『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1393

2018-10-17 08:10:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスがテーブル上に計画を書き記した木板を置く、そのうえに力を込めて右手をおく、イリオネスがその手に手を重ねる、続いて、パリヌルスが手をおく、オキテス、オロンテスが手を重ねる、アエネアスが左手を一同の手の最上段に重ねおく、一同の目を気を込めた目で見る、アエネアスが大きく声をあげる。
 『必ず事を成す!』
 一同の呼応する、精気横溢の声。
 『おう!』『おう!』『おう!』
 喊声をあげる、重ねた手をほどき、両手を拳にして天空を突く、精気溌溂の声をあげる、意思統一を醸成する。
 アエネアスがイリオネスの手を握る、会している全員が互いに握手を交わす、笑みの交歓もする、アエネアスは満足する、
 『事は成る』と自信が沸く、四位一体の構想が頭中にカタチとなる、この構想に到るプロセスを思い浮かべる、事業体の進展模様を瞼裏にイメージする、未来をうかがい見た。
 四位一体の構想を思考する、意思として固まる、それを持つべき者に説く、構想とその意思を共有してやるべきことに挑んでいく、逐次次元、次元の総量、ベクトル量が大きくなる、事業体が動く、サクセスの確率が向上する、総員参加のベクトル量で事業体が動く、大きな成果を獲得することができる。アエネアスは、その期待成果に覚醒したのである。
 イリオネスの声が聞こえる、一同と目を合わせる。
 『これでもって会議における二つの案件を終えた。この後、当月の打ち合わせをやっておきたい。パリヌルス、オキテス、オロンテス、話してくれ』
 パリヌルスが手を上げる、話し始める。
 『今、四基の船台の三基において戦闘艇が建造されている。今月及び10月において、テカリオンからの受注もあり、新々艇の建造にその一基を使用して、やってくれればと考えているのだが、オキテス隊長、手配のほどを頼みたい』
 『おう!、了解!早速、そのように手配する』と返事を返す、オキテスがそのまま話を続ける。
 『営業担当としての今月の私の行動予定を伝えておきます。明後日、9月9日ですが、キドニアの集散所と営業活動の詳細の打ち合わせを行います。営業活動の事前活動を11日より16日にかけて関係筋との打ち合わせに出航します』
 『その打ち合わせの内容は?、聞かせてくれればありがたい』とイリオネスが問う。
 『打ち合わせ内容は、10月に行う売り出し関連展示販促についてです。打ち合わせ先は、木板に書いてある通りです。キドニアに始まり、レテムノンのテムノス浜頭、マリア集散所、イラクリオンエドモン浜頭です。以上です』
 『了解した』
 オキテスの9月の予定説明が終わる。
 次いで、オロンテスが口を開く。
 『私は、キドニア集散所において船舶事業の営業活動の窓口業務を担当いたします。オキテス担当と打ち合わせを終えています。また、パン工房においては、スペッシャルパンの新商品の創作をします』
 アエネアスとイリオネスは、パリヌルスら三人から9月、10月の計画を聴きとった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1392

2018-10-16 07:17:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一同が明るくなった場を見渡す、アエネアスが言う。
 『お~お、たいまつに明かりの火を灯す、いいことだ!これで心にも明かりが灯る、話も見えるというもんだ』
 イリオネスがオキテスに営業活動の説明をするように促す。
 『解りました。営業活動計画の10月末までの日程を書き記した木板です。見てください』と言って木板を一同に手渡す。
 
                      営業活動計画書
                催事名 戦闘艇 新々艇売り出し展示試乗会
       *売り出し関連事前活動日程表
       9,11      キドニア集散所 キドニす浜頭 スダヌス浜頭と打ち合わせ   
       9,12      レテムノン テムノス浜頭と打ち合わせ
       9,14     マリア集散所と打ち合わせ
       9,14     イラクリオン エドモン浜頭と打ち合わせ
       
       *売り出し展示試乗会の催行
       10,1~3   キドニア集散所
       10,4~6   レテムノン
       10, 8~10 マリア集散所 戦闘艇2艇の納入
       10,11~13 イラクリオン
  
 『活動日程が詳しく書いてあるな。一目瞭然で解る。この計画書で見えていないのは成果目標と未来成果だ。この計画は如何なる成果目標を目指して、どのような成果をを予定しているのか。営業担当として所信を言ってくれ』
 『解りました』
 オキテスが姿勢を正す、質問について返答する。
 『只今、聞かれたことの返答をいたします。これについては、担当として、いい結果を達成したいと営業活動計画を組あげています。成果目標として12月までの建造艇数の完売を前提としています。10月末までに受注成約6艇、引き合い件数10件、その10件のうち5件の成約を1月末までにやりたいとしています』
 『おう、了解した。この計画書には書いてはないが、何か補足があるかな?』
 『はい、売り出し期間が終わってもその後において、月あたり1回、関係各地において展示試乗会開催の販促活動を実行していきたいと考えています。また、試乗要請があればその要請に応じていく。活動の万全を期していきます』
 『今、オキテスが説明した営業活動計画に質問があるか?』
 パリヌルスが手をあげる。
 『いえ、ありません。彼の活動に対して我ら一同、支援を怠りなくやっていきます。事は成ると成約期待を感じています』
 イリオネスが口を開く。
 『これだけやったらこれだけの成果があるといった性質の仕事ではない。これまでオキテスがやってきた営業活動の質の向上が成果に結びついていくと考えられる。ここに会している全員が力を合わせて満足できる成果とする!いいな!』
 イリオネスの力を込めて話しきる。
 『一同!先にもいったが、力むんじゃないぞ!これだけやれば事は成る!無我!自身!成果自ずからなるだ。腹8匁で充分と心得よ!』とアエネアスが告げる。
 一同が起ちあがる、喊声をあげる。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1391

2018-10-15 07:59:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスの四位一体構想の話が終わる。
 会議を進行させるイリオネス。
 『統領からの事業体運営の四位一体構想を拝聴した。一同、理解したな』
 『はい!理解しました。肝に銘じました。確実に結果を出すように精進します』
 アエネアスが言葉をはさむ。
 『お前ら殊勝に返事はしたが、チョッピリ固いな、そのように固くなるな。身体から力を抜いて、気を入れろ!気の入り方が足りていない。事に当たるには、気を入れて闊達にふるまう、そうすれば寸前の不明が見える。奔放にふるまえなければ後手の先をとって、状況の確実対処が困難だ。そういうことだ』
 『統領の極意ですね。道理で統領と対峙すると気おされてしまい、何もできない。そういうことでしたか』
 『事にあたる、気を入れる!それは筋肉の使い方でやる。それも小さな小さな筋肉の使い方ひとつでそれができるのだな。決め手への入口だ、覚えておくといい』
 アエネアスが一同と目を合わせる、目が口以上に話している。
 『左手の子指1本に力を集中させて握る、残る9本の指の力は抜くこと、それだけでいいのだ。ちょっとは意識的に癖をつけるといい。両の手に力を入れて10本の指で拳を握る、力が入り過ぎて力み状態になる、事をしくじることがある。そういうことだ、解ったかな。また、力みになれて事を処していく、力みが力みでなくなる、その領域に到達するには時間をかけて修行の必要がある』
 アエネアスの言葉が和んだ口調になる。
 『そうだな、自然体という事もある。自然体に構える、大事なことだ。気を充実させて、背筋を伸ばし胸を張った姿勢で構える。胸を張っていなければ脇にあまさが出る。それがことに対峙する姿勢だ。肩をすぼめて胸をちぢこませて立っていると脇にあまさが出る、それが気のあまさにつながる、潜在気力の喚起を失う。それが姿勢だ。そういうことだ』
 『ありがとうございます。そのように身体の筋肉を使って、潜在気力の覚醒を行う。精神一到事を成すですな』
 『事は成る。あれこれ考えず、気を敏にして、我を忘れて事にあたれ!おうおう、訓話になったじゃないか、軍団長、会議を進めよう!』
 『しかし、なかなかの訓話でした。目標の達成が苦もなくできそうですな。いい話をいただきました。事にあたっているときそのような状態でやっていても言葉にできないでいます』
 『あ~あ、それは事が成っているからだ。言葉にすることはない』
 イリオネスが応える、姿勢を改める、一同に声をかける。
 『おう、会議を進める。宵が来たな、オキテス、場を明るくする。松明に火をつけてくれ』
 パリヌルス、オロンテスがオキテスに手を貸す、4本の松明に火が点く、場が明るくなる。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1390

2018-10-13 07:37:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、トロイ民族を率いる統領として至誠の念を込めて話し続ける。
 彼の思念は、トロイ人民に対してであり、その人民に接する者たちへもその念を持って接するべきであるとの姿勢で話そうとしている。
 起立姿勢で話していた彼が腰を下ろす、一同と目線の高さを同一にする、話し始める、丁寧な言い回しである。
 『諸君等に俺の思いを伝えたい。俺たちが力を合わせて推し進めている事業体についてである。我々が船舶の建造に本格的に着手した。それについて俺の考えの原点となる構想を君らに伝えたい』
 アエネアスがイリオネスと目を合わせる、次いでパリヌルスら三人にも順に目を合わせていく。
 『船舶建造の場が君らの構想と尽力によって整備され出来あがった。建造の場は素晴らしい!絶賛に値する。開場の時に口にした四位一体の構想について話しておく』
 場に会している四人がアエネアスと目線を結ぶ。
 『この四位一体の構想を強い信念でこの胸に持している』
 アエネアスは、右手の手のひらを左胸にあてる。
 『四位一体で仕事を為してこそ、事業が成り立ち、運営維持していける。解ってくれるな』
 四人と目を合わせる。
 『四位一体で活動してこそ事業体の未来が開け、時代が連なっていくと考えている。その四位とはだ!』
 言葉に力がこもっている。
 『その第一は、人材によるいいモノつくりの構想である。第二は、いいモノを造る施設のあることだ。いわゆる建造の場のことだ。第三は、いいモノを創出する、いいモノを造る技術を持った集団だ。第四が造りあげたモノを使う人々に届ける、我らと外部に組織的に、また、計画的に活動する集団である』
 聞きいる者たちの呼吸をを感じ取る。
 『これら四位が一体となって活動してこそ事が成りたっていく』
 アエネアスは一同と改めて目を合わせる。
 『一同!解ってくれたかな』と念を押した。
 オキテスがパリヌルスに俺ら三人の答えを言ってくれという。
 『統領の言われる通りです。理解しました。この事業体を運営、仕事をやり続けていくうえで、私らが正しく強く認識して仕事をやっていかなければならない。その要諦を理解いたしました』とパリヌルスが三人に代わって答える。
 『そうか、理解してくれたか。ありがとう。これがあって、脚下照顧、一歩前へ進む。我ら民族がよき明日を築くために努めてほしい!』
 パリヌルスが三人を代表して答える。
 『これを事業運営方針として、事業体の運営にあたります』
 『ありがとう、未来を見つめてともに歩もう!』
 これによって彼らの目を通して未来をうかがい見ることが出来るとアエネアスは事業の運営に携わる者たちのことに想いを馳せる。
 会議におけるアエネアスの言葉を静かに聴いていたイリオネスは自分の立ち位置を自覚した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1389

2018-10-11 16:27:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、テカリオンと別れの言葉を交わし終える、浜に戻る。
 キドニアから帰った来たセレストスと顔を合わせる。
 『あっ!パリヌルス隊長、只今、キドニアから帰りました』
 『おう、ごくろう!今日も忙しかったかな?』
 『はい、パンの売れ行きが好調です』
 『食欲の出る季節の訪れかな』
 パリヌルスと言葉を交わすセレストスがイリオネスが待っている会所へ向かう。
 ギアスが交易船の出航準備作業に手貸しを終えた報告に顔を見せる。
 『隊長、テカリオン方の出航準備作業が終わりました』
 『おう、ご苦労であった。何か連絡事項でもあるかな?』
 『はい、明日はヘルメス艇がキドニア行きの業務につきます。オロンテス隊長から要請がありました』
 『そうか、了解した。ヘルメスの航走具合に注意して操船してくれ、また、事情を聴く』
 『解りました。今日の業務を終了いたします』
 『おう!』
 パリヌルスは、浜で作業をしている一同を招集する、終礼を行う、一同と夕食の場を囲む、交易船の者たちとの交流を話題にする、夕食の時を和やかに過ごした。
 夕食を終えたパリヌルスは、会所へと向かう、オキテスとオロンテスはすでに席についている。
 アエネアスとイリオネスは、会議の議題について話し合っている。パリヌルスは、場を眺める、席に就く。
 イリオネスが時を見計らって立ちあがる、一同に話しかける。
 『おう、一同、そろったな、会議を始める。テカリオンを迎えて、小麦の仕入れ、戦闘艇の引き渡しの業務を終えた。一同ご苦労であった。テカリオンの次回に来訪は2か月後である。我々が建造を計画している新艇の改造艇である新々艇を2艇を受注した。テカリオンの好意ある我々との交流を感謝したい。彼は明朝、陽の出の刻に出航する、航海の安全を祈って彼を送ろう!』
 『解りました』
 イリオネスの言葉に一同がうなずき合う。
 イリオネスが姿勢を改める、一同と目を合わせる、口を開く。
 『あれやこれやで会議の開催が一日遅れた。ただいまより会議を開催する。統領、願います』
 『おう!』
 アエネアスが起ちあがる、一同の目線が統領に集まる、ひとりひとりと目があう、心が通じ合う、おもむろに話し始める。
 『この三日間、テカリオンとの交易業務を無事に終えた、ご苦労であった。彼との交易、彼の厚意あふれる我らとの交流、私は彼に対して感謝の念を抱いている。今回の交易では互いが意を尽くして交易業務を行った。諸君等にも彼にも統領として心から礼を述べる』
 一同に感謝の意を込めたまなざしをもって目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1388

2018-10-10 07:34:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスはクレタの海を見渡す浜に立っている、テカリオンの乗り組みの者らに手を貸しているギアスと漕ぎかたらの作業風景をじい~っと見つめている。
 彼は、テカリオンの明日からの航海について想いをめぐらせる。
 彼らは、エーゲ海の海域に到るまで島ひとつないクレタ海を北上するのである、海上に航海する目安とする島ひとつ見えない海上を行くのである、最初の帰港を予定しているミロス島まで120キロ余りに及ぶ海洋である。
 懸念は、ミロス島に到着するまでの空模様、風模様、海上状況等である。
 この浜を陽の出とともに出航して、順調に北上航海して、日没、宵が幕を下ろす頃でないと停泊予定の港に到着しない。
 この時代の交易船の船速は、時速10キロくらいである。好条件に恵まれ、順調な航海で寄港予定のミロス島まで、新々艇2艇を曳航しての10時間~12時間の時間を要する航海である。
 パリヌルスは、テカリオンの航海を思いやった。
 彼は、陽の位置を確かめる、時を計る、作業の進捗を見定める。
 明朝の出航準備が整ったらしい、ギアスが漕ぎかたの連中をつれて引きあげていく。
 販促ツールの作成担当の者が出来あがったツールを届けに来る。
 『パリヌルス隊長、作成指示を受けました販促ツール、出来あがりました』
 『おう、そうか。どれどれ見せろ!』
 販促ツール作成担当が出来あがったツールのひと組をパリヌルスに手渡す、出来あがり具合を確かめる。
 『おう、よく出来ている、重畳!これで結果よければ、なお、重畳というものだ。ご苦労であった』
 『はい、ありがとうございます。隊長、今のは出来具合の褒め言葉ですか?』
 『そのように聞こえたか?この販促ツールで船が売れてくれればいい!お前が作った販促ツールの効果期待だ。結果がそうであってほしいという願いだ。ハッハハ!』と微笑む。
 『おう、販促ツールをテカリオンに届ける。お前、ハシケを漕いでくれ』
 『解りました』
 二人がハシケに乗る、交易船に向かう、船べりによる、パリヌルスが大声で呼びかける。
 『テカリオン船長!』
 声が届いたらしい、テカリ音が船べりに顔を見せる。
 『テカリオン船長!新々艇の販促ツールが出来あがった!』
 出来あがった新々艇の販促ツールを手渡す、受け取るテカリオン、ツールに見入る。
 『おう、ありがとう!よく描けている、重畳!重畳!パリヌルス、ところでだが、新々艇の想定価格はどれくらいに見積もっている?俺としては、添付に帆一式をつける』
 テカリオンが考える、言葉を続ける。
 『戦闘艇は、2500ドラクマくらい、新々艇はその1割安くらいといったところでいこうと考えている。お前らもあまり安く売るなよ』
 『おう、心得た!そこのところは会議で十分に話し合う。ところでだ、明日の航海、気を付けていけよ!』
 『解った!案じてくれているのか!ありがとよ。明日の航海条件は極めていいと思っている。お前のくれた、あの鉄の棒、役に立っている。島ひとつない海域でも目指す方向を間違えることはない!安心しろ!』
 『そうか、役に立っているか』
 『そうだ、いつも肌身離さずということだ』
 『目をめぐらせても水平線のみの海洋を行くのだ。航海の安全を祈る』
 『おう、ありがとう!』
 『おう!』
 パリヌルスとテカリオンの別れの会話が終わった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1387

2018-10-09 07:01:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テカリオンに関する用務を終え、昼食を済ませたパリヌルスとオキテスが会所に来る。オロンテスはすでに会所に来ている。
 イリオネスが三人に声をかける。
 『おう、テカリオンに対しての用件用務は終えたな。ご苦労であった。一日ずれたが今日、夕食を終えたら会議を開く。この会所で会議をやる。オキテスに頼んでおく。場を明るくする松明の準備を頼んでおく』
 『解りました』
 『議題の件だが、オキテスとオロンテスは、営業活動計画を提示できるように準備してきてくれ。パリヌルスは、明朝出航のテカリオンの準備に手を貸してやってくれ』
 『了解しました』
 『彼に渡す新々艇の販促ツールだが、うまくいきそうか?すでに2艇の注文を受けたからな』
 『はい、担当部署において制作にとり掛かっています。それを渡して業務の終了とします』
 『いいだろう、任せる。一同、解ったな!夕めしを終えたら、ここに来てくれ。以上だ!』
 三人が会所から持ち場へと向かう。オキテスがオロンテスに声をかける。
 『おう、オロンテス、お前の時間都合はどうだ?』
 『キドニアの連中が帰るまでは、手すきだ』
 『営業活動計画の骨子はできている、打ち合わせておこう。検討したうえで互いの責任担当を明確にしておきたい』
 『おう、いいだろう』
 二人はオキテスの席場におちつく、木板に書き記された時日に基づいた計画に目を通す。
 『オロンテス、見ての通りだ。集散所との打ち合わせによって修正しなければならないときはその時だ、臨機応変でいこう』
 『おう、了解した。打ち合わせには同席して事にあたる』
 『解った!よろしく頼む』
 『建造のことだが、10月、11月に出来あがる艇数のことがある。それらに関連して慎重に事を運ばねばならん!また、それらに関連して各艇の引き渡しの価格も会議の場で話し合っておく必要を感じている。原価について一考しておく』
 『オキテス、お前の言う通りだ』
 『この件について俺が思うには、我々が建造に携わる人的資源を豊富に有しているからこそ出来ている。誰も俺らみたいなことはやれない船舶の建造だ』
 『このまえの価格決定会議のころから見てだな、両艇の構造が進化している。あの時決めた価格で戦闘艇の価格を是とするか、新々艇については新艇に二部所も大々的に付加構造を施している。そのままというわけにはいくまい』
 『新々艇に関しては、完成までに時間があるとはいえ、前もって集散所とは交渉しておく必要がある』
 『そうだな、ここは慎重に事に対応しよう』
 『オロンテス、解った。慎重の上に慎重を重ねて対応を心がける』
 『おう、了解した。これでよしとして、俺はパン工房のほうに行く。明日からのことも少しはしておかねばならんからな』
 『おう、これでいいな、オロンテス。これで会議に出席する』
 『おう!』
 二人は営業活動計画の立案作業を終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1386

2018-10-08 07:58:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テカリオンは、アエネアスに明日の航海予定を伝える、次いで、イリオネスに話しかける。
 『ところでイリオネス軍団長、次回の訪問の件ですが、約2か月後となります。その予定で小麦を納入いたしました。よろしく願います。船舶の発注の件ですが、パリヌルスからも熱心な要請がありました。試乗しました新々艇ですが、あれを2艇、建造していただきたい』
 『テカリオン船長、新々艇2艇ですね。了解いたしました。ありがとうございます。船長も耳にされたと思いますが、昨日、統領からの下命があり、防御楯装備を標準装備とすることを決めております』
 『ほっほう、それはいいことです、我々取り扱う者にとって願ってもないいい知らせです。それについて急な願いですが、新々艇の販促ツールの作成予定がありますかな?』
 『その件については、担当のパリヌルスに聞いてみます』
 イリオネスがパリヌルスに問いかける。
 『パリヌルス、聞く!新々艇の販促ツールだが作成いるのかな?』
 『はい、作成しております。防御楯を装備した姿形図は、作成していませんが』
 『テカリオン船長、聞かれた通りです。現在のところ3枚組です』
 『出来れば、戦闘艇の販促ツールと同様に4枚組で5組くらい、本日夕刻までにいただければ幸いなのですが、いかがでしょうかな?』
 『おう、パリヌルス、今、話した新々艇の販促ツール、夕刻までに4枚組5組だが作れるか?』
 『解りました。5組ですね、作成します。出来あがり次第、テカリオン船長のところへ届けます』
 『テカリオン船長、聞かれた通り、夕刻までに4枚組5組、船長のところへ届けます』
 『では次回訪問時に新々艇2艇を受け取ります。建造かたよろしく願います』
 『了解しました。ありがとうございました』
 アエネアスが手を差し出す、テカリオンが握り返す、次いで、イリオネスとテカリオンとが握手を交わす。
 戦闘艇2艇の引き渡し代金の受け取り、新々艇2艇の建造の引き受け、次回訪問、テカリオンの航海予定等についての話し合いが終わる。
 一同が握手を交わし、会所における話し合いの場を解いた。
 テカリオンがオキテスに話しかける。
 『オキテス隊長、戦闘艇を受け取ります。なお、昼食を終えたら、明日の出航に備えて、曳航の準備にとり掛かります。先ほど打ち合わせたように手を貸していただければ幸いですが』
 『了解しております。昼食後に海に出すようにパリヌルスが段取りしています。準備しました添付の品の調品をしていただきたいのですが』
 『解りました』
 パリヌルスもオキテスに同道して、テカリオンとともに戦闘艇のおいてある浜に向かう。
 テカリオンが添付品の調品を行う、オキテスとうなずき合う、テカリオンが連れ添う側近に指示して、添付品の帆一式4枚と櫂12本を戦闘艇の艇上に積む。
 『オキテス隊長、添付品を受け取った。ありがとう!よくしてもらった、感謝、感謝だ』
 オキテスがパリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス、俺の方は、仕事が終わった。テカリオン船長かたへの後事よろしく頼む』
 『おう、了解!』
 パリヌルスがテカリオンと打ち合わせる。
 『テカリオン船長、昼食を終えたら、戦闘艇2艇を海に出します。曳航の件に関しての準備にギアスとその漕ぎかた一同が手を貸すように段取りしています。尚、販促ツールは私が夕刻までに船に届けます』
 『了解!よろしく頼む』
 段取りの打ち合わせを終えたテカリオンが自船へと向かう、オキテスは建造の場へと足を向ける、パリヌルスは販促ツール作成の場へと歩を進めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1385

2018-10-05 08:10:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスからパリヌルスに指示が出る。
 『おう、パリヌルス、テカリオン船長に販促ツールの説明をしてくれ』
 『解りました』
 パリヌルスがテカリオンと目を合わせる、話し始める。
 『テカリオン船長、紐を解いて見ていただけると解ります。1枚は戦闘艇の仕様について書いています。それに艇体の構造図です。そして、戦闘艇に興味を持っていられる人に海上を航走する戦闘艇を想い浮かべてもらうための姿形を描いた絵図を2枚、計4枚を組み合わせて一組としています』
 『ほう、このような販促のツールを作っておられるとは、奇特ですな!これを見ると戦闘艇がいかなる船かが一目瞭然で理解できて、そのうえ、海上を航走する姿までが想像できる。これは営業活動に大いに役立つと考えられる』
 昨日、目にした防御楯を船べりに打ち立てて海上を航走する絵図も組の中にある。このツールを見ることにより、戦闘艇がいかなる船かがわかる。
 『ホッホウ、あの姿がこのように絵図の書かれている。この販促ツールを見る引き合いの客が買おうという意思決めをしますな。これは素晴らしい!いい販促のツールであると思う』
 テカリオンは感心すると同時に彼らの業務に対する取り組む姿勢のありかたを感じとった。
 テカリオンが話し続ける。
 『これは重宝します。これからの私らの営業活動にこの手法を取り入れてやれば、おおいに業績が上がるというものです。ありがたく頂戴します』と言って側近の者たちにも販促ツールを見せる。
 受け取った販促ツールに感心したテカリオンは『この者らは、いったい何を考えている?。俺らの先を歩いている』といった感じを抱いた。
 会所にドックスから伝言が届く、オキテスが伝言を受ける。
 『おう、そうか、解った!それらを戦闘艇をおいている浜に運んでおいてくれ』
 『了解しました。直ちにそのように手配りいたします』
 オキテスがその旨をイリオネスに伝える。
 『早かったな、いいだろう。俺から船長に伝える』
 イリオネスががテカリオンに声をかける。
 『テカリオン船長、添付する帆一式2艇分、櫂24本の準備が整いました』
 『そうですか。出来あがりが早かったですな。ありがとうございます』
 そのように言ってテカリオンがあらたまる。
 『統領、いろいろと世話になりありがとうございました。私らは、明朝、陽の出とともに出航し、クレタ海を北上し、ミロス島にて一夜を過ごし、ナクソス島に向かいます』
 『そうですか。ミロス島へは、島ひとつない海洋を航海されるわけですな。いい風に押されての航海であることを祈ります』
 『そのようなわけで、明朝、出航までの停泊の件よろしく願います』
 『解りました。戦闘艇2艇の曳航の件等、いろいろ出航の準備もあるでしょう。用向きがあれば言ってください、手を貸します。また、入用のものがあれば遠慮なくいってください』
 アエネアスがパリヌルスに声をかける。
 『おう、パリヌルス、テカリオン船長の出航の準備に手をかしてあげてくれ』
 『解りました』
 パリヌルスは、即刻、ギアスに連絡を手配した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1384

2018-10-04 07:47:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 この時代に生きている彼らは、どのように気が急こうとも朝めしを抜いたりはしない、昼めしも夕めしもしかりである。
 パリヌルスもオキテスもオロンテスも急いで朝めしをすませる、会所へと急ぐ。
 アエネアス以下一同が場の会所に顔をそろえる。
 テカリオンが側近を連れて姿を見せる。
 アエネアス一同が起立してこれを迎える。
 『お~お、これはこれは、痛み入ります』
 テカリオンが深々と低頭する。『俺をこのようにして迎えてくれるとは、何ということか?』と心中でいぶかしむ。
 『統領殿、今朝ほども、今日いただくスペッシャルパンをいただき誠にありがとうございました。心の届く気づかいに深く深く礼を申し上げます』
 『いえいえ、そのように礼をいただくようなことは、いかほどもしていません。気安く受けていただければ、それで結構です』
 『そうはまいりません。どのように礼をいたすべきか迷います。ありがとうございました。言葉だけでは実がともないません。これは航海の途中に入手したものです。皆さん一同で賞味くだされば幸いです』
 交易船の乗組員一同が包みの数々を会所の横の草地に積みあげる。彼ら一同がテカリオンの背後に隊列を整える。
 テカリオンが声をあげる。
 『ありがとうございました』
 テカリオンが言い終わる。隊列を組んだ乗組員一同が一斉に声をあげる。
 『ここに停泊中、配慮いただき馳走になりました。ありがとうございました』と言って、彼ら一同が深く心を込めて頭を下げる。
 アエネアスが起ちあがる、礼を返す。
 『テカリオン船長、そして、皆さん!あなた方の気持ちしかと受け取りました。このように気持ちのこもった品をいただき厚く礼を言います。ありがとう!』
 礼の交歓が終わる。
、乗組員らが場を引きあげる、アエネアスら、テカリオンらが座に就く、テカリオンが口を開く。
 『イリオネス軍団長殿、受け取りました戦闘艇の代金決済をいたします。受け取りください。確かめていただければ幸いです』
 テカリオンが500個のドラクマ銀貨を入れた革袋を2個、50個のドラクマ銀貨を入れた小さな袋をテーブル上に置き差し出す。
 『テカリオン船長殿、いただきます』
 受け取るイリオネス、オロンテスに銀貨の総数を確かめるよう指示する。
 オロンテス、パリヌルス、オキテスの三人が銀貨の総数を確かめる。イリオネスに銀貨の総数の確認を報告する。
 イリオネスがアエネアスに戦闘艇2艇の代金の受領を報告する。
 アエネアスが代金金額とその受領の文言を書き記した木板を手渡す。
 『テカリオン殿、ありがとうございました。戦闘艇2艇の代金、確かに受け取りました。これはパリヌルスらが作成した販促のツールとしているものです。営業活動に有為に役立つと考えて作成したものです』
 『ホッホウ、販促のツールですか、いただきます』
 販促ツールは、4枚を一組として縛られている、それが5組、テカリオンに渡された。