オキテスは、野営守備のカイクス隊長と打ち合わせて、夜半過ぎからまどろんだ。
今日のやるべきが頭の中にある、気が逸っている、満足な眠りはとれていない、彼は、この季節の黎明の時が大の好みである、寝てはいられなかった。
明けきらぬ時の間に朝行事を済ませ、ヘルメスを待つ、パン事業のスタッフ連の来るのを待ちかねた。ヘルメスが荷積みの地点に来る、それを待つパン事業のスタッフ連、荷積みが終わる、オキテスが全員の乗船を確かめる、ギアスに出航の指示をする、凪いでいる海を泡立てる櫂、海面を割るヘルメス、航跡を引いてキドニアへと向かった。
キドニアの船だまりに着く、テカリオンの船が停泊している、
ヘルメスの到着に目をとめて、駆けつけるテカリオン。
『あ~っ!オキテス殿、おはようございます。おやおや、今日はオロンテス殿の顔が見えませんな』
『おう、テカリオン殿、おはようございます。いつ、キドニアに到着された?』
『昨日の午後です。新艇の噂を耳にしています。イラクリオンでも話題になっています。とりあえず用件を、荷下ろしが済みましたら、ヘルメス艇に乗せてもらってもよろしいですかな?』
『どうぞどうぞ、艇長のギアスに言っておきます、存分に乗ってください。私は集散所にての用たしがあります。一緒できないのが残念です』
『いいですとも、わがままを言って乗せてもらいます。オキテス殿、お昼はどうされますか?一緒できるとうれしいのですが』
『今日の昼は、スダヌス浜頭と一緒する約束があります。お構いなく』
『そうですか、それは残念です。ギアス艇長、ヘルメス艇乗り組みの皆さんと昼を一緒しても構いませんかな?』
『それはそれは、彼ら喜びます。私も一緒したいのですが、ままなりません。ちょっと急いでいますので失礼します』
『このようにして、朝イチにお会いできて何よりと思っています。お仕事の方を、どうぞ』
二人の話は終わった。テカリオンは自船に戻る、オキテスは、パン事業のスタッフ連と集散所に向かった。
集散所に着いたオキテスは、スダヌスの魚売り場に歩を運んだ。
『おう、オキテス殿、今日は早いね。どうされた?』
『新艇第一号の納入が明後日に迫った関係で諸事の打ち合わせに来たようなわけです。オロンテスから聞いてもらっている子羊の件よろしく頼みます。明後日、朝イチに受け取りに来ます』
『おう、了解!』
スダヌスの返事は元気があふれていた。
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