「ヤング・ゼネレーション」(Breaking Away、1979、米、141分)監督: ピーター・イエーツ、脚本: スティーヴ・テシック デニス・クリストファー、ダニエル・スターン、デニス・クエイド、ジャッキー・アール・ヘイリー、ポール・ドゥーリイ、バーバラ・バリー
製作された時代に19歳という設定の若者4人、インディアナ州ブルーミントン付近の石切り場・工場の町に住み、大学に入ってなくて、定職があるというのでもない彼ら。一方インディアナ大学の学生たちは、町の住人や彼ら若者たちを文字通りカッターズと軽蔑している。
そういう、「スタンド・バイミー」や「アメリカン・グラフィティ」にも通じる青春映画。しかし、この作品が他と異なるのは、親兄弟、大学の人たちなどど、決定的に対立しているわけではなく、様々な解決の機会、出口が設けられながら進められていることである。だからといって甘くはないのだが、現実の世の中、生活はこういうバランスがとれている場合が多いのだろう。
さてその話の中心は、デニス・クリストファー演じる元カッター今中古車屋の一人息子がとにかく自転車いのちでイタリア大好き人間、アマチュアロードレーサーとしてはいいところにいく実力を持っている。彼が他3人と若さゆえの悪さをしたり、親父の無理解と衝突しながら、そして気が進まない仲間三人と最後は町のチーム耐久レースで闘うまでが、実にさわやかに、退屈せずに、描かれる。
こう書くとなんてことはないのだが、まあ見てのお楽しみというほかない。映画というものの娯楽性、その不思議がここにある。見終わって、ああよかったというもの。こういう青春映画はその後米国ではほとんど作られなくなり、今は日本の方が得意だろう。
デニス・クリストファーは本当に自転車向きの体型でよく似合う。そしてイタリア好きの彼が部屋でかけっぱなしにしているイタリアオペラの名曲やメンデルスゾーンの「イタリア」が音楽のほとんどをしめ、感興をうまく高めてくれる。 イタリアがこう扱われているのはもちろんイタリア一周自転車レース「ジロ・デ・イタリア」への憧れからだが、最後に対抗するフランスが登場するのは笑える。
1979年、自転車がアメリカの田舎町でこんなに人気があったというのも驚きだ。グレッグ・レモンがツール・ド・フランスで初優勝したのは1986年で、それだってここ数年のニール・アームストロングに比べれば、まだそれほどの騒ぎではなかったと思っていたけれど。
若者4人の中で、後に有名になったのはデニス・クエイドだが、ここではまだちょっと骨のありそうな不良少年という程度。この脚本でオスカーを取ったスティーヴ・テシックは「ガープの世界」も書いている。
日経土曜版で芝山幹郎氏が今週放送の一本として推薦していたもの(WOWOW)。なかなか見る機会がないようで、こういう紹介はありがたい。