父のこと
吉田健一 著 中公文庫
このところこの文庫で著者のものが続けて刊行されている。本書は吉田茂没後50年ということもあってのものらしい。
吉田健一については、その立場などは頷けるところもないではないが、あの長たらしい文章が苦手であった。ただこの本は全体に軽く書かれたものと、親子の対談(清談だそうだが)が主で、読み進むのは楽である。
吉田茂(1878-1967)が没後50年ということは、私が大人になるまでは生きていたということであるのだが、首相としてはいろいろ非難され、やめるやめないとの騒ぎがあったように記憶しているだけで、それ以上リアルタイムの記憶はない。
本書を読むと、戦前の外交官時代からのイギリスに対する評価、軍部嫌いなど、いろんな角度からあらためて確認できた。イギリスに関しては、こういう思いを持てたのは幸せだったのだな、と思う反面、今となっては、かの国もさてどうかというところも多い。
それでもこういう複雑さを持った人は、現代日本の政治家にはいないと思う。基本的に軍隊は嫌いだが、必要ではあり、戦後はアメリカとの集団安全保障それもできれば相互主義であることが、あのソ連、中共(当時)に囲まれた中では最良のものということ、アメリカに対する日本人の特に地方の人たちの対応が日本に対する好印象を与えているということ、それらを前提としてサンフランシスコ講和条約を締結したその確信は、納得できるものである。
また、当時の社会党などとは、対立していても、野党の存在意義はもちろん理解していて、状勢全体を掌握判断したうえで、施策を進めたであろうことはわかる。
身の回り、趣味などについて、息子健一とのやりとりは面白いが、私などから見るとどこの世界か、ということはしょうがない。
吉田健一 著 中公文庫
このところこの文庫で著者のものが続けて刊行されている。本書は吉田茂没後50年ということもあってのものらしい。
吉田健一については、その立場などは頷けるところもないではないが、あの長たらしい文章が苦手であった。ただこの本は全体に軽く書かれたものと、親子の対談(清談だそうだが)が主で、読み進むのは楽である。
吉田茂(1878-1967)が没後50年ということは、私が大人になるまでは生きていたということであるのだが、首相としてはいろいろ非難され、やめるやめないとの騒ぎがあったように記憶しているだけで、それ以上リアルタイムの記憶はない。
本書を読むと、戦前の外交官時代からのイギリスに対する評価、軍部嫌いなど、いろんな角度からあらためて確認できた。イギリスに関しては、こういう思いを持てたのは幸せだったのだな、と思う反面、今となっては、かの国もさてどうかというところも多い。
それでもこういう複雑さを持った人は、現代日本の政治家にはいないと思う。基本的に軍隊は嫌いだが、必要ではあり、戦後はアメリカとの集団安全保障それもできれば相互主義であることが、あのソ連、中共(当時)に囲まれた中では最良のものということ、アメリカに対する日本人の特に地方の人たちの対応が日本に対する好印象を与えているということ、それらを前提としてサンフランシスコ講和条約を締結したその確信は、納得できるものである。
また、当時の社会党などとは、対立していても、野党の存在意義はもちろん理解していて、状勢全体を掌握判断したうえで、施策を進めたであろうことはわかる。
身の回り、趣味などについて、息子健一とのやりとりは面白いが、私などから見るとどこの世界か、ということはしょうがない。