『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 5

2019-11-15 08:29:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団の一同は、船の揚陸作業にとりかかる。
 オロンテスがパリヌルスに声をかける。
 『おう、パリヌルス、このあとどのように船旅の航海を続けていくか。気にかけている、明日、この浜で休むということになればだな、2日分くらいのパンを焼いておきたいと考えている。浜で火を使うわけだ。その件について、浜頭の承諾を得たい。話をつけてくれれば助かる』
 『解った!明日、アサイチで浜頭と話し合ってくる』
 『おう、よろしく頼む!』
 パリヌルスは、揚陸した船の船体をオキテス、アレテスとともに見て廻る、オキテスが二人に話しかける。
 『おう、貝がビッシリとくっついているかと思っていたが、そうでもないようだ。考えていたより少ない。全員総がかりで明日午前中の作業としてやろう』
 『おうっ!了解!』
 『オキテス、指示、監督のほうを頼む。明日のことだが、オロンテスがパンを焼きたいといっている。これは優先業務だ、明朝、火を使う承諾を貰いに行く』
 『解った!』

 浜頭と話し合いを終えて戻ったアエネアスとイリオネスは航海について話し合う。
 『統領、しかし、あれですな、全く知らない海を行く、状況も全く解らずに海旅を続けているわけです。ピユロスで統領が手に入れられた航海図と紹介状で今日の停泊がうまくいきました。全く幸運が幸いした状況です。次もうまくいくとは言い切れません。これが船団を統率していく者の務めだといえば、そうですが、暗闇の中を一歩先にある危険物に気づかずに歩を進めることと何ら変わりがありません』
 『おう、イリオネス、全くお前の言う通りだ。この航海は向こう見ずの暴挙と何ら変わりはない。俺もそのように考えている。しかし、俺にとって、何としてもやらなければならないことなのだ。考えつめて、如何なることがあろうともピユロスでやったやり方で航海を続けるよりほかに手はないと考えている。心もとないが仕方がない、あの策を講じて旅を続けようではないか。その労苦を惜しまないでくれ』
 『解りました、承知しました。そのように勤めます。しかしですな、かっての敵である国の海域の海岸線に沿って旅を続けていく、その危険を考えると肝っ玉が縮みあがるのを覚えます。たとえ屈強の者らを引き連れているとはいえ、危難を避ける事が大事です。海岸の迫った狭い海峡を通過しないように気を配った配慮して航路を決定して航海をする。それが肝要です。うまく言えませんが、そういうことです』
 『おう、了解した。お前の言ったことに留意して決定していく。多少の困難、苦難を覚悟した航海だ。そう簡単に最適の建国の地!国家幾千年の建国の地だ、簡単にそんな地に行きつけるとは考えていない!しかしだ、この俺を建国に導いている力を感じている。そのために俺の一命がある。イリオネス、望みは、必ず達成する。これは俺に見えている。信じて行動を共にしてくれ』
 アエネアスは、信不退の強固な決意を強烈に短い文言でイリオネスに伝えた。

[Aeneis's story] episode Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding of a nation  第1章  イピロスへ  4

2019-11-14 06:05:24 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 支度を整えたアエネアスら三人は、浜頭の許へ出向く、三人を迎える浜頭。
 アエネアスが話しかける、アエネアスの言葉がけには気取りがない。
 『やあ~、浜頭殿、私ら船団の者らを休ませるのに浜を貸していただける、ありがとうございます。見るからにいい浜ですな!私がこの船団を率いているアエネアスといいます。私らは6日前にクレタ島を出航して、西に向けて旅をしている者です。陸地のあり具合で沿岸に沿って航海しているわけでイオニア海を北上しています。ついては空模様の関係もありますが、今夜と明日1日、明夜、浜頭殿の浜で休ませてもらえれば幸いなのです』
 アエネアスの長口舌、ここまで言って、親しげに浜頭と目を合わせる。
 イリオネスに声をかける。
 『イリオネス、持参したものをくれ!』
 持参したものを受け取って、アエネアスが浜頭のほうへ体を向ける。
 『これは私らが焼いて作っている『堅パン』なるものです。皆さんで食べてください。そして、これは私らが浜を使わせていただく礼金です。受け取ってもらえば幸いです。ギリシアで通用しているドラクマ銀貨です』と言って、銀貨を入れた皮でできた小袋を浜頭に手渡す、受け取る浜頭が口を開く。
 『私がこの辺り一帯の浜の差配をしているレガントです。ピユロスのトーバル浜頭とは懇意にしています。このところ会ってはいませんが、元気にしてましたか?アエネアス殿、心遣いの品、頂戴します。また、これは、『礼金』といわれましたな、私が受け取るということで心おきなく浜を使われるということでもらい受けます。アエネアス殿の厚意を喜んでいただきます。ありがとうございます。浜を使ってください。また、入用なものがあれば言ってください。私らが持っているものであれば用意いたします』
 浜頭がアエネアスに向けて手をさしのべる、その手をシッカリと握るアエネアス、二人の意が通じ合う、初対面である二人の心が融け合う、続いて、イリオネス、パリヌルスとも手を握り合う。
 イリオネスが浜へ船を揚陸して貝殻落とし等の整備作業をしたい旨を浜頭に伝えて話し合いを終える。
 イリオネスがパリヌルスに声をかける。
 『おう、パリヌルス、オキテス、オロンテス、アレテスに事の成り行きを伝えておいてくれ。オロンテスのほうに作業計画があるようであれば対処してくれ。船の整備の件は、お前の責任対処だ。いいな』
 『了解しました』
 船に戻ったパリヌルスは、オキテスら三人を呼んで事の成り行きを伝えて、船の揚陸を指示した。

[Aeneis's story] episode 4th 『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 3

2019-11-13 04:28:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 頃合いが幸いして、容易にトーバル浜頭が紹介してくれた浜頭と会う。
 紹介状に目を通す浜頭、船団の意図を話すイリオネス、停留を承知してくれる浜頭、イリオネスら三人を停留に使用する浜に案内する。
 『この浜一帯を使って休まれるがよかろう』
 『そうですか、ありがとうございます。迷惑をかけることはないと思います。よろしく願います』
 『判りました』
 イリオネスは、紹介状の効果をありありと感じる。
 船に戻ったイリオネスは、二番船にいるアエネアスに事情を報告する、状況を理解するアエネアス。
 『軍団長、事情は理解した。そこでだが、どうする?明日1日を休息日とするか、否かだ?』
 『そうですなーーー。統領の思惑はいかがですかな?』
 『俺は、今、俺の務めについて考えている。それにはどうするかを思案している。俺の課題は、次の航海の見通しである。ちょっと考えさせろ!お前、先ほど紹介状の効き目云々と言っていたな』
 『そうです。今回は、トーバル浜頭の紹介状の効果が絶大でしたな。あのような効果があるとは考えていませんでした』
 『おう、よしっ!解った。考える。ところで、お前、その紹介状に目を通したのか?』
 『いえ、通してはいません』
 『俺の思案が決まったら呼ぶ』
 『解りました。私は、船に戻っています。決まったら呼んでください』
 『おうっ!考えがまとまったら呼ぶ。呼んだら、お前もパリヌルスも帯剣してきてくれ』
 『了解しました』
 イリオネスは、一番船に戻る、パリヌルスに声をかける。
 『おう、パリヌルスどうだ?明日のことだが、航海に及ぶか、休息するか、統領の判断待ちだ。声がかかったらすぐに行く、帯剣していく、いいな』
 『解りました。この浜は、浜の状況から見て、船を浜に揚げやすいと考えられます。船を揚陸して、船底についた貝殻を落とそうと考えています。どうするかを考えてください。また、明日の天候も気にかけています』
 『おう、了解した。今日の航海は、風向きがよくなかったな。漕ぎの連中が苦労していたな』
 アエネアスは、浜頭とは顔を合わせていない、いかなる人物かと考える。
 次なる航海について熟考する、先が見えていない、考えがまとまらない、安心航海で先へは進めない、体全体を使って考える、彼はイリオネスとパリヌルスを呼ぶ。
 二人が剣を腰に帯びて姿を見せる。
 『おう、イリオネス、明日はこの浜で休息する。即、浜頭と会う!段取りしてくれ。ドラクマ銀貨は50個ほどでいいと考えている。お前の考えは?』
 『それくらいでいいのではと考えられます。解りました』
 イリオネスは、三人で浜頭と会う支度を整えた。

[Aeneis's story] episode 4th 『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 2

2019-11-12 05:54:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団の進む方向、左手、西の方角の海域には島の存在を見ない、広大な海原の広がりが見える、右手方向には北方向にのびる海岸線が緩やかに湾曲している。(現在のキバリア湾の海岸線である。湾曲して伸びている距離は約70キロに及ぶ)
 船団は、漕ぎかたを交替させて船速を維持して進み行く、太陽が西の海に沈みゆく頃合いには、進行方向の彼方に岬を、そして、左手斜めの彼方、北西の方向に島を見る地点に到達していた。
 船団は、洋上に船を停める、パリヌルスがイリオネスに声をかける。
 『軍団長、今日の停泊予定地点に到着です』
 二人は、沿岸を眺める。
 『軍団長、一見、何もない浜のようですが?』
 『おう、そうだな!今の我々は騒動を起こしたくはない。もう少々岸によって、洋上停泊とする』
 『判りました。そのように体制を整えます』
 パリヌルスは、今夜の天候状況を推し測りながら決断する。パリヌルスが二番船のオキテスに声をかける、洋上停泊を伝える、順次、四番船まで通達が届く、4隻の船が停泊に安全であろうと考えられる離岸地点に船べりを寄せる、
停泊体制を整える、波は静かとは言えない、船べりを寄せ合った船団を揺り動かしている、落ち着かなかった。
 各船に軍団長と打ち合わせた明日の航海要領を伝える、彼らは、状況を甘んじて受けて洋上停泊を営んだ。

 船団の者らは、キバリア湾の洋上で朝を迎える。
 パリヌルスが目覚めて空を仰ぐ、星が見えない、雲が空を覆っている、ペロポネソス半島からの風を感じる、今日の天候を推測する、出来るだけ早い出航を決断する。
 その旨をイリオネスに告げる、今日の航海要領を打ち合わせる、決めた航海要領を各船に伝える、船団が停泊地点から海を割り始めたのは陽の出前であった。
 パリヌルスは、船上の者らに天候の危惧具合を話す、目的地を伝え航海要領を説明する。
 『おうっ!』漕ぎかたらから返事が返る、北西方向に見える島へと船が波を蹴る、目指す島はイオニア諸島の連なりの南端の島、サギントス島である、その島が南方向に向けて開いている大きいとは言えない湾口に向けて船団が進む。
 海上は、南西からの風がやや強めに吹いている、航走に難儀する、予定の頃合いを少々過ぎて目指した浜に到着する、着いた浜は紹介状の浜頭の浜ではないらしい。
 パリヌルスが船を下りて浜にいる人にたずねる、その浜頭の浜はこの浜続きの東の浜であるという、船団は、浜頭の浜をたづねて移動する、なんとか目標の浜に着く、碇石を沈める。
 パリヌルスがイリオネスとオキテスを同道して浜頭を訪ねる、頃合いは午後の半ばを過ぎていた。

[Aeneis's Story] episode 4th 『建国の地へ』  To the funding of a nation.   イピロスへ  1

2019-11-11 06:19:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスの船団は、クレタを出航して、4日目の朝をピユロスで迎える。
 スダヌス浜頭が紹介してくれたピユロスの浜を取り仕切っているトーバル浜頭は、アエネアスらに親切であった。
 トーバル浜頭は、次の停泊に最適と考えられる停泊地とそこに到る航海図と知り合いの浜頭への紹介状をアエネアスに提供してくれる。
 『アエネアス統領、この海岸線に沿って、1日の航海で行き着くところ辺りで停泊されるといいですな』(現在のペロポネソス半島西岸のSpiantza辺りと考えられる)と言って目を合わせる、トーバル浜頭が話し続ける。
 『その辺りには、知り合いの者はいません。この紹介状の浜頭は、その行きついたところから西北にある島の浜頭です。その停泊した地点から北西方向に半日余りをかけて海を渡り、そこで一時の休息をとられたらよろしかろうと思います。これがそこに行く航海図と浜頭にあてた紹介の木板です。持参ください。航海の無事を祈ります』
 『おう、浜頭殿、この親切心に沁みる。ありがとう。心から礼を言います』
 アエネアスは、ピユロスを出航する際にイリオネスとパリヌルスにその紹介状と航海図の2枚の木板を渡して、航海に関する詳細について打ち合わせをする。
 彼らは、航海に関して極めて慎重に対応している、航海の海域は、ギリシアはトロイ戦役の敵性の国であり、その敵性の海域を行くわけである。
 彼らに幸いしたのは、このイオニア諸島の海域を北へと航海するに及んで、オデッセウスの領国であるイタケ島を除けば、彼らにとって敵性の者らがいない島なのである。
 そしてこの時期、オデッセウスは、まだ、自分の領国であるイタケ島には帰還していないことである。
 
 アエネアスの船団がピユロスの浜を出航したのは、陽の出刻を少々過ぎたころである。
 今日も天候に恵まれている、航海に支障をきたす空模様ではない、海は凪ぎ状態である、船団は、穏やかな海を割って北へと進む。
 一番船の船上では、今日の航海の詳細を打ち合わせている。
 『パリヌルス、解ったな!』
 『了解しました。沿岸との距離を適度に保って北へと進路をとっていきます』
 『何かがあれば声をかけてくれ。進む海はかっての敵性の領域であり、海域だ。それを肝に据えて行け!』
 『解りました』
 船上では、漕ぎの律調を促す木板を打つ音が響く、漕ぎかたらが懸命に漕ぐ、船速を保って北へ北へと船団が進む。
 太陽が南中する頃合いには、ペロポネソス半島の西岸南部、キバリア湾の南部に位置するキバリアの沿岸を右手に見てとれる地点に到達していた。

『AENEIS'S STORY』 の投稿をスタートさせます!

2019-11-10 08:30:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
           正式なタイトルはまだ決めてはいませんが、明11日より『トロイ蚊帳の落人』の続編を投稿してまいります。
                      
                        何卒アクセスしてお読みいただければ幸いです。
                          
                                山田 秀雄