『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  321

2014-07-22 08:01:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスは、彼ら一同を見まわして声をかけた。
 『ヨッシャ!者ども昼めしとするか』
 昼めしにはわずかではあったが心づくしの酒も用意されていた。イリオネスの気配りであった。
 オキテスが小走りに駆けてくる。
 『お~い!パリヌルス。小船ができたのだな、洋上試走の姿を見ることができなかった。無念といったところだ。あッ!軍団長、こちらにおいででしたか』と言いながら、さざ波が船体を打つ、帆柱を立てた小船を見つめた。
 彼は声をあげた。
 『帆柱の高さがいい、バランスのいい船に仕上がっている。これなら、小さな用事に使うのに最適といったところだ。おめでとう。完成に贈る言葉だ。ところでパリヌルス、新しい鋸を買ってきたそうだな。あとからでいい見せてくれ』
 『ドックスの言い分だが使い勝手が、なかなかいいということだ』
 『いま、お前と俺とが計画している、方角時板、風風感知器の製作に使えそうか?』
 『それを考えて、道具選びをしたわけではない。それはそれでまた考えてキドニアへ買いに行こう。集散所には、結構、道具がそろっている。最適を選ぼう。金の取れるモノづくりをせねばならんからな』
 『おう、判った。ヒマを見て二人で出かけるか』
 『おう、そうしよう。ところで、用材調達隊は今日帰ってくるのだな』
 『そうだ。用材、モノづくりの行程、仕上がりを見極めて、道具選びをやろう』
 『判った。そうする』
 『あのなあ、オキテス。話がそれるが、いいか』
 『おう、何だ。俺はかまわん』
 『あの帆柱を立てるとき、ふと、考えた。帆柱をもうちょっと高くして、横桁をなくする、そして、三角の帆をつける。かっこのいい船ができるとな』
 『俺は、それにはうなずけないな。かっこをつけて三角帆で船が走るわけはないと思っている』
 『大型の船には不向きかもしれんが、軽量化と簡便になる。これは、俺の想いであって実行ではない。そういうことだ』
 時代にない突飛な考えが未来を変えていく、その様な機運が起きる会話であった。二人は、とりとめもない会話を交わした。
 『今日は、キドニアからの帰り船が遅くなるのではないかと思っている』
 『まあ~、そう急くな。日暮れまでには間がある』
 『そうだな、待つとするか』