『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  2

2019-04-17 04:55:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスとオロンテス、二人のいるところにパン売り場のスタッフが姿を見せる。
 『隊長、本日分、完売しました』
 『お~っ!そうか。この頃合いに完売したか。片付けてくれ』
 二人は、スタッフに連れ立って売り場に戻る、売り場の片づけが終わる、一同が帰途に就く、西風が強い、海は少々荒れ気味である、彼らは逆風である西風にあらがっての航走であった。
  
 アエネアスとイリオネスは、武闘訓練場にいる、二人は剣の打ち合いにひとくぎりをつけて休む、アエネアスがイリオネスに声をかける。
 『おう、イリオネス、今日の剣合はここまでにする。実は、お前に話すべき要件がある。宿舎のほうへ行く』
 『会所ではなく、宿舎のほうへですか。解りました』
 イリオネスは、アエネアスにただならない気配を感じる。
 二人は、リナウスに声をかけて武闘訓練場をあとにする。
 歩を進める二人を緊張の気配が包んでいる、二人は話し合わない、だまりこんで歩を進めている、無言のまま統領の宿舎の前庭に着く。
 大木を輪切りにして配置した座所に腰を下ろす、アエネアスがおもむろに口を開く。
 『イリオネス、ありがとう、礼を言う。今日、この時を迎えるために、剣を合わせる日々を重ねて今日に到った。イリオネス、今日、これから話すことは周りの者たちに話してはならないことなのだ』
 二人はジイ~ット目を合わせる。アエネアスは、話を続ける。
 『しかし、いずれ話す日がおとずれる。その日はお前と相談して決めて実行する。それくらいに重大な用件なのだ。その要件についてこれからお前と話し合う。いいな』
 アエネアスは、鋭い目線に想いを込めてイリオネスと目線を合わせる。
 イリオネスは、アエネアスの重大要件をしっかりと受けとめるべく身構える。
 『統領、解りました。いかような話か分かりませんが、このイリオネス、心して承ります』
 アエネアスが姿勢を正す、口を開く。
 『イリオネス、それはこういうことだ』と言って、再度イリオネスの目に目線を合わせる。
 『クレタを離脱する!』
 アエネアスの強い決意がイリオネスに言い渡される、驚くイリオネス。
 『ええっ!統領!それはーーー!』
 イリオネスが絶句する。
 アエネアスが話し続ける。
 『暦が新しくなって、マーチの21日、このクレタを西に向かって出航する。クレタに帰らずの征途に就く!』
 アエネアスは力強く言い切る。
 『イリオネス、解ってくれるかな?』
 イリオネスは、統領の心の内をいかばかりかと思い計って口を開いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章    クレタ離脱    1

2019-04-16 05:48:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 2月期の17日の朝が明ける。
 朝行事でにぎわいを見せている浜、オキテスとオロンテスがイリオネスと顔を合わせる。
 『軍団長、おはようございます。いい朝です』
 『おう、おはよう。いい朝だ』
 『今日これより、キドニアに出かけてきます』
 『おう、そうか!ここしばらくスダヌスに会っていないな、元気を確かめてきてくれ』
 『はい、解りました。言伝てはありませんね?』
 『ない』
 オキテスは場をあとにする、オロンテスに同道してキドニアに向かう。
 キドニアにおけるオキテスは、要領よく用件をテキパキと処理する。
 集散所のトミタスと業務の打ち合わせを終える、マリア集散所、イラクリオンのエドモン浜頭、レテムノンのテムノス浜頭への飛脚便の手配も済ませる、昼を広場でスダヌスと過ごす。
 『スダヌス浜頭、頼みだ!キドニス浜頭のところへ出向きたい。一緒に行きたいのだが』
 『おう、行こう』と二つ返事で、二人はキドニス浜頭の屋敷へと出向く、オキテスは挨拶を交わし用件を伝える。
 『おう、オキテス隊長、心得た、お前とスダヌス浜頭の二人に頼まれる。いやとは言えない、お前ら二人、業務のつぼを抑えている。事が実を結ぶわな』
 『キドニス浜頭の力添えがあればこそです』
 『お~お、スダヌス!その気にさせるな、ハッハッハ!』
 オキテスら二人は用件を終える、キドニス浜頭の屋敷をあとにする。
 『おう、オキテス、軍団長によろしくだ!近々中に伺うと伝えてくれ』
 『解った。伝える』
 用務を終えた二人はわかれる、オキテスが頃合いを測る、アレテスの昼便には間に合わない、パン売り場に歩を運ぶ。
 『オロンテス、アレテスの昼便には間に合わなかった。帰りは同道だ。よろしく頼む』
 『おう、お前、毎日、多忙の時を過ごしている、まあ~、ゆっくりしろ!』
 久しぶりに場所を変えて二人きりの時間を過ごす、二人が手を携えてやっている船舶の営業の業務について話し合う。
 『なあ~、オキテス、今、お前が軸になってやっている営業活動だが、あのやり方はいいと考えている。いい結果に結びついている。ともにやっている俺は心強く感じている』
 『そうか、そのようにお前に思われているとは、俺は嬉しい限りだ。結果がいいと結果を考えずに業務を遂行する。そこにこの業務の醍醐味を感じている。多くの客と出会う、船について語り合う。これが結構楽しい。商談が決まる、快感を感じる』
 『それは重畳と言えるな、俺もそこまでやってみたい。集散所から受注を受け取るだけでもうれしく思っておるのだが』
 『この業務、俺に向いているのかな?』
 『俺から見ると、うってつけと見える』
 二人は、感ずるところを話題にして、キドニアにおける午後の一時を過ごした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1516

2019-04-15 08:39:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスら五人は、会議を終え昼食を共に過す、午後を迎える。
 アエネアスの午後の予定は、イリオネスと二人で余人を交えず剣合の時を過ごすことにしている。
 パリヌルスら三人は、互いに午後の作業を打ち合わせて、三人は起ちあがる。
 『統領、軍団長、大変、馳走になりました』と唱和する。
 『おう、ご苦労であった。何事も事は成る!要諦は、謙虚と勇気、そして、始計第一だ。怠るなかれだ!』
 『心得ます』
 三人は、会所をあとにする、彼らを送り出す、イリオネスがアエネアスに声をかける。
 『統領、今日の剣合は、何を課題にやりますか?』
 『おう、今日の課題か、そういえば課題を決めて剣合をやる、久しぶりだな』
 『そうです。剣さばきの素早さも戦いに明け暮れたころの素早さに戻っています。受けて対処の剣さばきを身につけたい。そのあたりの研鑽です』
 『今日から明後日までの三日間だが、課題を決めて剣を合わせる。今日は、対手の初剣の打ち込みへの対処でどうだ』
 『それ、いいですね。それでいきます』
 『おう、行くぞ!イリオネス』
 二人は腰をあげる、武闘訓練場へと歩を向ける、訓練場には、今日も剣合に励む一群が気合を発して、木剣を打ち合わせる風景がある。
 アエネアスとイリオネスは、居合い抜きで打ち込む剣、それを受ける剣さばきに集中する、役割を交替して剣を合わせる、抜き打ちを決める、受ける、今日の剣合を終えた。
 訓練場を去ろうとする二人にリナウスが声をかける。
 『今日の二人の剣合は変わっていましたね。課題を決めて剣の研鑽といった剣合でしたね』
 『おう、リナウス、お前、さすがだな、勘がいい。今日、明日、明後日と課題を決めて剣合をやろうと考えている』
 『そうですか、いいですね。よろしければ手伝わせてください』
 『おう、解った。ではな』
 二人は武闘訓練場をあとにする、歩きながらイリオネスがアエネアスに声をかける。
 『統領、今日の剣さばき、冴えていましたね。私が受けにまわっての統領の抜き打ち込み、受けそこねが多かった。命が十あっても足りないと感じました』
 『そういう、お前の初剣も俺の急所を幾度となく突いたではないか、俺も命が五つや六つでは足りない』
 『そうでしたか』
 『なあ~、イリオネス、あの抜き打ち込み、剣さばき、かなり有効度がハイレベルだ。極めておく必要がある』
 『言われる通りですな、明日の剣合で身につけよう』
 『解りました。またやりましょう』
 こうして二人の剣合ガ三日間続いた。
 『おう、イリオネス、明17日だが、オキテスがキドニアに出かける日だな。念押しがいるか、いらないかだが?』
 『それはいらないでしょう。彼が帰ってきての報告で十分と考えています』
 『そこまで任せることができる。それはいいことだ。それでこそ事が成る』
 こうして、2月期の16日が暮れた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1515

2019-04-12 07:38:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスが笑う、つれて一同が笑いをこぼす。
 『おう、一同、深く考えなくていい。声を出すことは体にいい!それだけで充分だろう』
 イリオネスから声がかかる。
 『おう、いいか。会議を始める。オキテス、展示試乗会の開催計画はできたか?』
 『はい、出来ました。これが展示試乗会の開催日程です』と言って、持参した開催日程を書き込んだ木板を各自に手渡す、一同が見入る。

           展示試乗会開催日程         受注目標    引き合い獲得目標
       2月期 28日29日 キドニア集散所     3艇        3件
    新暦第1の月  1日     移動日 
            2日 3日 レテムノン       2艇        2件
            4日     移動日
            5日 6日 マリア集散所      2艇        2件
            7日 8日 イラクリオン      3艇        5件
 
 アエネアスが口を開く。
 『オキテス、ここに書いてある数が営業活動の目標なのかな?』
 『はい、そうです。受注獲得目標が10艇、引き合い獲得目標が12件としています。目標は目標として5割の確実達成をもくろんでいます』
 イリオネスが一同と目を合わせる、口を開く。
 『一同、オキテスが提示した営業活動計画だが、納得したな!この目標のもくろみが達成するよう、各部がオキテスと打ち合わせて事前の準備を整える!いいな』
 『了解しました』
 『始計第一、脚下照顧、一歩前へ!だ』
 アエネアスがオキテスに声をかける。
 『オキテス、今回の展示試乗会に軍団長が同行する。以上だ』
 『承知しました。軍団長よろしく願います』
 『おう、オキテス、よろしくな。それでオキテス、展示試乗会の開催の件の打ち合わせ、諸手配にいつキドニアの集散所に出向く予定にしている?』
 『はい、その件については、準備を整えて、17日に出向く予定です』
 『解った。今日の会議の主題は以上だが、ほかに話し合う打ち合わせることがあるようならば、この場でやってくれ』
 オキテスが手をあげる。
 『おう、オキテス、なんだ?』
 『私の方から提言があります。展示試乗会に出かける前に暦の第一の月の建造計画艇数を指示したいと考えています。これを今月の24日までに決めていただきたい。要望です』
 『おう、解った。今日から数えて10日後だな。この日に打ち合わせの会議を開く。一同、いいな!』
 『了解しました』
 パリヌルスら三人が答える、彼らがオキテスの営業活動の計画について、午前中の時を費やして、話し合う、打ち合わせる。
 彼ら五人は、会所において昼食をともにした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1514

2019-04-11 08:39:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスら三人は、建造に関してアエネアスの意欲的な姿勢の真因はなになのかについて詮索する。
 パリヌルスが二人に話しかける。
 『俺な思うところはだな。建造の事業に民族の半分が携わっている、そのうえ、今年の暦の第一の月を半月後にむかえる。だからと考えられる』
 これを聞いて、オキテスが言う。
 『いや、それもあるかもしれないが、何かほかに統領の背中を押しているといったところがあるように思う』
 二人の思惑を耳にしてオロンテスが口を開く。
 『俺の感じでは、軍団長の対応で俺らがそのように感じているのではないかと感じている』
 これを聞いた二人は、『ホッホウ、感じの感じか。ハッハッハ!』と笑い声をあげる。
 イリオネスから声がかかる。
 『お~い!今日は会議だ、会所のほうへ行く!』
 この声がかりで五人は会所へと向かう、会所には朝食の準備が整っている、一同が席に就く、焼き立てのパンをほおばる、申し合わせたように『うまい!』と言いながら、ほおばったパンを咀嚼する、飲み物を口にする、朝食を終える。
 朝食を終えて一同がオロンテスに声をかける。
 『オロンテス、朝食、ありがとう!旨かった。感謝感謝!』
 言い終わって一瞬、静寂の時が流れる、イリオネスから声がかかる。
 『おう、一同、始めようか。実はだな、昨日のことだが、統領から不思議な声出しを教わった。君ら三人がやってみようと思うなら教える。でないならやめておく。すぐ会議を始める』
 『不思議な声出しですか?軍団長、聞きます聞きます、聞かせてください』
 『いやな、剣合では『ヤッ!』『トーッ!』の気合で打ち込むが、この声出しの効果については定かではない。身体の一部分が奇妙に振動する、震える。それだけだ、これは確かだ。お前ら聞きたいか?』
 『聞きたいですね』
 『よし、ならば、聞かせてやる』と言って、イリオネスは、昨日、アエネアスから聞いた声出しのことを三人に教えた。
 三人が起ちあがる、教えられたとおりに声を出してみる。
 三人が口をそろえて言う。
 『おお~っ!不思議不思議!』
 『オキテス、どんな具合だ?オロンテスお前は?』とパリヌルスが声をかける。
 『あ~~!と声を出したら、胃が体の中で振動する』
 『ん~~!と声を出して気張ったら、頭の中が妙に振動する感じがする』とパリヌルスが言う。
 『オロンテス、どうだ?』
 『何となく不思議だ!』
 アエネアスが『ハッハッハ!』と笑い声をあげた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1513

2019-04-10 06:47:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスを行動に駆り立てる目論見、『成果獲得がなるかならないか、そのいずれでもいい』とオキテスは、目論見を命の燃焼のエネルギー核とする。
 『俺が来場客に懸命に働きかける、周りの者らが動く、戦闘艇、新々艇を彼らに紹介する、二者のウチのどれかを選んで、購入の意思決定をする、発注する。俺はそれを喜んで受ける』その道筋を脳裏に描く。
 展示試乗会開催の意欲が成果目標を明確に掲げることで湧きあがってくる。
 これまでに催行した展示試乗会を振り返る、新たな起ち位置にスタンスして目標を設定して、今回の展示試乗会を開催すると意を定めた。
 その目標の数値を木板に書き付ける、意の決するところを『活動には目標ありき』とする、立案した計画の目論見をじい~っと見つめる。
 『『成果獲得には計画ありき』だな!』で計画の立案作業を終えた。
 
 オキテスは、建造の場の巡回に向かう。
 彼は、船台の場の風景がたまらなく好きなのである、完成途上の艇が5艇が並びたっている、その壮観、そして、建造に携わる者らを目にする、この風景が限りなくオキテスを引き付ける。
 船台の場でドックスと今月の業務の進捗について話し合う。
 『オキテス隊長、今月の建造は新々艇5艇です。作業のはかどりは極めて順調といえます。26日には、全艇の完成を見込んでいます』
 『お~っ!そうか。それは願ったりかなったりだ。ドックス、事情ありきでな、今月の末日から、展示試乗会がスタートする。俺はそれに出かける、10日間くらい留守にする。よろしく頼む』
 『そうですか、解りました。オキテス隊長、出航前に来月の建造計画を指示していただければ幸いです』
 『おう、その件は、了解した。25日までには打ち合わせを終える』
 『解りましたよろしく願います』
 オキテスは、ドックスとの打ち合わせを終える、建造の場を巡回する、計画の原点はここに存在していることを全身で感じとる。
 建造の場の建造用材の木の匂い、製材の鋸引きで発してくる木の香り、作業にいそしむ者らの汗の匂い、それらがかもしだす雰囲気がオキテスの背中を押す、背に荷の重さを感じる、『---ねば』であった。
 終業の頃合いが迫りくる、浜の今日が暮れていった。

 会議開催日の朝が明ける、
 アエネアスら5人が浜で顔を合わせる。
 パリヌルスら三人は、アエネアスのの発する雰囲気に、これまでになかったものを感じ取っている。
 三人の意見は、『近頃の統領は、えらく物事に意欲的だな』であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1512

2019-04-09 07:38:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスにイリオネス、リナウスが加わって三人の会話が始まる。
 『統領と軍団長、今日も見えられましたな。いやね、いま、統領と軍団長の剣合わせが話題になっています。剣合の手本になるといっています』
 『リナウス、考えてみろや、俺らの剣の打ち合い、そんな、うつくしいものじゃない。そのように相手に言ってくれ。今日も彼らが来ているな』
 『来ています。パリヌルス隊長が夕方近くに来るといっていました』
 『リナウス、お前、パリヌルスと立ち会うことがあるのか、彼の剣さばきはどんなだ?』
 『パリヌルスの剣さばきですか、いつも私が相手をするのですが、パリヌルス隊長の剣さばきは、まるで踊るように滑らかに剣の舞ですな、隙を見せて、誘い込む、そして、打ち込む!彼の打ち込みはまるで疾風のように鋭く、速いですな』
 『そうか、それはおもしろい。打ち合ってみたいものだな』
 『統領の剣さばきは、力攻めが感じられます。力みは剣走りを遅らせる。私が予想するには、パリヌルスの2本に対して、統領は1本といったところかな。これは失礼しました』
 『おいおい、リナウス、冗談だろう。俺より格上ということか、まいったな。オキテスの剣さばきはどんなだ?』
 『オキテス隊長の剣さばきは、統領も軍団長も互角といったところですが、チョット違うところがあるのですな』
 『ホウ、どんな具合にだ?』
 『彼の剣さばきは、判りにくいところがありますな。立ち合いの抜き打ちの剣さばきにあります。居合い抜きです。素早くどこを狙ってくるか読めないところがあります。彼の剣が届かないところに立つことですな。抜いてから剣合するです』
 『おっ!そうか、リナウス、よくぞ教えてくれた。あの二人と剣を合わせる時は気を配る』
 二人は身支度を整える、剣合を開始する、裂ぱくの気合でもって剣を合わせる。
 その頃、オキテスは、自分の席場で数枚の木板を前にして計画の立案に取り組んでいる。
 展示試乗会の開催日程を決めて書き付けていく。
 彼が深く考えたのは、展示試乗会の催行の意欲についてである、意欲を沸き立たせるにはどうするか、目に見えない部分である、脳漿をしぼる。
 この時代、現在のようなマーケットという概念をどのように考えられていたかが測り知ることができない。
 彼らは、思いつく浅はかな感覚で対応していたのではないかと考えられる。
 オキテスは、目標とは何ぞやを考える、思考進展の道筋を考える。
 展示試乗会を催行して、その結果をもくろむ。
 『俺はこれをやって、このような結果をものにしたい』
 このような目論見が、この俺を行動に駆り立てていると気づいた。のではなかろうか。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1511

2019-04-08 07:51:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスとイリオネスは、いろいろと語り合い、話し合い昼食を済ませる。
 『統領、ヤット―!に行きましょうか』
 『おう、ヤット―!か、行こう。イリオネス、気合もなんだけど、面白い声出しを教えてやろうか』
 『面白い声出しってなんですかな?』
 『俺の言うように 声を出してみろ。身体の一部分が振動する、痛みがあれば痛みが消え去る、体の動きが快調となる』
 『統領、まゆつばものでしょう』
 二人が起ちあがる、足幅を肩幅くらいに広げて自然体に立つ、二人が目を合わせる。
 『やるぞ!息をすえ!声を出すぞ!』
 アエネアスが声を出す。
 『あ~~! この声出しで胃が振動する。お~~!この声出しで胸が震える。ん~~!この声出しで頭の中が振動する』
 イリオネスが声出しをやる。
 『あ~~!』『お~~!』『ん~~!』
 三声を渾身の力を込めて声に出す、イリオネスは、かすかに不思議を体感する、頭をかしげる、納得できない、続けて、繰り返す、二度三度、実感する。
 『統領、実感します。不思議ですな。震えを感じました』
 『よかったな。俺の言うことを信じたかな。痛みが消えるは信じられないが、剣合で痛みを感じたときにやってみている』
 『信じます、信じます』
 二人は会所をあとにする、武闘訓練場へ向かう、歩を運びながら言葉を交わす。
 『ここ数日、統領とこうして、剣を合わせていますと、剣さばき、剣走り、勘働き、さばきの速さが身についてくるのが解ります。先日の決まり手は、後の先をとっての打ち込みが決まったのですな』
 『そうか、俺はお前と剣を合わせることで心が練れてきている。心機の整いまで、あと一歩というところに来ている』
 『心の練りですか、うなづけます。ここ数日の始めのころとは、剣の打ち込みの筋が違ってきています』
 『そうか、俺自身では不明の領域か』
 『私は始めは受けにまわっていましたが、統領の剣さばきが、私の剣を力で抑え込もうといった剣さばきでした。剣は刃物です、切れ物です。私は思いました。今に見ておれ、俺の剣で統領をめった切りしてやると考えていました』
 歩きながらアエネアスとイリオネスが顔を合わせる、イリオネスが話し続ける。
 『私はここで自分のいたらなさに気づきました。統領の剣さばきが私の一歩も二歩も先をいっていることに気づいた次第です。私自身の心構えのいたらなさを感じました。恥ずかしかったですな』
 『俺をヨイショするな』
 『これからは統領の剣に従って、自分の研鑽ををしなければと心に決めた次第です。よろしく願います』
 『そうか、互いに思うところの一歩手前にいて、剣を合わせている!そんな感じか』
 『そうですね。統領、よろしく願います。私の思いあがりの部分を打ちのめしてください』
 『承知した、イリオネス。この剣合でもって、互いの目標の目指すところへ到達するということだな』
 『そうです。互いに研鑽して目標に到達ということです』
 『おう!了解!』
 武闘訓練場に着く、二人の話が終わる、リナウスが二人を迎えてくれた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1510

2019-04-05 08:44:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、身を硬くする、一同と目を合わせる。
 『はい、いま、たずねられた件については誰とも話し合ってはいません。これについて私が答えると、それは私の推測の域を出ません。彼らの要望として伝えれるのは、暦の始まる第一の月に展示試乗会をできるだけ早く開催するようにと言っています』
、『そうか、彼らに何か思惑があるように感じられるな』
 『展示試乗会の開催にとても積極的です』
 『ホウ、そうか。それで、オキテスとして、展示試乗会の開催をどのようにしようかと考えている?』
 イリオネスがオキテスに声をかける。
 『オキテス、お前に腹案があるなら、この場で言ってくれ』
 『その件については、エドモン浜頭、マリアのダントス所長とも話し合いました。それをうけて、帰りの船の上であれこれ考えました。それについて話します』
 『おう、それでいい。話してみてくれ』
 『当月末にキドニアの集散所での展示試乗会開催をかわきりに、暦の始まりの第一の月の10日までに全箇所において展示試乗会を開催しようと考えています。ここ一両日中に計画をまとめあげ、キドニアの集散所と打ち合わせて催行日等を各所に通達、連絡しようと考えています』
 『ホウ、そのような腹案を持っているのか。了解した!一同、今、オキテスの話を聞いて、パリヌルス、お前の考えは?』
 『オキテスの考えている展示試乗会の開催計画に私は賛成です』
 アエネアスが口を開く。
 『おう、いいではないか。これはオキテスの実行計画が最優先される事案だ』
 イリオネスがオキテスに声をかける。
 『おう、オキテス、早速、営業活動計画を立案してくれ。決定次第、それに対応して、我々の活動計画も決まる。そういうことだ!』
 『解りました』
 『おう、オキテス、営業活動計画だが、立案にいつまでかかる?』
 『今日中に仕上げます』
 『解った。明日、会議を開く。パリヌルス、オロンテスにその旨、伝えること』
 『了解しました』とパリヌルスが答えて、打ち合わせを終える。
 イリオネスが太陽の位置を確かめる、昼食の頃合いが近づいている。
 パリヌルスとオキテスが自分の持ち場へと戻って行く。
 アエネアスとイリオネスは、船舶事業について、いろいろと話し合う、オキテスのもたらした情報についても話し合った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1509

2019-04-04 07:18:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『受注に転じた引き合いの艇種は、戦闘艇か、新々艇か?』
 イリオネスの問いかけにオキテスが答える。
 『はい、受注に転じた引き合いの艇は、2艇とも新々艇です。イラクリオンが1艇、マリアが1艇です』
 『解った。次は、新しい引き合いについてたずねる。引き合いの艇種は?』
 『はい、戦闘艇が1艇、新々艇が5艇です。レテムノンが新々艇が1艇、イラクリオンが戦闘艇が1艇と新々艇が2艇、マリアが新々艇が2艇の合計6艇です』
 『ほう、新々艇の引き合いが多いのか。なぜ、新々艇なのか、そのあたりの事情について、相手方と話し合ってみたか?オキテス』
 『はい、イラクリオンのエドモン浜頭とそれとなく話し合ってみました』
 『エドモン浜頭とな、それで』
 『浜頭の話では、クレタ島における船舶を所有しての事業者の営業規模に関係があるように言っています。そのうえ、彼らが使用する船が、彼らが営む事業に最適の大きさの船がなく、彼らの要望を満たしていないといっていました』
 アエネアスがうなづく。
 『ホッホウ、新々艇に要望が集まるのは、そのような事情によるのか。ものを造って売る、いろいろな事情がある。そのあたりをよく知ってもの造りをやらなければならんということか、そうであろうな』
 イリオネスが答える。
 『いま、統領が言われたことがもの造りの大事な点ですな』
 『このような事業をやっていくには、このあたりのことを熟知してものを造ることが大事なのだな』
 『そのあたりを熟知して、業務をやっていく、しくじり、失敗を避けて仕事をやり遂げれる』
 『おう、オキテス、すまんすまん。話がチョット横にそれた。その今回、発生した引き合いについてたずねたい』
 『と言われますと、どういうことですかな?』
 『これまでの引き合いと今回の引き合いだが、展示試乗会を催行したわけではない。引き合いの発生にどのような違いが感じられるかだが?』
 アエネアスが口を挟む、声をかける。
 『これまでの引き合いは、船を試乗してみての引き合いだが、今回の引き合いは、試乗をしてみての引き合いではないわけだ。これまでに試乗をしてみたことによる引き合いか?また、今後において、試乗してみたうえで引き合いを発注するか?』
 アエネアスが間をとる、話し続ける。
 『そのあたりの観測をどのように感じている?引き合い発生の状況をどのように推測しているかを話してみてくれ』
 オキテスがアエネアスと目を合わせる。
 『はい、難しい質問ですね。いま、言われたことについて考えたこともありません。私として答えがたいことです』
 オキテスは、返答に戸惑った。