『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  861

2016-09-05 04:37:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、行こう!軍団長、パリッ!宿舎へだ』
 三人はアヱネアスの宿舎へと歩いていく。
 『二人とも来い!汗を流して、さっぱりしよう』と言って、ささやかな流れの小川へと歩を進める、彼らは流れる水を使って汗を流した。
 『軍団長、今日、何を考えていた?お前の今日の打ち込みは鋭かったな。俺は、受けにまわるのが精いっぱいといったところであった』
 『そういえばそうでしたね。統領の今日は打ち込みが少なく感じました』
 『しかしだ、剣を手にして、真剣勝負もそうだが、練で撃ち合う時でも、闘うときには心に鬼を住まわせて、剣の薄い刃に心機と力の全てを集中させる、渾身で打ち込む、これに尽きる。死地にこそ生ありだ』
 三人が宿舎に戻ってくる、忙中の閑、くつろぎの一時といったところである、彼らはぶどう酒で口を湿らせる、アヱネアスが話し始めた。
 『イリオネス、パリヌルスが伝えてきたことは、明日、夕刻にテカリオンが来るという知らせだ。彼が新艇を何艇買うというか、俺は興味津々なのだ。それと彼との話し合いだ。俺たちが建造した新艇が新規性をもって進歩的か否かそれを気にしている。テカリオンはこういったことに確かな見識を持っている』
 『そう、統領の言われる通りです。彼の目にはそういったことに関する確かさがあります。私も感心しています』
 『ほう、そうか。イリオネスもそのように感じていたか、俺はこれからを見るに、新しい機能、そして、新しいカッコ良さ、これを追求するようになると想う。君らはどのように考えている?』
 『言われる通りだと想います。同感です』
 『私もまったく同感です』
 そのように答えて、パリヌルスは、浜での作業が終業の時になるとい言って場を去った。アヱネアスとイリオネスは新艇の売りを話題にして、浮かびあがってくるプロブレムについて語り合った。アヱネアスは浜辺において思い浮かべた構想について、物語風に話した。
 『統領もあれですね、私たちが想う以上に戦いが好きなのですね』
 『おう、それは言えるかな。しかしだ、俺の好みとしてはだな、剣を振り回して闘う戦いより、軍船と軍船が国家を背にして戦う。戦いの構図が好きだな。一艘の軍船が国家を認識して雌雄を決する。そのような戦いのカタチが好きだ』
 静かな話し合う時を過ごしている、しばし言葉のない時間が過ぎていく、風が渡る、葉擦れが耳に届く、夏の夕暮れのひと時を二人で語り合った。