伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

おいしくいただきました。魚介類消費拡大・普及の勉強会

2013年12月13日 | 復興
 原発事故後途絶えていたいわき市沖での漁業ですが、原発事故後2年余、魚介類の放射性物質の汚染状況の測定を続け、十分に低いことが確認された魚種の中から12種について漁を行う試験操業が実施されています。毎週木曜日に漁に出て、水揚げされた魚野放射性物質の量を確認した上で、週末に店頭に並ぶというサイクルです。

 きょうお昼には、「いわきの魚介類 消費拡大・普及のための勉強会」が市文化センターを会場に催され、いわき市長、市議会議員と行政担当者などが出席し、水揚げされた水産物を試食しました。いわき市の産地仲買27社が原発事故後に作ったいわき仲買組合の主催。小名浜市場女性部のみなさんが料理した魚などをいただきましたが、とっても柔らかいメヒカリのから揚げなど、おいしくいただきました。取材の記者などからも「完食ですね」と声をかけられました。

 勉強会は、試験操業が始まったものの、流通範囲が県内に限定され、全国流通までは風評被害の払しょくなど解決すべき課題が多いなか、現状の把握と司書国によって水産物の安全性をPRしようとするために開かれました。

 冒頭、福島県漁業協同組合連合会会長の野崎哲さんが、原発事故から試験操業までの概略的な取り組みにふれたあいさつの中で、「今回の試験操業は、ただ獲るだけでなく、漁獲して販売し、消費者の手元に届けたとこで完結する。仲買を通じた流通の中で、消費者の反応を見ていきたい」と試験操業の目的を語り、「漁業の種火がやっと灯った。これを大きな炎に育て、たき火にしていきたい。みなさんの垣根で火を絶やさないよう守ってほしい。流通の拡大にはご協力をいただきたい」と、県内の漁業再建に協力が呼びかけられました。

 また仲買組合長の遠藤浩光さんが試験操業の取り組みの概要について説明。継続的モニタリングで安全性が確認されたものの中から、試験操業対象魚種を選び、「安全に安全を、重ねて確認」し、漁にあたっても漁法w工夫してもらい、より安心して食べられるようにしている、と安全に十分配慮していることが説明されました。

 漁場は、福島県広野町沖からいわき市沖にかけた推進150m以深の海域で、距離にして陸地から25kmから45kmとなっており、14隻で底引き網で漁獲していること、1日に検査できる品目が10から12品目となっていることから、ミズダコ、ヤナギダコ、スメイカ、ヤリイカ、ケガニ、キチジ、メヒカリ(アオメイソ)、ミギガレイ、ヤナギガレイ、ノドグロ(ユメカサゴ)キアンコウ、アカムツ、マアジの12種を漁獲しているといいます。

 さらに水揚げした水産物は、生鮮品は小名浜魚市場に水揚げするか、陸送し、漁協が検査して安全が確認された後、検査結果を添付していわき中央卸売市場などに県内の中央市場に仲買組合が出荷、タコなどの加工品については、翌日検査を行い同様に出荷。出荷にあたっては、食品安産基準法では1㎏当たりセシウム100Bqとされている基準を独自に50Bqまで下げて設定し、超える魚種については出荷していないことを説明。県内の出荷については多県産品とそん色なく販売されており、今後、県外への販売も視野に入れているが、まずは足元を固めたいと話していました。

 ただ、消費者は「購入する人は購入する」と説明があったように、消費者の中には二つの反応があるようで、この状況の克服が課題となっています。仲買組合としては「安心はブランドであり、現状が安心感に結びついていない。安心のブランド回復までは時間もかかると思うが、試験操業を繰り返すことで回復できると考えています」とし、いわき市漁業協同組合長の矢吹正一さんは、「魚を獲って、それに値がつく。それではじめて漁業と言える。この積み重ねしかない」と話していました。

 このお話を聞きながら考えました。地場産の農産物でも同じことが言えますが、お二方がおっしゃったように、取り組みを重ねることで多く人に安心と納得を広げることが、やはり何よりも大切だということです。

 原発事故後の放射性物質に対する考えは、大きく二つに分かれています。その分岐点が何かというと、放射線値に対する見方・考え方です。同じ値であっても見方・とらえ方によって評価が二つに分かれてしまっているわけです。専門家でさえ、低レベル被ばくへの評価で結論を出せないのですから仕方がないことでしょう。その時に、風評被害克服の言葉で「食」を強制することがあれば「食べる」「食べない」で住民間の対立をあおることになるわけで、この問題の難しさの根源はここにあるように思います。

 風評被害を作り出したのは他でもない原発事故です。そして原発事故を引き起こした国と東電が作り出したものです。住民間の対立が生じれば、この両者の責任を覆い隠すイチジクの葉となってしまうわけです。大切なことは、原発事故はこういう問題を引き起こすということを、ありのままに情報発信して、原発に関する評価の材料の一つにしてもらうことなのでしょう。

 同時に「食」が安全か、「住」が安全か、などは数値の見方も含めて、どちらの立場に立つ人も互いに学びあって、理解と納得を広げていく努力を重ねていくことにしか、この問題を克服していく道はないのでしょう。勉強会で話された「繰り返し」「積み重ね」が大切だということでしょう。

 矢吹さんが話していました。「常磐物(近海の魚介類)は他に負けない。私たちの代で漁業を終わらせたくありません。事故が収束して一日も早く普通に漁業を再開できる日を待ち望んでいます」。きょうの勉強会と試食が、こうしたことにつながるように願っています。


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