『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  311

2014-07-08 06:02:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は廃船の検分を終えた。検分したすべての部材を持ち帰り、船の改造に使えるかどうかを確かめたうえで使用するとした。
 帆柱は部材として採用することは決めていた。クレタ島には、船の帆柱に使用することのできる杉の良材が乏しいのである。クレタで建造される船舶に使われている杉の木は、レバノンから輸入した、レバノン杉が使われていたのである。パリヌルスはそれを知っていた。彼は帆柱、舵部分に限らず、船に使っている板材をも持ち帰ることを決めた。
 彼は歩きながら船の改造に関する段取りを決めた。
 朝めしを終えたアレテスは、島のなぎさでパリヌルスの来るのを待っていた。
 『おう、アレテス、待ったか』
 『いえ、そんなに』と答えて、パリヌルスと目を合わせた。
 『船の方はいかがでしたか?』
 『予定していた部材は充分にいける、使える。あとから取りに来る』
 『そうですか、判りました。その旨、ギョリダに伝えてきます。少々お待ちください』
 『おう、ありがとう』
 用件を終えて二人は島を後にした。二人のささやかな気配り、感謝のやり取り、このような気使いが意志の疎通を促し、団結と集団運営のモチベーションをより良いものにしていた。
 パリヌルスの胸中では今日、明日の段取りができていた。
 彼は、集散所の売り場を見て歩いた時のことを思い起こしていた。工具などを取り扱っている売り場の事である。そこに並べてあった鋸や鉋、釘等の事を思い浮かべた。パリヌルスらの使用している鋸に比べて、クレタ人らが使う鋸が進化していることに気づいていた。彼は、段取りと相まって、それら工具、消耗品を準備することを心に決めた。
 浜に着いた二人は、連れだってイリオネスの宿舎に向かった。イリオネスは、まだ宿舎の中らしい、パリヌルスは、戸口に立って呼びかけた。
 『おう、おはよう。パリッ!お前ら速いじゃないか、何か急ぐ用事でもあるのか?』 
 『おはようございます。小島に用件がありましたので出かけてきました。アレテスを同道しました。私の用件は別です』
 『その別の用件とは何だ?聞こう』
 彼は、イリオネスに工具の事について語った。船の改造にあたって、船の状態を確かめること、加えて、改造作業に使用する工具について話した。
 『ーーー。というわけで、キドニアまで出かけてきます』
 『よし!判った』と言って、イリオネスは宿舎の中へ入っていった。