『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 910

　『オキテス隊長、俺は荷積みの場に戻る。何かあったら連絡を頼む』
　『おう、判った』
　荷積みの場に立ったオロンテスは、運ばれてくる堅パンのケースの荷積みを監督しながら、木板に数字を書きつけて、テカリオン方に納品する商品の金額計算に神経を注ぐ。。
　荷運びが完了する、荷積みした堅パンのケースの総数をセレストスと二人で確認した。
　荷運びを終えた者ら一同が荷積みの場の近傍に立っている、オロンテスは彼らに声をかけた。
　『おう、一同、ご苦労であった。このあと、午後になるのだが、この品を船への積み込む作業を行う。昼めしを終えたら、ここに集合してくれ。船への荷積み作業要領は、作業開始時に説明する。以上だ。おう、もう昼めしの頃合いだ。解散！』
　堅パンのケースを運び終えた彼らは、昼めしの場へと歩を運んでいく、オロンテスとセレストス、パン工房のスタッフらは、彼らを見送った。
　『おう、セレストス、俺らもこの場で昼めしにしよう。準備を頼む』
　セレストスは、オロンテスの声がかりで昼に食べるパンを工房へとりに向かう、彼は焼き立てのパンを持って戻ってきた。
　『おう、セレストスご苦労！ご苦労！このパンあったかいではないか、焼きたてか、ちょっと贅沢だな』と言いながら口に運ぶ、思わず声をあげる。
　『お～っ！うまい！焼きたてのパンがこんなにうまいとはーーー。重畳！重畳！』
　周りの者たちの顔がほころんだ。
　午後になる。テカリオンの船が浜に到着する、アヱネアスら一同がこれを迎える、アヱネアスがテカリオンと握手を交わす。
　『統領、このように出迎えていただいて、恐縮のいたりです。新艇二艇の決済を集散所で終えました。今日、新艇二艇を引き取らせていただきます。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。このように海に浮かぶ二梃の新艇を眺めるといけますな、感動です。なかなかのカッコ良さです、気に入りました。いい商いができると考えています』
　『おう、テカリオン殿、そのように言っていただけると、我々が精魂を傾けて建造した甲斐があるというものです。道中充分に気を付けて曳航してください。これはささやかですが引き渡しの祝い品です納めてください』
　アヱネアスはそのように言って、準備しておいたパンと堅パンのケースをテカリオンに手渡した。
　イリオネスも新艇引き渡しの礼を述べる、次いで、パリヌルスもオキテスも礼を言って握手を交わした。
　パリヌルスは新艇の姿形図と仕様書きを３枚づつテカリオンに手渡す、そして、声をかけた。
　『テカリオン、納品するパンとケース入り堅パンの準備ができている。積み込みをすぐにやろうか。その間に曳航の準備をする』
　『おっ！そうか、判った』
　『おう、オキテス、納品するパン類の荷積み、俺が行ってくる、曳航の準備方よろしく頼む』