つい最近の話題です。現職時代に使ったもの,作ったもので不要になったものを整理・処分していたら,わたしの“宝物”が出てきました。それは,本シリーズに関係する貴重な資料です。なにかといえば,スライドです。
わたしは,当時,スライドで記録を残し,それらを授業で活用することをたのしんでいました。もちろん,スライド映写機も購入して。高性能・高価格のものではなく,じつに簡便な機器ではありましたが,重宝に使っていました。当時の道具としてはなかなかのものだったと思います。
さて,そのスライドは,わたしがすっかり忘れていたものでした。しかし,画像は当時の撮影場面を鮮やかに蘇らせてくれる一コマ一コマだったのです。撮影後40年も経ているので,カビが生え,スゴイことになっていますが,なんとか見られます。
画像の向こう側からライトを当て,コンデジで接写したのが,これから番外編でご紹介するものです。色の変化があり,さらにはカビや埃で汚れ,リバーサルフィルムの劣化等もあって,写りはよくありません。この分を差し引いて,ご覧ください。
まず一つめはジャガイモです。画像を処理したので,こんな色になりました。ジャガイモが地上部分に“生って”います。これは葉が付いていた箇所から出た腋芽が伸びて,その先に養分が貯えられイモ(地上塊茎)となったものです。腋芽が定位置で肥えたものもあります。これを見ると,イモはまさに茎の一部だと理解できます。
おもしろいイモの付き方だったので,記録用にと思って撮っておいたのです。

植物(厳密にいえば維管束植物)のからだは,地上の茎・葉を一セットにした“連続体(シュート)”と,地中の根(ルート)から構成されています。上写真の塊茎(イモ)は茎が太ったもので,その塊茎には目が複数準備されています。この塊茎を植えると,先端(頂部)からは頂芽が何本か萌芽します。これは地中のイモと同様です。併せて,塊茎の周りからは側芽がたくさん出てきます。
これら頂芽・側芽は枝に相当する器官であって,茎を構成している要素です。つまり,塊茎は極端に縮まった茎と見なせるのです。
ややこしいことを書きました。先に“連続体” と表現しましたが,要するに地上部では茎(枝)と葉が相互につながり合って成長している,ということです。
なお,こうした状態でイモができた理由についてすこしだけ。はじめに,これはあくまで予想だという点をお断りしておきたいと思います。本来なら地中のストロンの先が膨らんで塊茎が形成されるのですが,ストロンが成長中になんらかの原因で切れたか,ストロンがうまくつくられなかったために,地上にある腋芽に養分が回されたのではないでしょうか。
よく似た例で,茎を切って挿し木をする実験があります。結果なのですが,あらあらふしぎ,腋芽が膨らみ始めます。その現象を連想させます。
というわけで,この写真はジャガイモの,生物としての実体を教えてくれる貴重な材料といえます。