『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  198

2010-04-26 19:17:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは気を引き締めた。
 アエネアスを統領と定め、トロイの民を引き連れて、建国を成し遂げる。たとえ、今の我々は異国の地に民族として植すべき地を求めている集団である。そのことを意識せずにはいられなかった。
 我々は、土を知り、大地に根ざし、エネルギーをまとめあげ、建国という事業を、原点から、一歩一歩、確実に、そして、鮮やかに組み立てていく、その第一歩が目の前にあるのだ。彼は気を引き締めて次の打ち合わせ事項に移った。
 『諸君たちが聞いているように、砦を建設する地点を決め、収穫の種をおろすべき土地のことを、今日を含めた三日で決めたいと思っている。今日、この打ち合わせのあと、建設を予定している土地を皆で見に行く、また、その予定地の背後には、耕作に適した肥沃な原野も広がっている。土地選定の責任者として、選んだその土地を見ていただきたい』
 アエネアスも、イリオネスも、パリヌルスも、土こそ全ての始まりであるという感覚を持っていた。大地こそが食を生み、民を養う。食が足りて、礼と形をとりてこそ、生きていく社会に秩序をもたらすと思っていた。