『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  314

2014-07-11 07:17:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜に降り立ったパリヌルスは、浜にいる者たち全員を招集した。彼は、船の改造に関する指示を発した。
 『以上だ。事はとにかく急いでいる、心してくれ。作業に関する責任者はドックスである。彼の指示に従って事に当たってくれ!作業の遅滞は許さん!念を押す、心して事に当たるのだ、いいな!』
 彼は語気鋭く言い渡した。
 『おう、ドックス。帆柱の高さを決めよう。また、舵についても検討する』
 『隊長、舟艇の帆柱の高さが目安です』
 『おまえの言うとおりだ』
 二人は船のサイドに立った。
 『ドックス、帆柱をもって、その位置に立ってみてくれ』
 パリヌルスは、船から離れて帆柱を眺めた。
 『よし、決めた。帆柱をもって来てくれ』
 彼は、帆柱の高さの見当をつけた箇所に目印となる縄を結びつけた。
 『ドックス、もう一度、帆柱をもって先ほどの箇所に立ってみてくれ』
 彼は、帆柱の立った様子を眺めて、帆を張った小船の全体像をイメージした。
 『ドックス、帆柱自体に傷んだところがあるか?』
 『いえ、それはありません。はい、大丈夫、使えます』
 『よし!帆柱の高さは、見当をつけた縄部分の高さでいってくれ』
 『判りました』
 『よし、次は舵の件だ。舵を見せてくれ』
 二人は舵を見た。
 『ややっ!これは、でっかいな!これは、でかすぎる』
 パリヌルスは、思案して、決断を下した。
 『このサイズにして、少し軽くなるように細工してくれないか。舵の操作棒の長さは、海に浮かべた上で決める』
 『判りました』
 『では早速、作業に取り掛かってくれ』
 パリヌルスは、帆布の事にあたった。彼は、各船の帆布の予備を格納している6番船に歩を向けた。軍船に使っていた傷みのない一枚の帆を選んだ。持ち上げてみる、『ううっ!重いっ!』
 彼は船上にいる一人の者を呼んだ。
 『おう、ちょっと力を貸せ』『はい』その者の力を借りてパリヌルスは、船から帆布を下ろした。
 『隊長、私が持ちます。このようにすれば、持ち運びが楽になります』
 彼は、帆布を細長く丸めるように畳んで、その一端を肩に担いだ。
 『隊長は、帆布のうしろの先端を肩に担いでください。これでいい、行きましょう』
 二人は、帆布を船のところへ運んだ。