『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 903

　イリオネスは、オキテス、オロンテスと目を合わせる、まず、オキテスに話しかける。
　『オキテス、新艇引き渡しの件だが、作業は順調にいっているか？』
　『はい、作業は順調に進んでいます。明日午前中に完了の予定で進んでいます。テカリオンからの特注についても、明日、夕刻までに終わります。明後日、朝から進水作業となります』
　『オロンテス、パン及び堅パンの納品の件だが、作業の進捗、段取り等うまくいっているか？』
　『はい、うまくいっています。明後日、午前中に浜への荷運びを完了いたします』
　『よしっ！いいだろう、何かある場合は相談してくれ。俺は建造の場に常時いる。一同、手落ちなく作業を進めてくれ』
　『おう、腹が減ったな、パンを食べようではないか』
　各自にパンとぶどう酒がくばられる、待ちかねていたようにパンを食べ始めた。
　アヱネアスが一同に話しかける。
　『パンを食べながら話す。先日のことだが、君らに話していた、スダヌスの浜の警備に兵を派遣する件についてだ。スダヌスと話し合ったが、危険度が小さいということで兵を派遣しない、危険を察知したときには改めて派遣要請をするということになった。一同了承しておいてくれ。俺からの一同に対する報告である』
　一同と目を合わせるアヱネアス。
　『ところで、今日の会議のことだが、パリヌルスが、軍団長に会議開催を要請したそうだが、それには俺の指示が絡んでいる、それを解っておいてくれ。今日の会議は、その件に関する打ち合わせである。軍団長に相談したところ今日は打ち合わせにとどめて、その案件に関しての決定は明後日の多忙を終えて、改めて会議を開催して決定するそうである。軍団長、それでいいのだな』
　『それでいいのです』
　『この件に関する案件説明は、パリヌルスがする』
　『解りました』
　『パリヌルス、案件説明を始めてくれ』
　パリヌルスは姿勢を正す、一同に目線を送り、話し始めた。
　『先日、テカリオンが来港した折にひざ詰めで話し合った。その時、テカリオンから、次回訪問時までに特殊な船を二艇、建造してくれと要請を受けた。その特殊な船とはどんな船なのかと聞いた。今、キクラデス諸島では、海賊に手を焼いているようである。小島の領主が海賊の一掃に乗り出そうとしている。そのようなわけで小回りの効く、ヘルメス艇くらいの大きさの戦闘艇を造ってほしいというのである』
　オキテスが口を開く、
　『ほう、なかなか面白い話ではないか、パリヌルス。それでーーー』