『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第9章  戦闘再開  34

2008-01-21 07:49:29 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 『メネラオス、イドメニス、アンチロコスの軍団は、何をしていたのだ。これでは、船陣のことを考えた備えをしなければいかんな。何としても最悪を避けねばならない。』
 アガメムノンは、万全を期すための案について話した。
 これを聞いていたオデッセウスは、激しく反論した。
 『何を言われるか、アガメムノン!気でも狂われたか。統領でミュケナイの王権を持っている人ともあろう人が。俺の軍団の将兵は最後の一人が死ぬまで闘う覚悟が出来ている。今日の今日までしのんできた辛苦がどれほどのものか、判っているのか、アガメムノン!だまられよ!今、言った案など、いいわけがないだろうが。この激戦の真っ最中に、軍船を海におろす、それこそ敵の思うつぼだ。軍団の兵たちは戦わずして皆逃げ出してしまう。とんだわざわいにつながる。俺は、絶対に反対だ!今は、敵を攻めて、攻めてまくり、攻撃こそ最大の防衛と、俺は、考えている。今は、そのときである。心されよ!アガメムノン。』

第9章  戦闘再開  33

2008-01-19 08:37:51 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アガメムノンは、沈痛な面持ちで、横たえていた身を起こして、ネストルに言葉をかけた。
 『戦況は、どのように展開している?身に損傷をうけて横になっていると、戦いの損害妄想が起きていかんのだ。払い除けても、払い除けても俺を襲いに来る。』
 ネストルは、アガメムノンの戦略構想を打ち砕くと思われる戦況を語った。
 『ネストル、君だから本音で話が出来る。ここで話したことは、秘しておいてもらいたい。いいな。』 アガメムノンは念を押した。
 『あの防衛柵が破られた上に、アイアースの軍団の船に火をかけられたとは、、、。』
 アガメムノンは、唇を噛んで、一息入れた。

第9章  戦闘再開  32

2008-01-18 08:00:49 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 戦いは続く、日は暮れず。太陽は午後の陽射しを戦野に注いでいた。
 ユロピロスの手当てを終えたパトロクロスは、アキレスの待つ陣営に帰ってきた。彼は、アイアースの船団の軍船が火に焼かれる戦いの模様を振り返っていた。彼は、負傷した軍医のマカオンのことを伝えるとともに、アガメムノン、オデッセウス、デオメデスの三将、多くの将兵が傷を負い手当てをしていることも伝えた。また、アイアースの船陣が軍船の焼失、多数の戦死者と大きな損害を受けたことなども話した。パトロクロスは、涙を浮かべ耐えられない悲憤に胸はふるえた。
 マカオンの手当て済ませたネストルは、負傷したアガメムノンと二将を訪ねた。彼の心も、また、重く沈み、ひきつるように痛んでいた。

第9章  戦闘再開  31

2008-01-17 08:38:13 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 大石の直撃を左の喉もとにうけたヘクトルはたじろいだ。双眸に闇が訪れる。大石を抱いたまま大地に倒れていった。総大将のヘクトルが倒れる。思ってもみない事態であった。トロイ軍の危急存亡のである。走り寄った将兵たちは、前後左右を擁護して退きさがっていった。
 もう一人のアイアースは、サルペドンを防衛柵の外へと押している。グローコスの支えのない五番隊は、もろさを露呈して、アイアースの一隊に押し下げられた。
 アイアースの軍団は、軍船の焼失、多数の戦死者を出したが、どうにか、トロイの軍団を防衛柵の外へ押し下げ、壊滅の危機から逃れることが出来た。
 アエネアス、デイポポス、メリオネス、パリス等の率いる二番隊、四番隊は、メネラオス、イドメニス、アンチロコス等の率いる連合軍の軍団をひきつけて、濠の中を右往左往しながら激しく戦い、牽制していたのである。

第9章  戦闘再開  30

2008-01-16 07:11:54 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 二人のアイアースは、将兵たちを励まし、長~い長い海戦用の槍で懸命に防戦した。
 『海戦用の槍を使え!』 『火は投げ返せ!』 『船を火から守れ!』
 苦戦だ。二人のアイアースは、ここは敵将を倒すべきと判断した。何としてもトロイ軍をしりぞけなければならない。
 数隻の船から黒い煙が立ちのぼり、炎があがった。船が燃え上がった。船が燃える。あちこちの船が燃え始めた。
 二人のアイアースの気は狂った。戦場を探し回り、ようやくにして、一人は、ヘクトルと対峙した。もう一人は、サルペドンと向き合った。
 ヘクトルに対峙したアイアースは、船尾の支えに使っていた大石を小脇に抱いて、仁王立ちの様相でヘクトルの前に立ちはだかった。アイアースの気力がヘクトルを圧倒した。間合いをつめるアイアース、さしあげた大石をヘクトルめがけて、どう~っと投げつけた。この一投で勝負にけりをつけた。

第9章  戦闘再開  29

2008-01-15 07:54:07 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 両軍は、剣を奮って切り結んだ。櫓からのチュウクロスの放った一矢がグローコスの左手の上腕部を射抜いた。さすがのグローコスも激しい剣合の最中での負傷に戸惑った。駆けつけたサルペドンは、刺し貫いた矢を処理して、グローコスを失ってはならじと後陣に退かせて、激しく切りむすぶ闘いの中に引き返した。
 闘いは、引き上げられた軍船の船尾の下で展開していた。
 トロイ軍の将たちは、兵を叱咤した。
 『船を火で焼け!』 『船に火をかけろ!』 この指示が飛んだ。
 入り乱れる中、各所にあった料理に使っていた火の燃えさしを引き抜いて、船に投げ入れた。
 連合軍には、二人のアイアースがいる。オイレウスの子のアイアース、テラモンの子のアイアース。二人とも一国を領する領主の息子である。
 ヘクトル、サルペドンの突入した場所は、この二人のアイアースの船陣であった。

第9章  戦闘再開  28

2008-01-14 10:13:25 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 五番隊を率いているサルペドンは、自軍団のリキュウア軍団とトロイ軍の混成軍団であった。副将にはデオメデスと対峙したグローコス、そして、トロイの知将として誉れ高いアステロバロスであった。グローコスは、領主サルペドンの信頼が厚かった。
 五番隊は、三番隊のアシオスが倒された三番ゲートの右サイドに防衛柵の弱い箇所のあることに気がついた。軍団は、ここぞとばかりに兵を励まして、攻撃を集中した。彼等は、攻城戦に優れていた。連合軍は、ゲート脇の櫓の上から、アイアースの弟チュウクロスの指揮する弓隊の連射攻撃を通常の楯より二まわりも大きい楯で飛び来る矢を防ぎながら、血路を開いて、防衛柵を破り、敵陣内に討ち入った。
 防衛柵の向こう側は、波うちが迫り、軍船が浜に引き上げられた狭い船陣領域であった。トロイ軍の突入により、剣撃の戦場と化した。

第9章  戦闘再開  27

2008-01-12 07:26:23 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 三番隊のアシオスは、第三ゲート前で果てた。ヘクトルの一番隊は第二ゲートを攻撃していた。防衛柵は、総延長10数キロメートル以上に及び、各所に10数個のゲートが設けられている。ヘクトルが攻撃している第二ゲートは、第三ゲートの左手のゲートであり、第一ゲートは、最左端のゲートである。
 突き進んでゲート前の敵を蹴散らしたヘクトルは、ゲート破りに脳しょうをしぼった。そんなとき、プリダマスから二度目の策を進言してきたが、到底受け入れることの出来ない内容であった。ヘクトルは、彼を叱りとばし、信念をぶちまけた。
 『お前、何を考えている?そのような根性で敵を倒せると思っているのか。馬鹿!何を言うのだ。一戦、一戦に勝つことこそ、至上なのだ。勝手にしろ!兵を巻き添えにしたら、貴様を切って捨てる。しかと心せい!』
 ヘクトルは、兵たちを叱咤して、総がかりでゲートに大石を打って、打って、打ちつけた。ゲートは、砕き破られた。ヘクトルの軍団は、なだれをうって、連合軍陣内に攻め入った。

第9章  戦闘再開  27

2008-01-12 07:26:07 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 三番隊のアシオスは、第三ゲート前で果てた。ヘクトルの一番隊は第二ゲートを攻撃していた。防衛柵は、総延長10数キロメートル以上に及び、各所に10数個のゲートが設けられている。ヘクトルが攻撃している第二ゲートは、第三ゲートの左手のゲートであり、第一ゲートは、最左端のゲートである。
 突き進んでゲート前の敵を蹴散らしたヘクトルは、ゲート破りに脳しょうをしぼった。そんなとき、プリダマスから二度目の策を進言してきたが、到底受け入れることの出来ない内容であった。ヘクトルは、彼を叱りとばし、信念をぶちまけた。
 『お前、何を考えている?そのような根性で敵を倒せると思っているのか。馬鹿!何を言うのだ。一戦、一戦に勝つことこそ、至上なのだ。勝手にしろ!兵を巻き添えにしたら、貴様を切って捨てる。しかと心せい!』
 ヘクトルは、兵たちを叱咤して、総がかりでゲートに大石を打って、打って、打ちつけた。ゲートは、砕き破られた。ヘクトルの軍団は、なだれをうって、連合軍陣内に攻め入った。

第9章  戦闘再開  26

2008-01-11 08:48:24 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 戦争は、そして、争い、闘いは将兵の気を狂わせる。ましてや、この時代、人間の性の中に存在している、制御できずにエスカレートするままの獣性をあらわにして、戦いの場にいる己をけしかけていく姿があるのではなかろうかと推察される。
 三番隊の正面に、敵陣内に突入する数少ないゲートがあった。この隊を率いている将アシオスは、正面のゲートを討ち破ろうと勇み立った。彼は力んだ。力みは平常心を失わせた。判断バランスに狂いの生じたアシオスは、敵の兵器を身誤った。戦車を駆って突き進み、部下を従えてゲートに殺到した。このゲートを守備していたポリポテスとレオンテス、そして、10数人の兵は、ゲート前に踏みとどまり、アシオス率いる一群と交戦に及んだ。干戈の切りむすびは激しかった。
 『トロイの者ども、ここを破れると思っているのか、馬鹿者!俺たちをなめんなな!』 と、二人と兵たちは、手傷を負いながらも激しく、槍の突き撃を繰り返し、二人ぐらいを串刺しにするという荒業で、一群の兵を片っ端から葬った。彼等の使用していた槍は、陸戦で使用しているものとは違っていたのである。その槍は、海戦で使用する槍で、長~い長い槍であったのである。一群の兵を片付けた彼等は、アシオスに挑んでいった。アシオスは、剣の間合いに近づくことが出来ない、彼等を倒すことがかなわない、その上、二人の果敢な攻めに屈した。ゲート前で身体を無惨に切り刻まれて果てた。