▲天草の下島に仕事の用で行く途中、眺めがいいという広域農道を初めて走った。新緑のオレンジロードは、すれ違った車は2台だけなのが、もったいない程新緑がきれいだった(2013.5.2)。
トンビと巣箱と愛鳥週間
大型連休後半の4日に、その日は休日当番だったので実家である勤務先に出勤し、実家の玄関のカギをあけていると、視界の端に何やら大きな生き物の姿が映った。
鳶(トンビ)だった。
生きてはいるが、植え込みの陰でじっとして飛ぶ気配がないので、ケガをしているか病気だと思った。いったん家の中に入るとすぐに、「カアー、カアー」とカラスが大騒ぎを始めた。私はすぐに玄関先に戻り、カラスを追った。
カラスに追われて植え込みの暗い陰から明るい場所に移動した鳶は、左目を襲われて負傷していた。その他には見た目には外傷は見当たらない。猛禽類の凛とした美しさがある。ただしかなり衰弱しているようで、私が近づいてもじっとしている。そのままではまたカラスに襲われてしまうので、ミカンの収穫用の大きなプラスチックの箱を鳶にすっぽりと被せて、ブロックを1個重しに載せた。ついでに気休めだが深めの皿に水を入れて箱の中にいれておいた。
鳶が落鳥した原因は、カラスに襲われているうちに、ケガをしたせいだと考えられる。普段からカラスは、鳶を標的にしている。大きさや姿からは鳶の方が強そうに思えるが、大きな鳶が数羽のカラスにしつこく追われて逃げ惑う様子を日頃からよく目にしていた。つぶれた目は落鳥後にカラスにつかれたか、カラスとの空中戦で目をやられ、そのせいで落鳥したのか。ただ時期的に鳥インフルエンザのことが頭にあった。
休日なので市役所の窓口は休み。まず警察に相談。折り返し電話があり「対応がわからないので、県の鳥獣保護センターに対応を聞いて」との回答。センターに電話し、状況を報告すると、鳥インフルエンザの心配は無いとのこと。死んだ場合の対応を尋ねると、ゴミ袋に入れて生ゴミの取扱になるそうだ。箱から出すとすぐにカラスか犬に教われるだろうから、そのまま箱の中で静かに死を迎えてもらうことにした。
5日、6日の連休は、南阿蘇村の山小屋に泊まりがけで行き、朝一番に冬の間木から降ろしていた鳥の巣箱を掃除した。私が手作りした5つの巣箱は、ネジを外して屋根をはずすと3つの巣箱の中に、羽根や草で出来た営巣の跡があった。それらをきれいに取り出して、再び屋根をつけ、庭の木に4個取り付けた。1個は一部が腐っていたので補修する必要がある。そうやってもう20年近く、修理しながら使っている自作の巣箱で毎年ヒナが巣立っていく。一度は、一つの巣箱がヘビに襲われたことがあった。巣箱にある小さな穴から外を覗く顔がどうも鳥ではなさそうだと思い、双眼鏡で見るとヘビだった。
毎年、巣箱をかけてしばらくすると、親鳥が出入りするところを見かける。ほとんどがシジュウカラだ。去年の新築の巣箱には、かけたその日にスズメが出入りしていた。鳥は飛ぶことの専門家だから当然なのかもしれないが、結構なスピードで飛んで来て、身体ギリギリの小さな穴にスポッと上手に巣箱の中に入るのには、感心してしまう。今年もいくつの巣箱に営巣してくれるだろう。
考えたら5月10日から愛鳥週間だった。愛鳥週間にちなんだ訳ではないが、私の本棚から中西悟堂氏の古い随筆を見つけて先日から少しずつ読んでいる。随筆に書かれた氏の鳥に対する執着と愛情は少し常規を逸している。私も鳥は大好きだが、氏のような執着や愛情はない。ただ鳥の声を聴いて楽しみ、自分が作った巣箱に小鳥が出入りする様子や、エサ台のミカンなどをついばむ様子を見て喜ぶ。ただそれだけだ。
かの鳶は連休明けには箱の下で死んでいた。ビニール袋に入れようと持ち上げると、カラスより二まわりは大きい身体の割に、軽いことに驚いた。私の仕事場でもある実家のある天草は、海に囲まれた島である。空を見上げる私は、鳶の姿を毎日のように見かける。時には、小さな点に見えるほど、空の高い高いところをクルクルと円を描いて飛んでいる。こんなに軽いからこそ、上昇気流に乗って,空高く飛べるのだと納得した。
数日前まで、私のあこがれる空の高みで飛んでいたその死んだ鳶の元気な姿が一瞬頭に浮かんだ。(2013.5.10)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます