メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画

2025-03-29 09:43:48 | 美術
エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画
 3/8(土)ー4/13(日) 板橋区立美術館
エド・イン・ブラックとはなんともしゃれたテーマである。
 
江戸時代特に後半、それまでの黒、墨の世界におそらく西洋の影響もあるのか、より光との対照が意識されてきてなかなか多彩な展示になっている。
 
黒とはなにもないという意味、本当はない輪郭線、そういえばそうと気づくが、墨の技術、浮世絵で色をどう意識したのか、歌麿もあるからよく見るといろいろわかるのだろうが、それを見極めるのはなかなか難しい。
 
展示の最後の方に谷崎「陰翳礼賛」の一節があり、なるほど。
横山大観の朦朧体、藤田嗣治の輪郭線にもつながっているのだろうか。
絵としては、朝と夕を画いた鈴木其一の二点が気に入った。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スタインベック「赤い小馬/銀の翼で」

2025-03-26 16:44:26 | 本と雑誌
スタインベック「赤い小馬/銀の翼で」スタインベック傑作選
  芹澤恵 訳  光文社古典新訳文庫
先に同作家ジョン・スタインベックの「ハツカネズミと人間」でも書いたように、読んだことない「怒りの葡萄」や「エデンの東」の映画に関する漠然としたイメージをいい意味で裏切る作品である。
 
「赤い小馬」は200頁ほどで4つの部分からなる中編、そのほか7つの短編がおさめられている。
「赤い小馬」は作家の出身地西部のサリーナスの農場が舞台、夫婦とまだ幼い少年、物知りでしっかりした牧童、この4人からなる物語、プレゼントされたポニー慣れていったが間違いから死んでしまう、その過程で牧童の確かな知識と腕が示されるのだが。その後雌馬が出産しそうになるが難産、その時牧童は母馬をあきらめ子馬を助けだす。このあたり少年に自然の、大人の摂理を行動で示し、見事である。
 
その他、農場に紛れ込んできた疲れた労働者、この時代の最後を生きた祖父の登場。この時代、この舞台、まとまりとしてうまく構成されている。
 
その他の短編、いずれも最近読んだ他の著者の短編集と比べてもなにか深いところに読者を引き込むものがある。特に女性の描き方がなかなか多様で、ちょっと怖いところがあり、この作者への先入見をいい意味で裏切るものがある。
 
作者はヘミングウェイより1世代後だが、短編に関してはよりしかけが凝っていて、表現はこちらの方がハードボイルドである。
もっと多くの短編があるようで、よくわからないが、このアンソロジーはうまくできていると思う。
翻訳は最近読んだいくつかの新訳文庫のなかでも極めて上質である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エマニュエル・トッド「西洋の敗北」

2025-03-08 15:18:31 | 本と雑誌
西洋の敗北  日本と世界に何が起きるのか
 エマニュエル・トッド 著  大野 舞 訳   文藝春秋
 
トッドの著書はいくつか読んでいて、本書はロシア対ウクライナについて満を持して著わしたということだが、書かれたのがトランプの就任より前とはいえ、読んでしまうとすべてその流れで解釈してしまう、ということで少しためらっていたのだが、抗しきれず読んでしまった。後悔はしていない。
 
さて、そのもととなる膨大な資料、論説など普段新聞などで引用されているものよりも広いし、トッド特有の各国の家族構造、その時間的な変遷、米国などの人種構成、その年齢別の時代的変遷、学歴(理工系、文系)、職業(ハードとソフト(弁護士、コンサルタント、金融投資など)の見取り図とその時間的な変化、それが彼の得意な乳幼児死亡率、GDPにどう結び付くかが、語られる。
 
それはわかりやすいとはいえないし、政治的な動きの解説、予測には必ずしもむすびつかないのはいつもと同じだが、結果をマクロに解釈すればおよそあたっているといえよう。
 
特にアメリカやイギリスにおいて、指導的な立場の人たちについて、あの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1904、マックス・ヴェーバー)に記されたものが消滅してしまった、特にここ20年、ということ、これは昨今ワシントン村の政治家どものふるまいを見ているとなるほどと思う。
 
よくいわれる国の所得の大半をごく少数の富裕層が所有しているというが、彼らの大半は生産的な職業ではなく、ソフトつまり弁護士、証券、金融などであり、ものづくりに従事している層の学歴は低く、工学系は少ない。まだロシア、ドイツ、フランスの指導者をが民族的・国民的気質を所持しているが。
特に米国はWASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)の国ではない、、いまのの政権の主要層もそうである。高学歴層の比率で行けば、インド系、中国系、日本系だそうである。

敗北というのはいろいろだが、特にといえばアメリカはロシアに敗けたということだろう。これは知らなかったが兵器でいっても砲弾もろくに作れず、ロシアの超音速ミサイルもない。資源に不足がなく、力をコントロールしながら継続的に戦っているロシアに対しむしろ疲弊し我慢できなくなっている米国。一方ロシアは地政学的に多くの重要国と国境を接し、「制裁」もアメリカの言うとおりにはならなかった。
 
日本にいるとほとんど初めから「正義」だけでしばらく解釈されてきたが、ウクライナとロシア、そんなに単純ではない。
さて、というわけで、これからはいろいろな角度から見ていきたい。
パレスチナについては最後に少し触れているだけだが、つぎの著書ではそれとイランについても是非書いてほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京国立近代美術館 所蔵作品展

2025-03-01 14:51:04 | 美術
東京国立近代美術館 所蔵作品展 MOMATコレクション 2024-3
2025年2月11日ー6月11日

ここの所蔵作品は常設展のころから何回も見ているが、数年前からか年3回にわけて、展示替えをするようになった。全部の回を見ているわけではないし、ひととおり見るのに1時間半はかかり、今回もそれなりに新鮮であった。
 
このかたちになってから入り口には「眺めのいい部屋」というスペースがあり、そこをその回のハイライトとして20点あまりを集めている。キュレーターの腕の見せ所であるが今回はとりわけ見事であった。
入り口近くにある松本陽子「光は荒野の中に輝いている」(アクリリック・キャンバス)、知らなかった作者だが、一面大きなピンクの複雑な柄、作者にはこのように見えたのか。
ほかに何度かみた親しいももあったが、中で今まで名前しか知らない日本画の巨匠徳岡神泉の「菖蒲」、光琳の燕子花からここまで、不思議だが見事なものになったという感がある。
 
シュルレアリスム、戦争画などもこれだけあると鑑賞しがいがある。このかたちになってからもルーブルの「モナリザ」のごとく私が見た回には化ならず展示されいた岸田劉生の切り通しの画、今回はなかった。それでもなじみのある関根正二「三星」、靉光「眼のある風景」などが見られたのはよかった。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

絵本読み聞かせ(2025年2月)

2025-02-27 16:44:32 | 本と雑誌
絵本読み聞かせ  2025年2月27日
年少
ぴょーん(まつおか たつひで)
もじゃもじゃ(せな けいこ)
どのはないちばんすきなはな(いしげまりこ 文 わきさかかつじ 絵)
年中
てぶくろ(ウクライナ民話 エフゲニー・M・ラチョフ 絵 内田莉莎子 訳)
ぴょーん
どのはないちばんすきなはな
年長
ゆきむすめ(ロシアの昔話 内田莉莎子 再話 佐藤忠良 絵)
てぶくろ
ぴょーん

今日は暖かくなってしまったが、今年の2月全体としてはふさわしいプログラム。
「ぴょーん」はシンプルだけど、年齢に応じてつっこめるところがあり、話がひろがるところがいい。
「どのはないちばんすきなはな」はなんといっても色彩とかたちの鮮やかさで、年少組でもどの色が好きとかいろいろ反応が楽しい。他人とちがう好みをわざという子もいた。

そのほかは定番だが、今回「ゆきむすめ」で最後ゆきむすめはどこにいったんだろうねときいてみた。すると、雪で作ったんだから火でとけたんだろうという常識的な答えだったが、それでもああいう物語ができたをいうことは、頭のなかに残ってくれるだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする