漂流怪人・きだみのる 嵐山光三郎 著 小学館文庫
きだみのる(1895-1975)は本名山田吉彦、社会学者でファーブル「昆虫記」の全訳(林達夫と共訳)もしている。破天荒な自由人で、定住せず、いろんな場所に住んで変わった卓抜な著述をものにしていたらしい。「らしい」というのは、私の若いころこの人の名前はきいていたが、それ以上はほとんど知らない人であったということからである。
嵐山は平凡社の編集者時代、1970年ころからきだの担当となり、その晩年5年ほど密着してこの変わった人の詳細な観察をもとに2016年に本書を刊行、それが今回文庫となった。
ある意味嵐山の若いころの自伝でもあって、当時の世相、風俗なども含め、たいへん面白い。
きだは当時のマスコミの思潮からするとずいぶん外れていて、著者によれば、フランス趣味と知識人への嫌悪、反国家、反警察、反左翼、反文壇で女好き、果てることない食い意地、だそうで、それがかなりの存在感を持って描かれている。
また、きだは若いころアテネ・フランセの創立者ジョセフ・コットの薫陶を得て、フランス語、ギリシャ語、ラテン語を身につけ、慶應大学文学部社会学科を中退後アテネ・フランセで教えていたそうである。高度な教養を身に着けた大正~昭和の人でもあったようで、今こういうバックグラウンドはなかなか形成されないだろう。
きだみのる(1895-1975)は本名山田吉彦、社会学者でファーブル「昆虫記」の全訳(林達夫と共訳)もしている。破天荒な自由人で、定住せず、いろんな場所に住んで変わった卓抜な著述をものにしていたらしい。「らしい」というのは、私の若いころこの人の名前はきいていたが、それ以上はほとんど知らない人であったということからである。
嵐山は平凡社の編集者時代、1970年ころからきだの担当となり、その晩年5年ほど密着してこの変わった人の詳細な観察をもとに2016年に本書を刊行、それが今回文庫となった。
ある意味嵐山の若いころの自伝でもあって、当時の世相、風俗なども含め、たいへん面白い。
きだは当時のマスコミの思潮からするとずいぶん外れていて、著者によれば、フランス趣味と知識人への嫌悪、反国家、反警察、反左翼、反文壇で女好き、果てることない食い意地、だそうで、それがかなりの存在感を持って描かれている。
また、きだは若いころアテネ・フランセの創立者ジョセフ・コットの薫陶を得て、フランス語、ギリシャ語、ラテン語を身につけ、慶應大学文学部社会学科を中退後アテネ・フランセで教えていたそうである。高度な教養を身に着けた大正~昭和の人でもあったようで、今こういうバックグラウンドはなかなか形成されないだろう。