『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 869

　『それはそうだ。残虐、皆殺しを何とも思っていない集団だ。そうでなければ自分らが生きていけないと思っている輩だ。スダヌス浜頭、そこが思案のしどころです。浜頭、どうされる？いったところです』
　『オキテス殿、言われる通り思案のしどころです。よく考えます。私どもにとって、統領と軍団長、そして、皆さんからの身に余る申し出であると考えています。とにかく考えます。私以外の浜頭にも相談します。明後日、返事を申し上げるということでお願いいたします』
　スダヌスは、恐縮至極の体でオキテスに返事をした。
　『そうだわな。私らとしては、スダヌス浜頭の守備護衛であるが、あなたにとっては、そうはいかない立場にあるわな。そこが問題といったところだな。判った。よく判った』
　オキテスはここで話をきって、話を継いだ。
　『昼めしを中断して話し込んだな。たいらげてしまおう。それにしてもうまかった。アレテスが担当している漁場でも、こまかい子魚の処理をどうしようかと頭をひねっている。これを教えてやるかな』
　二人は、副菜の全てをうまいうまいでたいらげた。
　『浜頭、話はこれだけだ』
　『オキテス殿、我々の身に余るありがたい話をありがとう。深く、そして、厚く礼を言う。では明後日にということで』
　『判った。ここ三、四日は、その気配はなさそうだとみていると話しておく』
　二人ははなれ小屋を引きあげた。

　三人の側近を引き連れて、ヘルメス艇に乗り込み、キドニアの沖の海に出かけたテカリオンは、ヘルメス艇のチエックに余念がない。
　『ギアス艇長、この追い風はいい風と言える、俺に操舵をさせてくれないか』
　『はい、解りました』
　ギアスは操舵をテカリオンと代わる。
　テカリオンは操舵をしながら、航跡を注意深くチエックする、申し分がない。帆張り状態と走りは、吹いている風具合にしてはいい走りをしている。舵の切れ具合もまずまずと評価した。
　『おう、ギアス艇長、この艇を理解した。操舵を代わる。充分に艇を見せてもらった、ありがとう。船だまりに戻ろう』
　『はいっ！方向転換をします』
　ヘルメスは、船だまりに戻ってきた。
　『ギアス艇長、ありがとう。心ゆくまで試乗させてもらった。君に礼を言う。まずは、グッドと言える、申し分ない。乗り組んでいる者たちも腹が減ったことだろうと思う。昼めしの準備ができているはずだ。皆で昼めしの場を一緒に囲む。いいな』
　岸壁の上では昼めしの場が整っている。テカリオンの船の乗組員たちとヘルメスの乗組員たちが車座になって昼めしの場を囲んだ。