『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 11

2019-11-25 06:35:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団の一同が寝について、いくばくかの時が流れる。
 パリヌルスが気にかけた風が強まってきている、かなりの強風である。
 彼は漆黒の闇の中、ざわめく波が打ち寄せる波打ち際に起つ。
 海の荒れを見透かす、闇で荒れ模様の様子が鮮明に見てとることができない。
 寝ていた者らが起きだしてくる、浜に居並ぶ、海を見つめる、彼らの表情が見えない、思い起こしているだろう不安を察する。
 顔面を雨滴が打つ、雨を伴って風が吹きつける、雨嵐が襲い来る。
 打ち寄せる波の荒れかたが暗闇ゆえに見てとれない、身の丈をこしているであろう海沖の波濤の高さを想像する。
 人の見分けもつかない、軍団長の所在が解らない、浜にいるであろう統領の所在もわからない、オキテスの所在もつかめない、パリヌルスは迷う、大声をあげようか迷う、迷っていては懸念が解決しない。
 パリヌルスは決断する、大声をあげる。
 『軍団長!』『軍団長!』と叫ぶ、声が風に飛ぶ、雨が声を消す、声が届いたらしい。
 『おうっ!ここだ!』『おうっ!ここだ!』と連呼が返る、ほど遠くないところからの声の返りである。
 パリヌルスは、声の発している箇所に近づいていく、手で触れて互いを確かめあう。
 『軍団長!強烈な嵐です!明朝の出航が危ぶまれます!』
 『こう暗くては状況が見えん!夜明けを待とう。決断は夜明けにだ!』
 『解りました』
 起きだして浜に居並ぶ者らに声をかける、闇に向かって声をあげる。
 『おう、雨風をしのいで休め!出航は夜が明けて、状況判断して決定する。以上だ!』
 パリヌルスは連呼する、行きつ戻りつして伝える、所在の見えないオキテスが了承の返事を返す、アレテスも返答してくる。
 四番船には雨風を避けて松明の灯りがある、パリヌルスが安堵して、オロンテスに趣旨を伝える。
 『お前のところはいいな!風はともかくとして雨をしのぐ屋根がある。そういうことだ。よろしくな』
 パリヌルスは用件を伝えて、真っ暗闇の浜をたどたどしく歩を運ぶ、なんとか一番船に戻る、眠ることなく夜明けを待つ。

 ようやくにして朝が明ける、暗い朝である。
 雨は止んでいる、風は、夜半の状態のままである、風は吠えている。
 イリオネスとパリヌルスは、アエネアスとオキテスのいる二番船に来る、オロンテスもアレテスも申し合わせたように姿を見せる、一同が顔を合わせる。
 アエネアスが一同に声をかける。
 『強烈極まる風だ!沖の波濤を見ろ!身の丈ぐらいの波立ちだ。おさまりを待つ。今日は出航しない!以上だ』
 イリオネスが変わって声をかける。
 『船を揚陸しておいて安堵した。洋上停泊していたらと考えると身がすくむ。この幸運を喜ぼう。以上だ』
 一同は、風のおさまりを待って、作業の段取りを申し合わせることにして散会した。