『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  859

2016-09-01 09:51:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスが北に目をやる、つれて、パリヌルスも北に目をやる、そぞろに歩みながら二人は北の海の彼方を見つめ話をつづけた。
 『なっ!パリッ!』
 アヱネアスの呼びかけに、はっとするパリヌルス、アヱネアスが指で北を射し示す。
 『この海の彼方に、俺たちが過ごしたトラキアの地がある。東の海の彼方には、トロイと地続きの大陸の地がある。今、背にしているクレタの島の南の海の向こうには、何がある?茫洋として果てしない西の海の彼方には、何がある?パリヌルス、お前は、何があると想う?』
 『今の私には、とんと想像がつきませんが、何かがあると考えられます』
 『そうか、行ってみなければ解らないことだな。お前、未知なるものを見てみたいと想わないか?』
 『想いますが、いまこの地にあって目の前のことしか考えていない私にとって、そのように言われても戸惑います』
 『そうか、しかしだ、海を隔てて彼方のことを考える日が来るやもしれんぞ』
 『その時はその時です、統領から指示を受ければ、やるのが私らの立場と考えています』
 『そうか、よしっ!テカリオンが近いうちに来る、この浜に姿を見せる。お前、何かを耳にしていないか?』
 『それについては、テカリオンから聞いています。こちらへ来るのは、新艇が出来上がるころには、来るといっていました。もう、そろそろ来るであろうとは考えています』
 『ほう、やっぱりな。テカリオンは、近いうちに来る、間違いなく来る。虫の知らせだ、天から通信だ』
 アヱネアスはパリヌルスの目をじい~っと見つめた。
 『ほう、やっぱりな!テカリオンは近いうちに来る!パリッ!俺からの命令だ、この西の海の彼方に何があるか、情報を集めてくれ。これは、誰にも話はするな、密命だ。誰にも知られたくない、お前だけに託す秘密事項だ。解ったな、いいな』
 『解りました』
 『それから、今朝、オキテスと話たのだが、新艇第一号納入日が四日後だ。注文主を腰を抜かすほど喜ばせたい、オキテスが計画をつくる、今日、夕時に軍団長、オロンテスも呼んで計画の検討、準備を整えよう。オキテスは、ヘルメスで曳航していくといっていた』
 『解りました。新艇納入第一号です。この上なくめでたい!感無量です』
 『では、では、パリッ!テカリオンが来る、確実に来る。情報の収集、よろしく頼む』
 この時代の長距離通信は、テレパシー通信である。統領のところへテカリオンのテレパシーが、虫の知らせが届いていたとしか考えられなかった。また、統領の勘が冴えていたとも考えられた。
 オロンテスらが返ってくる、ギアスがテレパシー情報を確実なものにしてもたらした。
 『パリヌルス隊長、明日、夕刻、テカリオンが来るそうです』
 『ええっ!』
 パリヌルスが絶句した。