メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

21世紀のBUG男 画家 大竹伸朗  

2022-06-13 14:08:48 | テレビ番組
21世紀のBUG男 画家 大竹伸朗
NHK BSP のドキュメンタリー番組(90分) 2022年6月10日
 
よくもこれだけ大竹に密着してあの破天荒な創作を記録してくれたものだ。BUGとは虫だが、~狂という意味もあるらしいし、プログラムの虫にかけてもいるらしい。
  
さて私にとって大竹伸朗(1955-)は2006年末に評判になった回顧展(東京都現代美術館)ではじめて知った。現代アートといっても、見てあるいは頭の中にイメージしてそれを表出するというのではなく、そうかといってアクションペインティングともちがう。何か得体のしれないといっても目についた、面白そうだと思ったモノを並べたり張りつけたり、それにさまざまな塗料、液体をぶつけたり、そしてやりながらそのプロセス、結果(?)を見ていく(?)とでもいうもの。展示会場で本人はちょうどその時ギターを弾いていた。
 
珍しいし、ショックもうけたが、ショップに図録はなく、たしかそれにかわるスクラップを反映したなにかが少しあとに出てくるので予約(?)があったかなかったか、とにかくそのままになってしまった。少し後にこの人のエッセイ集「ネオンと絵具箱」が出て、どんな人か多少わかってきたが。
 
さて、今回はこれまでの経過、関係者によるコメント、評価の中で、今秋の展覧会の中心になる大きな絵(?)の製作過程を当人のつぶやき、解説を交えながら記録していったものである。歳を経たからか、本人の少し親切な説明もあるが、その一挙手一投足はどぎもを抜かれる。それでもこれ使えるかもと置いてみて、張り付けてみて、それを刻んだり、他のものを張り付けたり、いろんな液体や、塗料、接着剤を流し込んだり、、、ただこれが大竹がいうようにさらにやるか、ここで一旦止まってみてしばらくして対象からなにか受け取ってみるか、、、など、だんだんアートの本質はこういうところにあるかもしれない、とおもわれてきた。

これまでになかったような現代のアーティストに密着したドキュメンタリーを企画することについてはいろいろ意見もあろうが、少しは理解が進むと考える。
これまでも草間彌生、横尾忠則などあり、意義があったと思う。


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平成細雪

2018-01-30 10:04:54 | テレビ番組
平成細雪 NHK BSプレミアムドラマ 全4回(各50分)2018年1月
原作:谷崎潤一郎「細雪」、脚本:蓬莱竜太、演出:源孝志
中山美穂(長女蒔岡鶴子)、高岡早紀(次女幸子)、伊藤歩(三女雪子)、中村ゆり(四女妙子)、福士誠治(奥畑啓三)、柄本佑(板倉潤一)
 
谷崎の細雪を平成の世に置き換え、テレビドラマ化したもので、阪神淡路大震災(1995)の前という設定である。
原作「細雪」の戦争の足音がきこえる昭和10年代から平成にとび、同じ芦屋の名家の四姉妹の話というのは無理があると思っていたが、案外最後まで飽きずに見ることができた。
 
これは第一に谷崎の原作がよくできているからだろう。谷崎の作品の中では唯一といってもよいいわゆる風俗小説ではあるのだが、それにもかかわらず半世紀以上後に舞台を変えて生きているのだから。
 
ストーリーの流れは、引込み思案でなかなか結婚できない三女雪子の見合い話が毎回出てくるのと、四女妙子のモダンガールぶり、男沙汰が主であるのは原作とほぼ同じだが、映画版でもそうだったがテレビドラマになると、傾きかけた家をなんとかしようという長女の悩み、家族全体のバランスをとりながら采配をふるう次女の思いなどを、充分に描くの欲ばりというものだろう。
 
特に原作では、谷崎は次女に戦中の知識人たる自らを重ねていることが読み取れたが、それは彼の文章を読む醍醐味ではあっても、映像化は無理というもの。
 
女優の四人はこういうものに合うのかな、と心配したがそうでもなかった。もっとも時代設定がこうなれば、以前の映画とは違って当たり前なのだが。
 
その中で特に感心したのは雪子の伊藤歩で、これまで岩井俊二作品のいくつかでの印象しかなく、この何度も見合いでじれったさを見せる役、美人だけど彼女とは逆に演技はうまくなさそうな女優向きの役はどうかな、と思ったが、きれいで静的な流れを保ちつつ、たまにふっと本心を見せるこの役を実に見事に演じていた。過去複数の映画での雪子役と比べても出色である。



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ダウントン・アビー 5

2017-02-21 15:41:29 | テレビ番組
イギリスのTVドラマ「ダウントン・アビー5」の放送(NHK、全10回)が終了した。
おそらく1と2は見てなくて、3の再放送あたりから見たのではないかと思う。

20世紀前半のイギリス、ある貴族の領地と館で起こる、家族のそして使用人たちの、複雑な関係と推移を描いたドラマである。
登場人物はかなり多いし、顔、かたちが判然としない部分もあって、登場人物がなかなか特定できず、しばらくは困った。

当主夫妻には3人の娘がいて、その結婚相手、そして当主の前世代の親族、執事をトップにする下僕、料理人などの使用人たち、特にこの使用人たちの仕事が細分されていて、ずいぶんたくさんの人が必要とされている。

この時代、一般的に貴族はその領地経営、そして貴族らしい生活の維持が困難になってきていて、それに対する対処として、アメリカで成功した資産家の娘を高額の持参金つきで嫁にとり、資産家の方はそれで名誉というか家の格を手に入れる、ということが多くなったらしい。かのダイアナ妃もその系統から出てきた人である。
 
主人公の妻もアメリカ人、長女はまずまずの結婚をし長男を得るが、まもなく夫は自動車事故で亡くなり、その後誰と、、、という流れになり、二女は婚外で女児を得て波乱の人生、三女はアイルランドの活動家出身を結婚するが出産時に亡くなる。
この三姉妹とその相手の男たちは、丁寧に描かれている。
 
こういうドラマとして意外なのは使用人たちの世界が多くの時間をかけて詳細に描かれていること(映画「日の名残り」とくらべても)。そして当主家族と使用人たちの多くが、いやな面を持っており、いやな関係、やり取りが多くあって、見続けるのがいやになったこともあった。
ただ考えてみれば、現実の世界はこういうものであろうし、それは製作者の意図なんだろう。
 
そうやっておいて、このシリーズ5の最後は各人のいいところを少しずつ意外性も含めだしてきて、無理したなといえるがうまく大団円の雰囲気で終わった。もっともこれはこの世界最後の輝きという受け取り方もできるけれど。
 
舞台、衣装、料理、作法など、おそらく詳細な考証を経ているらしく(その解説番組も途中で放送された)、これだけでも見た甲斐はあっただろう。
 
俳優はいかにもイギリスらしい人たち、ただ当主の妻と娘たちはちょっと地味(顔、スタイル、衣装とも)だった。これを見る前から知っているのは、当主の母役のマギー・スミス、親戚の娘で途中から屋敷に来て過ごしているちょっとはねっかえり娘のリリー・ジェームズくらい。マギー・スミスは最近では「マリーゴールド・ホテル幸せへの第二章」、リリー・ジェームズは実写版「シンデレラ」、「戦争と平和」(英TVドラマ)のナターシャなど。

なお、ちょっと無理な大団円と書いたけれど、このあとシリーズ6があり、それで最後とか。

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glee 3

2013-07-23 21:52:21 | テレビ番組

glee 3 (45分X22回)

gleeのシーズン3を見終わった。今日の深夜からNHK地デジで放送されるが、今春にBSで集中放送されたものを録画しておき、少しずつ見ていたものである。

 

シーズン1からずっと各22回を見ていて、ほぼ同じメンバーがよくここまで楽曲の歌唱とダンスをこなしたものだと感心する。またああこういう曲もあったのかと発見の楽しみもあった。

 

前にも書いたと思うけれど、登場する高校生たち、その親たち、教師たちは、今のアメリカを反映しているのか、その人種、貧富、家庭環境、同性愛、ハンディキャップなど、かなり多様な要素が含まれている。一部の俳優には本当にその疾患を持っていると思われるものもいた。

 

そうであっても、主要キャストは今回で高校卒業だから、上記のようであっても、いやそうであるからこそこのアメリカではというのだろうか、最後の数回は皆それまでよりいい人になってきて、つまり予定調和になってきてしまった。最後ちょっとわさびは効かせたけれど。

 

実はシーズン1の少し前からヴォーカルを習い始めたので、毎回出てくる歌唱は、あまりくずさないでオーソドックスに歌っていることもあり、選曲、練習双方で参考にさせてもらった。感謝といえば感謝である。 

ところで、先々週まで、ヴォーカルのレッスンに持ち込んでいたのは「Don't Stop Believin'」で、オリジナルのJourneyはキーが高すぎることもあり、このgleeバージョンの楽譜、録音をベースにした。この曲はシーズン1のテーマ曲でもある。

 

ところがなんとこの曲のデュエットで男性パートを歌っているコーリー・モンテース(Cory Monteith)は、私がレッスンでOKをもらった直後に薬物中毒で死亡してしまった。以前からカミングアウトしていて、治療施設に入っているというニュースは少し前に見ていたのだが、驚いている。

31歳だそうで、高校生のドラマといっても出演者の多くは20代後半、ほんとの高校生ではあそこまではできないだろう。

 

モンテースはちょっと物足りないがどこか憎めない、気のいい2枚目タイプ、歌も特別うまいわけではないにしても、トップにすると映えるという感じであった。

前記の曲でも、歌はぴか一のリー・ミッシェルとのデュエットだった。

 

なお、多くは高校を卒業したが、その後と、残ったメンバーの話なのかシーズン4はすでに制作・放送されているそうで、これからシーズン5というところだったらしいが、モンテースの死で変更が生じ、放送開始が遅れるらしい。

 

合掌

 


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glee2のゴスペル「明日に架ける橋」

2012-04-10 21:18:29 | テレビ番組

gleeの話の続き。
glee2の確か2回目に、部員の一人メルセデスがいつも行っている教会で、聖歌隊と一緒に「明日に架ける橋」を歌う。ゴスペルである。
話にはきいていたが、ゴスペル・シンガーズによるこの歌を見聞きするのは初めて。

 

「明日に架ける橋」をサイモンとガーファンクルがリリースしたのは1969年、その少しあと1971年にアレサ・フランクリンがフィルモア・ウエストでゴスペルの形で歌っている。
そして、アパルト・ヘイトが激しかった南アフリカの教会では、皆これはもともとゴスペルだと思って歌っていたそうだ。
これは確か、9.11のあと「sail on silver girl 」の歌詞のせいもあって歌うことが難しくなり、それからポール・サイモンが立ち直る、という話の中で知ったように記憶している。 

 

創られた時の意図とは別に、こうしてゴスペルで歌われるのも、とてもよくフィットしていて、この曲の持っている不思議な力を感じる。音楽というのはそういうものだろう。

 

gleeの製作陣、なかなかである。


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