伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

誤解を与える「選挙に圧力」の記載

2021年08月22日 | 政治
選挙運動期間は公示日から投票日前日まで

 8月29日告示、9月5日投票でいわき市長選挙が行われる。公職選挙法は、選挙運動をできる期間を、選挙の公示(衆院選、参院選以外は告示)日から選挙期日(投票日)の前日までしかできないとしている。来るべきいわき市長選の場合、選挙運動ができるのは8月29日から9月4日の間ということになる。

 つまり、市長選は目前に迫っているものの、現時点では選挙運動はなされていない。もし、選挙運動がされているとするならば、そのこと自身が公職選挙法に違反することになり、「圧力」云々という以前の問題になる。その意味で考えれば、とても不思議な見出しなのだ。


告示日以前に選挙活動?

 本文を読んでみると、最近、街頭でよく見かける連名ののぼり旗をめぐる問題について書かれていた。

 特定の人物ののぼり旗がある地域から消てしまったたために、「選挙妨害と見て慎重に取材を進めた」結果、別の人物が「選挙活動に圧力」をかけたことに原因があるとして、この行為は「『選挙の自由妨害』とみられる行動を起こしたものと思わざるを得ない」などと書いてある。

 ここに書かれていた「圧力」云々が事実かどうかは分からない。私は、この筆者に、特定の偏った情報をもとに、私自身が〝取材〟されることもないまま、事実をにおわせる、あるいは、ほぼ事実を違えた情報を垂れ流す文章を配布されたことがたびたびあった。それだけに、この筆者の各文章をうのみにできないと思っている。

 その垂れ流し情報の中には、選挙告示前に公選法違反の活動をしていたというものもあった。このため、私は、筆者が政治家の活動に対しては、公職選挙法を含む厳しい視点を持っているものと思っていた。

 ところが、このチラシをみると、告示日前の〝選挙運動〟を認識しながら、そのこと自身は何ら問題にしていない。それどころか憲法が保障する「選挙の自由の妨害」だという。

 とすると、告示(公示)日前の選挙運動を禁止した公職選挙法は憲法違反なのだろうか。。


公示日以前は政治活動

 しかし、そんなこと言ったって、告示(公示)日以前から選挙運動しているじゃないかと疑問に思う節はあるだろう。

 たしかに、来たるべき選挙に立候補の表明をした方は、告示(公示)日前から政治に対する見解や、実現をめざすべき政策などを届ける活動を始めることが普通だ。

 今回の市長選挙を前にして、政策のビラが折り込まれているし、インターネットにも政策等を目的とした広報や動画が流布している。しかし、これは、あくまで政治活動であって、選挙活動とは区別される。

 告示(公示)前に掲示されるポスターや、配布されるチラシなどをよくみれば、その違いが分かる。告示前のチラシ等の記載に、「候補者」「支持をお願いします」等、選挙にかかわる記載はされない。選挙の事前運動となり規制の対象になるからだ。政治活動は、広義には選挙活動を含むようだが、日常にできる政治活動は選挙活動を除く政治活動とされている。


連名のぼり旗は政治活動

 折り込まれたチラシが問題にする連名ののぼり旗も同じ政治活動とみなされるようだ。

 一般に、個人の名前を単記で記載したのぼり旗は認められない。これは選挙の公示前か、公示後かに関わりはない。

 公職選挙法では、氏名を記載した看板は、後援会事務所と政治活動用と、サイズの規制をした上でそれぞれ6台設置できることにしている。つまり、個人名を記載した看板は合計12台しか設置できない。設置する際には、設置場所等を届け出て、証紙を添付した上で掲示しなければならない。個人名を単記で記載したのぼり旗は、法が認める12台には含まれないので、掲示することができない・・こんなところが理由だったと思う。

 連名のぼり旗は、個人名単記ののぼり旗とはみなされず、演説会を告知する連名ポスターと同様にみなされるという。

 一般に氏名や顔写真を記載したポスターには、立候補を予定する1人だけの氏名と顔写真等を印刷したポスターと、立候補予定者を含む2名以上の氏名や顔写真が印刷されたものがある。

 1人だけの場合は、告示前6カ月を切ると張り出すことができない。張り出し済みのものもはがさなければならない。

 しかし、演説会の告知ポスターはこの限りではない。立候補予定者の氏名等が印刷されていても告示前6ヶ月以降も、張り出すことが可能なのだ。ただし、記載に制限がある。記載される弁士を2名以上の連名とし、スローガンなども含め紙面上でそれぞれの要素を同等に扱うなど一定の形式を満たす必要がある。

 連名のぼり旗もこの連名ポスターと同じに扱われるという。選挙管理委員会が4年前に示した見解だ。

 従って、現在、市内各地に掲示されている連名のぼり旗は、政治活動として張り出されていることになる。選挙活動とは別物だ。

 もし、連名のぼりを妨害する行為があったとするなら、それは「選挙妨害」ではなく、憲法21条に規定される政治活動の自由を妨害したことになると思う。

 まあ、選挙活動の自由も、政治活動の自由も、憲法に規定された国民の権利なので、これを妨害することは、どちらにしても問題がある行為ではある。しかし、これらの関わり人に伝えようとするなら、そこは正しく表現することが必要だろう。


今でも憤りを覚える連名ポスタの思いで

 ところで、連名ポスターには、今でも憤りを覚える思い出がある。

 5年前のいわき市議選時の時の体験だ。この選挙に向けて、私は共産党の候補者となるべく選挙準備を進めていた。

 その準備の過程、つまり政治活動で、共産党の地区幹部らが、この連名のぼりを作成し、使用するよう指導するという事態があったのだ。

 作成をすすめていると知らされた時に私は、氏名記載ののぼり旗は認められないとされていることから、作成する必要がないし、作成したとしても使用しないと、当時の地区幹部に明確に伝えていた。

 しかし、ある日、事務所前に連名のぼりが掲げられていた。留守にしている最中に、選挙支援に入っていた県委員会の幹部が持ってきたと聞いた覚えがある。自分自身の手で撤去し、地区間部に抗議したことはいうまでもない。

 共産党が全国の地方選挙でやっていたらしく、アドバイスを受けて作成したようだ。しかし、連名ポスターが認められるかどうかを、選挙管理委員会に問い合わせることもなかったようだ。いや、問い合わせする気もなかったろう。選管が「だめ」というと、使用することが出来なくなるからだと思う。

 産党の選挙ではよくあることだが、共産党の経験で、よそでやっていて問題にされなかったから、ここでもできるという観点から行われる政治活動がある。連名のぼりもその一つだった。

 連名のぼりが認められるという見解が公式に示されたのは、4年前の市長選挙だった。ある陣営の問い合わせに、選管が問題ないとの回答を示し、その後、問題なく使用できるようになったようだ。

 共産党にも「ある陣営」のような対応が求められるだろう。

 それにしても、使用をしないと明確に伝えたにもかかわらず、事務所に持ちこまれたあの時のいやな気持ちを思い出すと、今でも憤りが湧いてくる。


候補者間が自由に議論できる公職選挙法こそ

 私は、今の公職選挙法が最も良いものだと思ってはいない。運動に対する規制が多すぎて、政治家をめざす者同士の自由な議論の場が狭められていると感じている。

 その結果、それぞれの政治家がの主張内容を検証するための議論はとぼしく、いきおい、どの人も似たような主張をするようになり、選択が難しくなる。

 私は、選挙の投票率の低下は、こうした点に問題があり、規制法である公職選挙法がその問題の一端を持っているのではないかと思っている。

 以前、選挙運動に関して市議会で一般質問をしたことがあるが、この時にも同様の観点から選挙管理委員長と意見交換をしたことがある。関心があれば、ご覧ください。

ブログ→候補者の情報発信充実で低投票率乗り越え必要 / いわき市議会2月定例会一般質問 Vol.5(2017年03月10日)


いわき市議会会議録(2017年2月定例会 03月02日)



選挙活動か政治活動か明確に踏まえて

 さて、話がそれた。折り込みチラシに話を戻そう。

 チラシをみると、筆者が公示日前に行われている活動を「選挙活動」とする認識を持っていることが分かる。本来してはいけない「事前運動」となる。この文章は、そのことを問題にする視点は全くない。

 一方、「立候補予定者」(一般的に公示日前に報道が使う言葉)という表現が見られることから、選挙運動が始まっていないことも筆者は知っているようだ。そのことから考えると、このチラシの筆者は、この文章を選挙と政治活動を明確に峻別することが出来ないままに書いたのではないかと思わざるをえない。

 とすれば、お粗末な話にもなる。
 先にも書いたが、私はこの筆者に、ほぼ事実と違えることを書いてばらまかれ、ずいぶん迷惑を被ったことがあった。その体験からも、この筆者には、読んだ人に誤解を植え付けないために、正確な情報の上に論考を加え、記述することが求められているような気がする。


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