伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

スタジアムを中心としたまちづくり可能性調査報告書を記事にしました

2019年06月17日 | 市議会






スタジアム可能性調査
結論は、運営は赤字
支援のあり方は市民意見十分踏まえて



 いわき市議会6月定例会が開かれていますが、先頃市執行部が、いわき市スタジアムを中心としたまちづくり事業可能性調査報告書を公表し、赤字運営が予想される厳しい内容が明らかになりました。今号はその詳細をお知らせします。


まちづくりの視点で可能性調査

 事業可能性調査は、いわきFCが将来のJリーグ入りをめざしている中、一定の基準を満たすスタジアムの整備が課題になることから始まったもの。

 いわきFCは、スポーツ用品アンダーアーマーを取り扱う物流センター「ドームいわきベース」を設置した株式会社ドームが設立した、株式会社いわきスポーツクラブが運営しているチームであり、現在、東北社会人1部リーグまで昇格しています。

 こうした中で本市は、整備されるスタジアムが「まちの集客装置として機能し、人の流れや地域経済への波及効果を最大限に発揮させる施設となりうるか、といった将来の『まちづくり』の視点」からコンサルタント会社に委託し、調査をすすめていました。


赤字運営の試算結果

 調査では、Jリーグの基準と合致する天然芝のグラウンドで観客席だけ屋根をかける
「大庇(おおひさし)」の構造で整備した場合の収支のバランスを試算しました。

 この試算の結果は図の通りですが、推計収益水準の欄に示される収益が「▲0・8億円/年」とあるように、毎年8000万円の赤字という結果となりました。




 この結果をもとに、スタジアム整備の候補地となる、平、小名浜、内郷、そして常磐の4つのエリアに整備した際の収支も試算しました。

 それぞれのエリアに想定されるスタジアムのコンセプトは次の通りです。

▼平=街とスタジアムが融合したマチナカスタジアム
▼小名浜=観光資源融合型スタジアム
▼内郷=スポーツ科学と医療拠点型スタジアム
▼常磐=環境共生型(郊外型)ボールパークスタジアム


 この試算では、それぞれのコンセプトで導入を想定できるカフェ、フィットネスジム・クリニックなど、スタジアム以外の機能による収益も加えた収支のバランスを見ています。

 その結果でみても、最も少ないエリアで年間400万円、最も多いエリアで1億1000万円の赤字が見込まれるという結果でした。


事業の困難示す総括

 試算結果を受け、総括では課題に「整備・運営に必要な資金」の調達をあげ、「収益性の高い『スタジアムビジネス』のモデルを構築」する必要性を指摘する一方、周辺の社会インフラ整備など「市民生活に影響を及ぼす可能性」に注意するよう指摘しています。

 また、いわきFCの動向や市民の機運の高まりに注意しながら、「地域密着型プロスポーツに対する『支援のあり方』について、市民意見も十分に踏まえながら、地域として検討を進めていく必要がある」とまとめています。


環境醸成十分見極めを

 本紙2220号では、政策総務常任委員会のJ3チーム「ギラヴァンツ北九州」のホームグランウンドである北九州市の「ミクニワールドスタジアム北九州」の事例を紹介しました。

 同スタジアムは年間約1億円の赤字を一般財源で補てんしていました。このことから、事業の前提として「サッカー競技への市民の理解と、スタジアム整備への市民の理解」が必要なことを指摘し、「市民的合意を何よりも大切にすることを求めていきたい」とのべていました。

 今回の報告書は、「スタジアムによるまちづくり」に相当大きな困難が伴うことを示したといえるでしょう。

 スタジアム整備主体はどこなのかはっきりしません。仮に整備主体が民間事業者となったとしても、道路をはじめとした周辺整備は自治体の役割になりかねません。

 こうしたことから、スタジアムをまちづくりに十分に生かすことができる環境が整うことを見極めていくことが、今後、大切になってくると思います。

文=伊藤浩之





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