,そんな感じです。取り上げるのも大抵は(ほとんど!)マイギリ式です。
わたしの感想は,失礼ながら「今も相変わらずだな」のひとことに尽きます。火起こしの原初的な意味合いや苦労を考える機会にするのなら,当然,より古い時代にさかのぼるべきでしょう。となると,取り上げたい発火法はキリモミ式であり,火打ち式であるということになります。
これに時代考証を加えて,体験者自らが発火の意味や歴史にひととき思いを馳せるように配慮しなくてはなりません。わたしはいつも,①発火技術に対する関心と理解,②からだに沁み込む体験,すなわち体感重視,これら2点を気にしながら仕組む必要があると思ってきました。
以上は前書きです。
わたしたちのミュージアムではこれらの発火法を重点的に取り上げて『土曜ちょこっとサイエンス』のメニューに位置づけ,来館者に体感していただいています。外での活動になるため,冬を除いて行ってきました。
さて,4月になり暖かくなってきたので,このほど再開しました。さっそく印象深い場面がと出合うことができ,滑り出しは上々といったところ。
興味深く見ているだけで,直接体感しようとされない方がありました。「見ているだけで十分わかります」。なかなかしようとされないのです。長い間見ていて,そのうちやっとわたしの誘いに乗ってついつい火打ち式で参加。わたしとしては,「それだけ関心を寄せていらっしゃるんだなあ」と判断したわけです。
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できると,「なるほど,できるもんですねえ」とにこにこされていました。
キリモミ式は二組の挑戦で,どちらも成功しました。
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盛り上がって,周りは人だかり。
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火打ち式はたくさんの方がチャレンジ。
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火起こしは単なる体験遊びではありません。❝ごっこ❞遊びでもありません。やや大きくいえば,❝火づくり体感❞であり,神聖さを秘めた❝学び❞です。そういう意味づけのあるサイエンス企画こそ,わたしたちが試みたいものなのです。