ヘルメス艇の試乗、そして、昼めしを終えたテカリオンは、自船の船室にこもって、パリヌルスが描き、書いたと思われる新艇の仕様書きと姿形図に目を通しながら、集散所のハニタスと交わした新艇情報、あちこちで耳にした新艇の噂話を参考にして新艇の実態の把握に努めた。『それにしても、あいつらなかなかやりおるわい』と心中に想いながら、集散所が提示した新艇の価格の妥当性を検討した。
テカリオンが交易活動をする市場領域における価格の地域格差を勘案して取得する利益を考え、販売価格を検討して仕入れ価格を算出した。そのうえで集散所が提示した価格が順当であり、妥当なのかを評価して、購入する新艇の艇数と価格交渉の進め方を思案した。
集散所の提示価格とテカリオンの想定価格の差が折り合いがつけられるであろうと思われる範囲であると考えられた。
『集散所とちょっと打ち合わせをしておこうか』と彼は腰をあげた。
テカリオンは集散所との打ち合わせを終えて船だまりに帰ってくる、ギアスに声をかける、自船に乗る、ニューキドニアの浜へと船だまりをあとにした。海上には、この時期にして、この頃合いには、めずらしく東から、いい風が吹いていた。
オキテスがスダヌスと話し合いを終えてパン売り場に戻ってくる、パンは売りつくされていた。
『おおっ!セレストスどうした?まだこんな頃合いだというのに、もう、パンを売りつくしたのか』
『はい、今日はですね、テカリオン殿が見えて、パンの買い占めですわ。あと半刻くらい、ここにいて今日の業務終了です。今から明日のパンの予約が入るのです。売るものがなくなったから終わりではないのです』
『ほう、そういうものか。判った。俺は先に船だまりに行く』
『判りました。待っていてください』
オキテスは、パン売り場をあとにした。
船だまりに来たオキテスは、ギアスに声をかける 。
『おう、ギアス、テカリオンの船が見えないが?』
『俺らが浜へ行かんとな。と言われて出航していきました』
『テカリオンを乗せての試乗はどうであった?』
『試乗について、テカリオン殿は真剣観察でした』
『ほう、そうかそれは重畳!あと半刻くらいで、セレストスが来る。パンは全量売りつくされていた』
『そうですか、それはよかったですね。オキテス隊長、今日の帰りは順風です』
二人は微笑みを交わした。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_yaho.gif)
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