『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 908

　パリヌルスは、構想の戦闘艇の船体図を完成させる。次いで、それに基づいて仕様諸元を大雑把であるがなんとかまとめた。　これをこのようにしたかの何故についても簡単に注釈をメモった。目指す結果を得るための構想を形にした。
　テカリオンに渡す船体図と仕様書きについては、明日、午前中に仕上げる予定とした。
　ヘルメスがキドニアから帰ってくる、浜がにぎわう、オロンテスが報告業務を終えて、パリヌルスを呼びに来た。
　『おう、パリヌルス、お前、今、手がすいているか、手すきだったら、明日のことを打ち合わせたい。建造の場でオキテスを交えて打ち合わせはどうだ？』
　『おう、判った』
　パリヌルスが腰をあげる、二人は連れだって建造の場へ向かう、イリオネスがオキテスと打ち合わせをしている。
　『軍団長、解りました。オロンテスにそのように伝えます』
　『おう、パリヌルス、お前、用事を抱えているのではないのか。今、ちょっとの間に明日の対応を話し合っておこうと思ってな。オロンテスに呼びに行ってもらったわけだ』
　『おう、いいだろう』
　『明日のことだが、新艇引き渡しには、お前と俺が立ち会わねばならん。パンと堅パンの納品は、オロンテスがやるのだが、このたびのパン関係の作業をセレストスがやっている。そのようなわけで、明日はオロンテスもセレストスもこちらにいなければならない。明日のキドニア行きについてだが、オロンテスに事情を聴いて、そのようにしようと思うのだが、お前の意見を聞きたい。オロンテスの意向はどうだ？』
　『オキテス、お前の心配は解る。しかし、そんなにキドニア行きの件は、問題視しなくて大丈夫だ。パン売り場を担当している三人は業務に慣れている、三人に任せられる。ギアスと漕ぎかた二人くらいが、手を貸してくれれば、それで充分だ』
　『そうか、判った。パリヌルス、ギアスにそのように指示しておいてくれないか』
　『了解。それでいけるのだな、オロンテス』
　『おう、それで充分いける』
　『解った』
　『オロンテス、セレストスからはパン工房の作業状況については聞いている。オロンテスが見て、段取りに、事の処理、いけるな？』
　『おう、その件は何も心配はいらん。セレストスがすべて配慮してくれている。俺の大事は、テカリオンにパン、堅パンの納品に関する金勘定だけだ』
　『テカリオンに渡す新艇引き渡しの祝い品は、パン３０個くらいと堅パン５ケースくらいでいいだろう。櫂などの提供品が多いから、それでよしとしようと考えている』
　『解った。オキテス、その件、了解！俺らが考えた配慮で充分だ。それ以上することはない』
　三人の意見はまとまった。明日にそなえての準備は整ったといってよかった。