『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1383

2018-10-03 07:30:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ニューキドニアの浜に朝がおとずれる。
 朝行事でにぎわっている、朝行事を終えた者らの表情が精気で輝いている。
 彼らの習慣にならって朝行事を終えたテカリオンが側近を従えて浜に立っている。
 アエネアスらと顔を合わせる、朝の挨拶を交わす、朝の挨拶文言は、定番である。
 『おはようございます。いい朝です』である。空模様など関係なしに交わされる。
 頬を撫でて過ぎていく風がなんとなく風向きの違いを感じさせる。季節の変わり目を感じさせる。
 テカリオンがアエネアスの傍らに立つイリオネスに話しかける。
 『イリオネス軍団長、昨日はいろいろとありがとうございました。今日の予定ですが、アサイチに決済を済ませるべく会所のほうに伺います。よろしく願います』
 『了解しました。会所のほうで待っています』
 彼らが朝の挨拶を交わし終える、場から去っていく。
 イリオネスが浜でパリヌルス、オキテス、オロンテスらと顔を合わせる、朝の挨拶を交わして、アサイチの予定を彼らと打ち合わせる。
 『おう、解ったな!そういうことだ。朝めしを終えたら、場に会所に詰めてくれ。オロンテス、今日はキドニアにはいかないことにしてくれているのだな』
 『はい、今日はそのように段どりしています』
 『そうか、それでいい。オキテス、テカリオンに渡す、添付サービス品の件だが、確認かたを頼む』
 『はい、了解しました』
 一同は、打ち合わせを終えて、それぞれの持ち場へ歩を向けて去っていく。
 『忙しい!それはいいことだ!』とイリオネスがつぶやき、遠ざかる彼らの背中を見送る。
 この光景をそれとなく見つめていたアエネアスがイリオネスに声をかける。
 『イリオネス、打ち合わせが終わったのか、行こう』
 ユールスの手を引くアエネアス、歩調を合わせるイリオネス、三人は宿舎へと向かう。イリオネスがアエネアスに声をかける。
 『統領、彼ら本当によくやってくれています。日々これ好日です』
 『おう、そうだな。イリオネス、お前も本当によくやってくれている。感謝感謝だ。ありがとう!心から礼を言っておく』
 『私のやっていることは、私の務めです。これができる、それはよき盟主がいるからこそです』
 『おう、それ俺のことか?』
 『そうです!』
 アエネアスが笑い声をあげる。
 『ハッハッハ!』
 二人が顔を合わせる、目と目が合う、笑い合う、和やかに歩を運んで宿舎に着く、アエネアスはアカテスに用件を言いつける。
 朝風が樹々の葉をゆする、統領の宿舎の前庭で四人が朝めしのテーブルを囲んだ。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1382

2018-10-02 08:37:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが販促ツール制作担当に続けて指示をする。
 『明日のことだが、昼過ぎまでに4枚組を6組を整えてくれ。以上だ!そのあとの販促ツールの制作については改めて打ち合わせをする。ごくろう』
 パリヌルスは、早々に用事を片づけ、テカリオンの船へと歩を向ける。
 テカリオンは、船上から海面を茜に染めて沈みゆく夕陽を眺めている。
 パリヌルスがハシケを彼の船に横づける、船上にあがる、船上の張り番に来意を告げる、テカリオン船長にパリヌルスの到着を伝える。
 『船長、パリヌルス隊長が見えました』
 『おう、そうか』とうなずき、パリヌルスを迎えに足を運ぶ。
 『おう、テカリオン船長、言葉に甘えて来たぞ!』
 『おう、来たか!待っていたぞ!』
 言葉、語彙が多くないこの時代、態度で表すのがならわしである。手を握る、肩を抱くが情を伝える手段であったと考えられる。
 テカリオンは、パリヌルスと目を合わせる、肩を抱く、友情を示す、交誼を伝える、肩に手をかけたまま身をはなす、目を合わせる、再び、互いが肩を抱く。
 『パリヌルス、今日はありがとう!お前に大感謝の今日だ!何と礼を言おうか、考えると胸がいっぱいになる』
 『俺こそだ!お前の喜びが俺の喜びだ!』
 『パリヌルス、部屋へ行こう』
 『おう!』
 テカリオンが乗り組みの者に声をかける。
 『お前ら、夕食は?』
 『これからです』
 『そうか。明日の空模様は?風のきざしは?それを察知することに気を配ってくれ』
 『はい、解りました』と言い終えて、テカリオンとパリヌルスの二人は船長室におちつく。
 部屋の中央にテーブルがある、二人分の馳走が並べられている。
 『おう、パリヌルス、よく来てくれた。このようにしてお前と会える、俺はとことんうれしい!』と言って、テーブル上の酒杯にぶどう酒を注ぐ、二人が杯を手に持つ、杯を合わせる。
 『互いに元気でこうして会えた。俺はこのうえなく、うれしい!乾杯!』
 相和すパリヌルスも声をあげる。
 『乾杯!』
 二人が杯の酒を飲み乾す、すかさず、2敗目を杯に満たす、二人は口に運ぶ、これも飲み乾す。
 目を合わせる、通じ合う心、感情が高まる、テーブルを挟んでいる、どうしようもない、もどかしい、仕方がない、言葉を交わす。
 『パリヌルス、お前の構想、思考、俺が考えることもできない高みにある。あの防御楯だが、俺の商取引のとてつもなく、でっかい目玉になる。感動したぜ!ありがとう!改めて礼を言う』
 『テカリオン、俺を褒めるな!俺がうぬぼれるではないか』
 『お前のその謙虚さが、お前の価値をより高みに引きあげる』
 『喜んでくれて俺は嬉しい!感激ひとしおでいる!』
 『その後、どうだ?』で話が続く、二人はいろいろと話し合う。夜が更けていく、話のタネも尽きる、パリヌルスが辞する時が来る、後ろ髪を引かれながらテカリオンの船を去る。
 パリヌルスは、テカリオンとの友情の交わりをかみしめる。
 彼はテカリオンとの友情と交歓の始まりをしみじみと想い浮かべた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1381

2018-10-01 05:55:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 声をかけられた作業者がオキテスの傍らに立つ。
 『チョット、場の会所までひと走りだ。統領と軍団長にこの場に来てくださいと伝えてくれ』
 『はい!』
 用命を受けた作業者が両人を呼びに走る、間をおくことなく、アエネアスとイリオネスが戦闘艇が置かれている浜に姿を見せる。
 『おうっ!これは!』と驚きをかくさず様変わりしている戦闘艇に見入る。
 『おう、オキテス!これはどのように細工しているのだ?』
 『詳しい構造については、私は知らないのです。先ほど気が付いたばかりです。この構造を細工したドックスに説明させます』
 オキテスがドックスに声をかける。
 『ドックス!この防御楯の構造について、統領と軍団長に説明してくれ』
 『はい。この件については、パリヌルス隊長から指示を受け、戦闘艇に装備したものです。機に応じて取り付け、取り外しができるように漕ぎ座の舷の内側に防御楯を配置しているわけです』
 『おう、これはいい、用途、目的がいい!いい価値構造だ。海上における戦いを知っているパリヌルスなればこそ、気づいた装備だ。これは今現在、いかなる船も装備していない構造だな!』
 『言われる通りです』
 『オキテス、この装備をこれから建造する船の標準装備とするのだ』
 『はい!了解しました。会議にはかってと考えていましたが』
 『その必要はさらさらない。以上だ』
 浜は作業終了の頃合いとなっている。
 ドックスが建造の場に戻っていく、テカリオンらが自船に引き上げていく。
 帰りがけのテカリオンがパリヌルスを夕食に誘う。
 『パリヌルス、久しぶりだ。お前、終礼を終えたらヒマなのか?だったら、俺の船で夕食を一緒しないか』
 『おう、今日はこれと言って何もない。終礼を終えたら、お前の船に行く』
 『待っている!』
 パリヌルスは、テカリオンを見送り、販促ツール作成の場へと足を運ぶ。
 『おう、ごくろう!作図作業うまくいっているかな?』
 『はい、うまくいっています。隊長から指示を受けた、新しい姿形図もうまく描けたと思います。見てください』
 新しく描きあげた戦闘艇の姿形図の一枚をパリヌルスに手渡す、手渡された姿形図に見入るパリヌルス。
 『おう、うまく描けている、重畳!出来あがった枚数は、どれくらいだ?』
 『はい、10枚くらいです』
 『おう、解った。姿形図1枚づつ2種類、艇体図1枚、仕様書き1枚、合計4枚を一組として5組を明日、朝までに準備しておいてくれ』
 『解りました』
 パリヌルスは、指示をする。
 新しく描き作成した姿形図は、防御楯を船べりに立てて波を割って海上を航走する戦闘艇の雄姿の図であった。