『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  308

2014-07-03 07:35:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか、お前の舌も味になかなか鋭いな。そのうえ、世情感覚も、いい感覚をしている、未来を見通すように物言う。感心する』
 二人の話は弾んだ。時を経ずして船は浜に着いた。
 二人の話題は変わって続く。三日後に出立するイリオネスが率いる調査隊の件に及んだ。宿舎に戻る道すがら二人は話し合った。
 『イリオネス、クリテスから聞いたのだが、お前が行こうとしているクノッソスだが、この地からかなりの道のりだと言っている。そのあたりの事について充分調べたのか?』
 『え~え、一応聞き取りました。詳しくは判りませんが、自分なりに調べました。不明の地に行くわけです、明日、調査隊を編成して、打ち合わせる予定にしています』
 『そうか、道中の事くれぐれも気を付けていってきてくれ。お前が担っている要務は、我々にとって、このうえなく大切なものだ。それによって我々の未来が構築されていく。頼むぞ』
 『判りました。道中の安全については、充分に配慮怠りなく行ってきます』
 二人はアヱネアスの宿舎の前で別れた。
 イリオネスは、調査隊の編成、旅程、調査の要綱について検討に入った。誰をもまじえず、一人で思考検討した。地図のない時代の耳にする地理的事情、東地区の政情、人情、住民の生活事情、産業事情等に関しても綿密に考えた。そして、主観的感情をまじえることなく、客観的にとらえた事実を正確に伝える心情を確認した。
 メンバーは決まっている。アレテス、クリテス、ピッタスにテトスの4名である。旅装は、漁師風を装うことにした。目指すクノッソスへは、海路で行くと決めた。帰路も海路と決めた。これで日程も決めた。あとは旅行中に発生する不慮の事件にどう対処するかを思案した。今回の調査行に関する姿勢は決まった。残る用件は、留守中の事を打ち合わせておかなければならない。彼は、パリヌルスら三人を呼び寄せた。アヱネアスにも打ち合わせの場に臨席してもらうように手配した。夕食を終えたパリヌルスら三人はイリオネスの許に集まった。
 『おう、諸君、ご苦労。打ち合わせは、統領の宿舎でやることにしている。そちらへ行こう』
 彼らは連れ立って歩を向けた。
 宿舎の前では、アヱネアスが思案顔で行きつ戻りつしていた。