5月21日のモスクワ、欧州チャンピオンズリーグ(CL)の決勝が行われ、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)が1-1、延長(0-0)の後PK戦(6-5)でチェルシーに勝った。
イングランドプレミアリーグ同士の決勝は初めてだそうだ。チェルシーは試合に勝って勝負に負け、初のタイトルを逃した。
毎年そんなにまめに見ているわけではないが、NHK-BSのプレミア、フジTVのチャンピオンズリーグなどで見ていて、今シーズンとにかく絶好調のクリスチャーノ・ロナウド(ポルトガル)中心の番組編成であることはわかり、その彼が属するマンUがプレミアリーグも制し、そしてCLも勝ち上がってきたから、注目してみることが出来たし、楽しかったともいえる。
決勝は準決勝までのホームアンドアウェーとちがって、関係ない都市での一発勝負だから、引き分けはなく、PK戦まで続く。したがってサッカーとしてはかなりちがったものとなってしまう。ゲーム自体としては準々決勝、準決勝あたりの方が面白い。
このゲームも、一発勝負というところから、それまでよりは先取点を取ろうという意識は強かったようだ。それでも、ロナウドのヘディング、エッシェンの見事なアタック、シュートのこぼれ球をランパードが決めた得点は、かなり偶然が支配したというべきだろう。
それでも1-1というのは、サッカーというものは結果の数字をみれば一応納得できるという不思議なものである。
しかし、後半の後半あたりになってくると、点が入れば全てがサドゥンデスといった感じになるから、攻めすぎずカウンターでという意識が相互に働く。交代も延長を考えれば誰がへたばり怪我をするかわからないということがあるから、早くからはしない。もう延長だな、と感じるとその通りになってしまう。
そしてこの延長もサドゥンデス方式ではないから、前半はそこそこ攻める。けれどもどうもやはり疲労は隠せない。そして後半も残り少なくなれば、交代もPK戦も考えてということになって、残念ながら予想どおり終わってしまった。監督としても、もうPK戦なら勝てばもうけもの、負けても公式には引き分け、結果はじゃんけんといの言い訳も立つ。
それにしても、W杯やオリンピックでは、スター、キャプテンがはずすものである。ロナウドが蹴るときもいやな予感がし、的中。が、このまま終わらないような気がし、そのとおりテリーが滑ってはずした。
マンUのプレミア優勝では、最後の方でベテランのギグスが活躍、今回の決勝でも途中出場で、かのボビー・チャールトンが持つマンUでの出場記録を破ったそうだ。ボビー・チャールトンというのは懐かしい名前で、ニュースなどで初めてリアルタイムで意識したW杯、その1966年イギリス大会で、彼がたしかキャプテンを務めたイングランドが優勝したのを憶えている。相手はベッケンバウアーの西ドイツ。FWより少し後ろだったように思う。
ところでこの日のマンU登録メンバーで不思議だったのは、控えも含め朴智星(パク・チソン)の名前がなかったことである。どうも怪我ではないようだ。タフな朴の攻守にわたる献身がなければ、プレミア優勝も、CL決勝進出もあやうかったかも知れない。
「人種差別?」とも思ったし、そういう報道、意見はその後随分出たようだ。もうこの試合が最後だから、テベス、ルーニー、ロナウドを最初から存分に使い、そして右サイドにハーグリーブスという考え方からすれば先発はない。が、延長もある試合であれば、朴を控えに置かなかったのは理解できない。
この2000年以降、東アジア出身で世界に通用するのは朴と李天秀(イ・チョンス)くらい、辛うじてフリーキックの中村俊輔、と思っていたが、今シーズン朴が一つ抜けたようだ。京都サンガにいた頃は3人の中では一番地味だったけれど。
W杯2006ドイツの決勝はイタリアがフランスに勝った。
前半7分マルーダをマテラッティが倒したと判定されたPKをジダンが決める。これが早い時間帯であったのが幸いしたのかイタリアはあわてず19分右CK、ピルロのキックからそのマテラッティがヘッドであわせゴール。
同点になってからは前半イタリア、後半フランスが攻勢となったものの、決勝によくあるような守りあいになってしまい、延長となった。延長半ばにセンタリングをジダンが見事にヘッドであわせたが、今大会こういうのをことごとくとめているブッフォンの壁を破ることは出来なかった。
そしてジダンの一発レッドカード退場、PK戦となったが2人目のトレゼゲが上のバーにあててしまい、5-3でイタリアの勝利となった。
準決勝ほど面白い内容ではなかったし、PK戦の結果である。しかし、全体的に見てやはりイタリアは最も優勝に値するチームだろう。
まず本質とは関係ないが23人全員が国内リーグ所属、そして交代GK要員以外全員が出場、そのほぼ半数が得点している。そしてモチベーション、それがリーグ不祥事の危機に起因する、言い方を変えればこのあとしばらくいいことはないという状況、これが効きチームが気持ちよくまとまっていた。
そして、世界一のDFカンナバーロ、世界一のGKブッフォン、この二人は、なんというプレーだったのだろう。
カンナバーロの場合、これまでよくあった何かの時には攻めあがるリベロというタイプでなくてストッパーである。しかし見ているうち、相手がペナルティエリア近くに入ってくると何時どうやってカンナバーロが止めるかクリアーするか見るのが楽しみになってきた。
自分が受け持つときばかりでなく、もう一人が受け持っているときでも抜かれそうになりそのあと危なくなりそうな一瞬、自分のマークする相手を捨ててサポートに入る、これが早すぎても遅すぎてもピンチになる、そして決断したときの迷わない勢い、惚れ惚れする。
それにしてもマテラッティが何を言ったのかはわからにが、何故ジダンは退場となる頭突きをしてしまったのだろうか。
もちろんことの是非はジャーナリズムで一般に言われているとおりであり、現役最後の試合をこのような形でおわってしまったのは、試合の結果とのかかわりは別として残念である。
記録によればジダンにはこういう反則、退場は多いようである。
ジダンのあのようなプレーの裏には何か激しいそして暗いものがあるのだろうか。それが何かはわからないが何かがあることは理解出来る。そして現役最後の試合だという意識がそのとき消えているということも。 だからジダンはジダンなのだろうか。
ジダンが頭突きをしたとき主審は見ていなかった。それを騒ぎ立てたのもブッフォンなら、退場のとき慰めていたのもブッフォンであった。なにかいい子ぶりっ子みたいな感じもしたのだが、しかし考え方がかわったのはPK戦で相手トレゼゲが上のバーに当てた時、喜ばず複雑な顔をしていた時であった。普通ガッツポーズなどするところである。トレゼゲが現在ユベントスでチームメイトということはあるかもしれないが、枠の中に来たのを自分がクリアーしたのでないということであれば相手を慮るということなのだろう。
この大会で私が選んだMVPはカンナバーロ。
最後に、イタリアのカモラネージは変なちょんまげスタイルであったが、優勝騒ぎの渦の中で何をされているのかと思ったら髷を切られていた。約束だったのか。