『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  860

2016-09-02 04:44:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ギアス、オロンテス隊長は、このことを知っているのか?』
 『いえ、それは定かではありません。テカリオン殿に船だまりで会ったのは私です』
 『船だまりには、テカリオンの船が停泊しているわけだ。オロンテスは気がつくだろう。解った、ありがとう』
 パリヌルスは、いま、何をすべきかと考えた。とりあえず統領にこのことを伝えるべきと心に決めた。彼は新艇建造の場へと走った。
 建造の場には統領の姿が見えない。すかさずドックスに声をかける。
 『おう、ドックス、統領は?』
 『統領は、宿舎の方へ帰られました』
 『おっ!そうか』
 パリヌルスは、いまたどってきた浜をとって返し、統領の宿舎へと急ぎ足で向かう。
 彼は統領の宿舎の戸口前に立って呼びかけた。
 『統領!おいでですか?』
 答えがない、どこだろうかと思案する、軍団長のところかなとイリオネスの宿舎をたずねるが、ここにも誰もいない。このあとたずねるところは、撃剣訓練の場のみである。彼は、撃剣訓練の場へ急ぎ足を運んだ。
 剣を打ち合う音、発する気合の声が聞こえる。パリヌルスは安堵した。
 『あっ!パリヌルス隊長、息せきって何事です?』
 『おう、リナウス、統領が見えているか?』
 『軍団長と撃剣の最中です』
 『そうか、では、待つ』
 『隊長、急用でしたら、声をかけますが』
 うなずくパリヌルス。リナウスが両人に歩み寄る、声をかける。イリオネスがリナウスの声を聞いてふりむいた。
 『なにっ!パリヌルス隊長が来ている?』
 『統領、パリヌルスが来ているそうです』
 打ち込みの手をとめる、パリヌルスの方に目線を移す。
 『おう、パリッ!どうした?』
 『統領、待っていました朗報が届きました。ギアスが朗報をもって帰ってきました。テカリオンが明日夕刻に来ます』
 『おっ!そうか。俺の通信手段が通じたか、重畳!』
 イリオネスが首をかしげて聞いている。
 『統領、俺の通信手段ってなんです?』
 『俺の念力だよ。俺が思念すれば、想いがおのずから通じるのだ』
 『パリヌルス、ご苦労であった。俺を探し当てるのに苦労したか?』
 『いえ!最初に建造の場をたずねました。それだけです』
 二人は微笑みを交わした。