『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 913

　『統領殿、軍団長殿、このたびは大変お世話になりました。新艇引き渡しの祝い品までいただき誠にありがとうございました。この新艇でいい商いをさせていただきます。ありがとうございます。では、私にとって今日の予定もあります。日暮れまでには、目的地までと考えています。出航いたします。今度、こちらに伺うのは、５０日後と予定いたしております。何卒よろしく願います』
　『おう、テカリオン殿ありがとう。俺らを引き立ててくれていることに厚く礼を言う。道中、くれぐれも気を配って、航海をしていってくれ。安全に航海してくれるよう祈っている』とアヱネアスが言う。イリオネスも言葉をかけた。
　テカリオンは、出港していく、アヱネアスらは浜に居並び彼を見送った。
　二艇を曳くテカリオンの船は航跡を残して遠ざかっていった。

　『おう、諸君、今日は大変ご苦労であった。君らよくやってくれた。とはいうものの、道半ばというところだ。あと２艇だ、完売を目指して力を尽くしていこう』
　アヱネアスは一同に声をかけた。彼らはアヱネアスの言葉に拍手で答えた。
　イリオネスが一同に声をかける。
　『諸君、ご苦労であった。今日はこれにて業務を終える。一同体を休めてくれ』
　イリオネスの言葉に一同が歓声で答える。日没までには、まだ間を残していた。
　オロンテスがイリオネスに声をかける。
　『軍団長、報告いたします。テカリオン方に納入したパン類の売り上げの受け取り木札です。査収ください』
　『おう、結構あるな、大した量だな』
　『宿舎の方へ運びます』
　『おう、そうしてくれるか。オロンテス、ご苦労であった。この三日間、彼らは大奮闘であったな。パン工房の一同の働きをねぎらってやってくれ』
　『軍団長、心遣いありがとうございます』
　オロンテスが礼を述べる。
　アヱネアスがパリヌルスに声をかけた。
　『パリヌルス、ご苦労、戦闘艇なるものの構想がまとまったのか？』
　『あ～っ！はい、大体のところ、まとまってきています。明日の会議に間に合わせようと概略をまとめました。テカリオンにもその構想を図にしたものを渡しました。これがその原図です。目通しください』
　そのように言って、原図を描いた木板をアヱネアスに手渡した。