『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1508

2019-04-03 07:26:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜の朝が明ける。
 陽射しに暖を感じる、朝行事で浜がにぎあう、彼らがオキテスの無事の帰着を知って安堵する。
 アエネアスとイリオネスが浜に立っている、顔を合わせる者らと交わす朝の挨拶、アエネアスは、彼らに気づかれることのないように気を配って、彼らの健康状態をチエックしている。
 彼の意識の中には、民族の活性は、彼らが健康であってこそなのであると認識している。
 彼は、彼らを大切にしている、アエネアスと民族との絆の紡ぎ具合といえば、アエネアスはすべての民族のひとりひとりのためであり、民族のひとりひとりがすべての民族ためであるとの気概で生きているという心情を持っている。
 アエネアスがイリオネスに声をかける。
 『おう、イリオネス、見たところ皆、元気そうだ!俺は安堵している』
 『そうですか、それはよかったですね』
 顔を合わせたイリオネスが声をかける。
 『統領、ところで私は、どうですか?』
 『おう、すこぶる元気そうだ!重畳!』
 二人は浜をあとにして、会所に向かう、朝食を済ませる。
 『今日も食べるものがとてもうまい!人間は、健康でなくちゃいけない。身体が健康であれば、その体が持つ心も健康であるといえる』
 『言えてますな、その通りです。身体が健康でないと言うこと、やることが健やかでありません』
 『今日は健康談義だな。昼前はしっかり仕事して、昼から武闘訓練場に行く』
 『解りました。そのように対応します』
 パリヌルスが来る、少々の間をおいて、オキテスが姿を見せる。
 『おう、営業活動航海ごくろうであった。無事の帰着航海、心配り大変であったろう』
 『はい、心配りありがとうございます。営業活動航海も昨年の9月から指折り数えて、回数も今月で7回にもなります。慣れもあります。各地各所の天候、海上状況もわかってきています。安全航海要領も心得てきています。安心してください』
 『おう、そうか。慣れもあるかもしれないが、慣れてくると人間、欲もかくようになる、そこに危険がひそんでいると心得ることが大事だぞ』
 『ちょっとだけ欲をかいて、うまくいく。人間、欲が深いですから、そのあたり気を付けています。自制行動を心がけています。同行している一同をそのような危険に合わせたくありません』
 『お前、なかなかいい心がけだ』
 一同が顔を合わせて安心談義を交わす。
 オキテスが姿勢を改める。口を開く。
 一同と目を合わせる。
 『営業活動航海の成果及び状況を報告します』
 『おう、聞く聞く!話してくれ』
 一同が姿勢を正す、場がシーンと静まる。
 『引き合いから発注に転じた受注が2件、新たな受注は、このたびはありませんでした。引き合いが発生しています。件数が6件に及んでいます』
 その報告を聞いて、イリオネスがオキテスに問いかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1507

2019-04-02 07:02:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、事の運びを慎重にやろうと努めている、クレタ島離脱の知的作業が最終段階に来ている、薄氷を踏む思いで進めている。
 次のステップは、情報収集のためにテカリオン来訪を待っている。この想いがテカリオンに伝わるかどうか、一日に二、三度は彼への想いを発した。
 この時代の遠隔通信は、思念伝達テレパシー通信である、通じるも通じないも結果みての判断である。
 アエネアスの心理状態は、先日のイリオネスとの手合わせ以来、平常状態を保っている。
 考えを進める先をはばむカオスの雲霧は気にならなくなってきている。
 自分の想い、考えが進捗することによって、雲霧が自然に消滅するであろうと気にならなくなってきている。
 クレタ島離脱の航海に就く、そのことに関する迷いはすでに消えている。
 その行動を起こすための情報を収集して、ネクストステップに歩を進める、そして、三番目のステップと四番目のステップの処理を終えればクレタ島離脱に出航できる。
 彼は、事の成り行き、そのタイミングの的確処理が事の成否を確かなものにしてくれると信じて事の対処段取りに努めている。
 このステップまでに進捗した彼は、ただただひたすらにテカリオンの来訪を待ちかねた。
 
 オキテスが帰ってくる日の朝が明ける、浜の一同がオキテスの無事帰着を待っている。
 昼が過ぎる、まだ、オキテスらの船影が沖に見えない、彼らは、ただひたすらに待っている。
 オロンテスもキドニアから帰ってきている、今日の業務の終了の頃合いとなる。
 2月期も中旬の頃となると、日足の伸びを感じる、日が少々だが長くなったと感じる、宵の時間も長く感じる。
 暮れなずむ海の彼方、沖に2隻の船影が目にとまる、浜にいる見張り番が駆けだす。
 アエネアスもイリオネスもパリヌルスもオロンテスもドックスも会所に詰めている、見張り番の報告を受ける、一同が浜へ向けて走る。
 『おう、パン工房に行ってくれ!セレストスに伝えるのだ!オキテスの船が着いた!浜に夕食の準備をしてくれと伝えてるのだ、急げ!それだけ言えばわかる』
 イリオネスは知らせを持ってきた見張り番をパン工房へと走らせる。
 浜には、オキテスらを迎える体制が整う。
 2隻の艇は、数本の松明を灯して、宵の海上を浜を目指して波を割ってくる、ほどなく、指呼の距離に近づく、彼らが浜に着いた。
 アエネアスらがオキテスらを迎える、無事の帰着を確かめる。
 『おう、オキテス!無事であったか?一同はどうか?』
 『はい、統領!一同、無事の帰着です。安心してください』
 『お~お、安堵していいのだな。ご苦労であった』
 イリオネスが声をかける。
 『おう、オキテス、ごくろうであった。暖かいとは言えないこの時節、遠路の航海ご苦労。夕食の支度が出来ている。一同とくつろいでくれ』
 傍らにいるセレストスに声をかける、セレストスがオキテスと彼ら一同を整えた夕食の場に案内する、場には焚火のシマが四つ造られ盛んに炎を上げて燃えている、一同が場につく、身と心を落ち着ける。
 オキテスが一同の航海の労をねぎらう言葉をかける。
 場にはアエネアスらが臨場して、一同の無事に安堵しながら、彼らの労をねぎらう。
 深更に到って、彼らの今日が終わった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1506

2019-04-01 06:50:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが首をかしげる、アエネアスの心情をはかりかねる。
 アエネアスは、思考の一山を飛び越える、飛び越えた山の先には新たなカオスの雲霧の壁がアエネアスの行くてはばんでいる。
 『いずれ踏み破る!』
 目前の混沌を払いのけたアエネアスの心の中には、確固たるマインドが出来ている。
 彼は歩みの一歩を確実に前へ進め、新たな起ち位置に起っている、脚下を確かめる。
 『この雲霧をかき消すのに何が要る?』
 彼が欲しているのは西へと波を割る海洋の彼方の状況情報である。
 彼の暗中模索は終わり、心中の羅針盤の針は進むべき方向を的確に指示していた。
 アエネアスは、自信の確固さを持って立ちあがる、二人は、会所へと戻る。
 顔を合わせる、テーブルを挟んで腰を落ち着ける、声をかける。
 『なあ~、イリオネス、お前のあの一撃は効いたな。心の目のウロコがはがれて落ちた。俺を目覚めさせてくれる一撃であった。今、思っても冴えた一撃であったな。目の前のモヤモヤが消え失せた。一瞬に前方がスッキリした状態で見えた』
 『そうでしたか。それで統領の返しの一撃が決まったわけですか。あの一撃は見事な決まりでした』
 『そういうことだ。ありがたかった』
 『それで、あの一言の礼言葉だったのですか』
 『俺にとってありがたい、お前の一撃だった。やられて霧が晴れ、その霧が晴れての一撃が決まる、俺に取って快心の一事であった』
 二人は、うなづき手を握り合った。
 短い言葉をやり取りする。
 『俺にとって、お前がいなけりゃだ!』
 『私にとって、統領がいなけりゃです』
 二人は目を合わせる、微笑みを交わす、うなづき交わした。
 修羅の中にこそ、二人を強く結びつける太い信頼の絆が存在していたのである。
 イリオネスがアエネアスを理解する。
 アエネアスは、イリオネスが整える起ち位置にスタンスする、状態状況を的確に把握する、その対応対処に錯誤を生じることは皆無だといえる、互いの信頼感がそこに存在していた。
 『統領、予定では、明日ですが、オキテスが営業活動の航海から帰着する日です。この時節としては天候が落ち着いていました。しかし、彼我の海域については、はかりしれません。彼の業務が順調に言ったであろうと考えてはいますが、帰ってきて顔を見るまでは何とも言えません』
 『解った。了解した。それに対応する。今年の暦の始まる第一の月のこともある。俺なりに考えている事まあるそれによって対処を考える。これからの一か月はくらいは、俺の決める段取りで日常の業務を進めてほしい。そのように頼む』
 『解りました。その旨をパリヌルス、オロンテスにも伝えておきます』
 『おう、頼む!』
 アエネアスは、心に決めている決意の一端を伝えた。