『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  318

2014-07-17 07:17:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、ヨッシャ!ヨッシャ!上々の出来だ』
 ドックスは満足の笑みを浮かべた。作業員の一人が彼の許へと駆けてくる。
 『棟梁っ!帆が出来あがりました』
 『おっ!そうか、行こう』
 二人は帆のところへ向かった。ドックスは厳しい目で仕上がりを確かめた。
 『横桁を帆柱に結び付けて立ててみろ!』
 『はい、判りました』
 作業に携わっている者たち総がかりで帆柱を立てた。それを見るドックスとパリヌルス。二人は目を合わせて頷き合った。
 『おう、ドックス、いい出来だ!グッド!』パリヌルスが言う。
 『では、船体に帆柱を立てます』
 ドックスは青空を背にして立つ帆柱を仰ぎ見た。どう説明していいかわからない感動が胸中を通過した。
 『隊長、もうこの時間です。あと小一時間、船を海上に浮かべて、舵の取り付けを行って完了です』
 『おう、判った。ドックス、帆柱の先に風見の吹流しの布きれを取り付けるのを忘れるな』
 『判りました』
 作業は仕上げに向かって進んでいる。彼はじい~っとその風景を見つめた。彼の右手には酒の入った壺が握られていた。
 彼ははっとした。
 『忘れていた。これはいかん!操舵担当を決めなければ、、、』
 彼は、手にしていた酒壺をドックスに託して、リナウスのいる広場へ走った。
 『お~い、リナウス!』と大声をあげてリナウスを手で招きよせた。
 『リナウス、頼みだ。小船の操舵を任せられる者、調査隊に同行だ。一人を選んで、俺のところへよこしてくれ。俺は浜にいる。急いでくれ、大至急だ』
 『判りました』
 パリヌルスは浜に戻った。
 『あ~、隊長、いいところへ、タールの乾き具合を見てください。私はいいと思うのですが、、、』
 彼は、タールの乾燥状態を二人で確かめた。
 『おう、これで良しとしよう』
 二人は、帆柱が立ちあがった小船をしげしげと見つめた。パリヌルスの胸に去来した感動は久々の感動であった。
 『いいもんだな、ドックス。製作を思い立った工作物が出来上がる、そうして目にする。この感動は格別なものなのだ』
 彼は『パリヌルス隊長!』と呼ぶ声を耳にした。振り返る、そこにはリナウスと選ばれた操舵の者の二人が立っていた。
 『おう、リナウス、ご苦労!』
 『隊長、ホーカスです。適任だと思います』
 『おう、判った。リナウス、彼に用務について説明したか?』
 『はい、隊長が言われたのみを伝えてあります』
 『判った、ところで、ホーカスの剣の腕前は?』
 『中の上といったところです』
 『判った。いいだろう』