『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  919

2016-11-24 09:49:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、戻ってきたパリヌルスと顔を合わせた。
 『おう、パリヌルス、早かったな』
 『おう、選任については責任担当に任せてきた。俺があれこれ言う必要はない。お前、昼めしは?』
 『一緒にどうだ』
 『おう、いいね。ドックスも呼んで、三人で昼をしよう』
 『おう、それがいい。戦闘艇の件はあいつの耳には入っていないはずだ。これを聞いたらドックスはたまげるぜ』 三人は建造の場の一隅で昼を共にする、戦闘艇のことを話題にする、建造については触れることなく話題として話し合った。
 『ところで、ドックス、お前に戦闘艇を造れと言ったら、どんな戦闘艇を造る?思いついたところを話してみろ』
 『オキテス隊長、そのような小型の戦闘艇を必要としているのですかね。世の中にはいろいろな需要があるのですな』
 『そうだな、クレタは周りの海が広い、キクラデス辺りになると島の存在が込み合っているといっていい。そういったところでは、船の場合は、クレタとは異なった需要が発生する。そんな需要にこたえるには、お前だったらどんな戦闘艇を造るかだ。思いついたところを話してみろ』
 ドックスは、『そうですなーーー』と言って、思案表情を浮かべ首を傾げた。
 『ドックス、人間という生き物はだな。食べ物に噛みついて口を動かす、咀嚼する。その調子がいろいろのことを思い起こさせる。その中に『お~お、これは、いい思いつきだ』と言える発想もあれば『まあ~、そんなものか』と思う発想もある。口を動かす、物を噛む、腹に収める。この律調がとんでもない、いい発想を生むこともあるということだ。こうやって三人でめしを食べていて、いい発想が出てこないか』
 『隊長、突然、発想しろと言われても、おいそれと出てくるわけがないですよ。日頃、何かを課題として考える、いい発想が浮かぶ、頭の中の引き出しに入れて大事にしまっておく、その引き出しからそのものを出したり入れたりしていないと『はい、それは』と言って取り出せないですよ』
 『ほう、そうか。パリヌルス、あの件をドックスに話してやってくれないか』
 『ドックス、俺の話を聞くか。驚くなよ!いま、オキテスが話題にした戦闘艇を建造する!二艇だ!』
 『ええ~っ!そうなんですか』
 ドックスが驚きの声をあげた。その声は大きかった、建造の場にいる者たちがドックスの方に振り向いた。