「行ったら撮れる写真は撮るな」。写真教室の主宰者はそう教えるのだそうです。だれでも撮れるような写真は人に見せるべきでないということでしょう。同感です。人が写した写真が気に入って,「自分もそこへ行って同じ風景写真を撮りたい」と思い,実行する人がいます。絵葉書に使われる写真を思い浮かべるとよくわかります。それとそっくりな写真を撮りたいというようなものです。しかし,平凡さの典型例だとわたしは感じています。平凡さは上達にはマイナスにはたらきます。それより自分のカラーを見つめることが大事だと思うのです。この話,自分で写り映えをたのしむ限りはまったく当てはまりません。
撮影時間帯を考えて撮る,特異な状況下で撮る,それだって自分色の表出に大いに関係します。紅葉・黄葉の風景写真も同じです。
ここは市内にある古刹です。ここでよく知られた構図は参道の中央から撮るもの。その辺りにアマチュアカメラマンがかたまった日がよくあります。その中に入ろうとは思いません。白壁が毎年の撮影ポイントの一つになっています。この日は風がかなりあって,葉が揺れました。葉のシルエットが主役です。色づいた葉が少ないのが惜しいといえば惜しい。
露出を変えながら試し撮り。フラッシュが強すぎ! これも勉強のうちです。
シルエットを大きく写し込みました。葉の輪郭がぼんやりしているのは葉が揺れているからです。
白壁の上の屋根に紅葉が一枚ありました。
数枚あるところも。
葉が落ちそうになっています。参道を歩く人をかすかに入れました。「小さなものを大きく,大きなものを小さく」。これはわたしが師匠と感じている方の教えです。
写真の素人なのになんだか偉そうな書き方をしたような。「なんだ,これが自分色なのか」と問われれば,ドキッとします。それでも自分ならではにこだわり,見え方や表し方を気にしていきたいと思っています。